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7.人生って初体験が沢山ですね
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人生初の華やかなレセプションパーティーは緊張の連続で、けれど仕事の延長の様な少しの緊張感と楽しさもあった。
普段は決してしないルーズにセットされた髪型や、秋塚が用意してくれたスーツにアクセサリー。そのどれもこれもが、悠仁を別世界の扉の向こうに押しやってくれる。
秋塚は主催であるLammermoorの広報担当と云うこともあり、出来るだけ悠仁のそばから離れないと言うのは宣言だけで、商品発表のステージ捌きから、それが終わるとあちこちに呼ばれては挨拶回りと、かなり忙しそうだった。
名だたる女優や俳優にモデル、海外からの賓客など、招待客の多さはまさに圧巻だ。
そんな中に混ざっている一介のホテルマンが、どんな風に立ち振る舞うべきなのか。悠仁は頭を悩ませつつも、事前に秋塚にリサーチしておいたブランドデータを脳内で反復して、来賓との会話を楽しむようにした。
ありがたいことに外国語は得意なので、それだけでも話の種になり、本来であれば話すこともないだろう著名人とも会話を楽しむことができた。特に、秋塚が選んでくれたアクセサリーが好評で、センスがいいと褒められると鼻が高くなった。
パーティーが終わると、悠仁は秋塚が直接招いた客として、店の奥にあるV.I.Pルームでイベントの後処理を終えるのを待つことになった。
悠仁としては挨拶だけ済ませて、早々に帰りたかったが、衣装やアクセサリーを借りたまま帰る訳にはいかない。
「失礼します。友川さん、お待たせしてすみません。本日はお疲れ様でした」
出されたハーブティーを飲んでいると、扉をノックしてから秋塚がV.I.Pルームに入って来る。悠仁は慌てて立ち上がると深々と頭を下げた。
「秋塚様。この度は、この様な機会を賜りましてありがとうございます。とても有意義な時間を過ごさせていただきました」
「固いなー。でもそこが友川さんらしいね。パーソナルエリアには誰も入れない感じ」
「秋塚様?」
「人の大事なところには、あんなに躊躇なく入れるのにね」
顔を寄せて小さく呟く。
「!?」
「俺のここ、そんなに美味しかった?」
秋塚は悠仁の腕を掴んで引き寄せると、抱き合うような姿勢で臀部を弄る。
「秋塚様!」
「大丈夫。鍵も掛けたしここは完全な密室。カメラもありません」
そう言うと妖艶に笑って、悠仁の唇に舌を這わせて、それをすぐ追うように下唇を食んで、強く噛んだ。
「……痛っ」
「昼間のことは感謝してますけど、俺は本来捕食が好きなので、やられっぱなしじゃ終われない訳です」
「……そうは申されましても」
「友川さんもタチだからって理由は無しですよ?」
「あの場合は不可抗力かと存じます」
そう言って悠仁は仕返しのように秋塚の唇に吸い付くと、そのまま唇の端を噛み返した。
「うっ」
秋塚は一瞬呻いて、咄嗟に突き放すように悠仁の体を突き飛ばす。
「はあぁ、まったく」
悠仁は大きく溜め息を吐き出して頭を抱えると、何か吹っ切ったように秋塚を睨め付ける。
「私如きが差し出がましいですが、秋塚様に一言申し上げても宜しいですか」
「どうしたんです?別に構いませんよ」
「……あの状況で、酷く欲しがって強請る顔したのは記憶に残ってない。そう言い逃れるつもりですか」
「あら、その顔が本来の友川さんなのかな?」
「ここが疼くような薬盛られたのは自業自得でしょ」
そう言って秋塚の腕を掴んで抱き寄せると、臀部を乱暴に揉みしだき、トラウザーズの上から双丘の溝を割るように指を滑らせて後孔へと指を押し込む。
「あ……ちょ」
「ほら、昼みたいに腰が跳ねた」
秋塚の体にはまだ感覚が残っているのだろう。薪が燻るような静かな赤みが頰に差す。
「気持ち良くても悪いことじゃないでしょう?」
悠仁は続けてそう呟くと、右手で秋塚の後頭部を抑えて、昼間の再現のような卑猥なキスをする。
「ん、ふっ」
咄嗟のことに息遣いが乱れる秋塚の甘い吐息が漏れる。
悠仁の左腕が秋塚の背中を支えると、まるで激しい喧嘩のように荒々しいキスをしてお互いを貪り合う。
くちゅくちゅと鈍い水音が跳ねると、熱を持ち始めた互いの昂りがベルトの下で頭を突き合わせる。
「……生理現象と、ただの処理。それだけですよ」
「友川さんて、素もこんな感じ?まだ隠してる?」
「普通の人間ですよ」
名残惜し気に唇を啄むと、悠仁は体を離して少し乱れた衣服を整える。
「ご用件は以上でお済みになりましたでしょうか。お借りしたアクセサリーと、ご用意いただいたこの洋服をお返ししなければいけませんが、如何致しましょうか」
「あ、戻った?」
くすりと笑う秋塚に無表情のまま顔を寄せると、悠仁は物音がしますと耳元に囁く。
「気のせいでなければ、ドアの外で様子を窺ってる方がいらっしゃいます」
「なるほど」
小さく答えて頷くので、悠仁は秋塚が聡い男でホッとする。
だが何を考えてるのか、次の瞬間にはこんなことを言い出すのだ。
「お礼のつもりとは云え、本日は無理なお願いでしたが、ご協力くださってありがとうございました。宜しければ予定通り、少し場所を変えたいのですが、もうそろそろ移動しましょうか」
「……そうですね。参りましょうか」
悠仁は仕方なくそれに応えた。
普段は決してしないルーズにセットされた髪型や、秋塚が用意してくれたスーツにアクセサリー。そのどれもこれもが、悠仁を別世界の扉の向こうに押しやってくれる。
秋塚は主催であるLammermoorの広報担当と云うこともあり、出来るだけ悠仁のそばから離れないと言うのは宣言だけで、商品発表のステージ捌きから、それが終わるとあちこちに呼ばれては挨拶回りと、かなり忙しそうだった。
名だたる女優や俳優にモデル、海外からの賓客など、招待客の多さはまさに圧巻だ。
そんな中に混ざっている一介のホテルマンが、どんな風に立ち振る舞うべきなのか。悠仁は頭を悩ませつつも、事前に秋塚にリサーチしておいたブランドデータを脳内で反復して、来賓との会話を楽しむようにした。
ありがたいことに外国語は得意なので、それだけでも話の種になり、本来であれば話すこともないだろう著名人とも会話を楽しむことができた。特に、秋塚が選んでくれたアクセサリーが好評で、センスがいいと褒められると鼻が高くなった。
パーティーが終わると、悠仁は秋塚が直接招いた客として、店の奥にあるV.I.Pルームでイベントの後処理を終えるのを待つことになった。
悠仁としては挨拶だけ済ませて、早々に帰りたかったが、衣装やアクセサリーを借りたまま帰る訳にはいかない。
「失礼します。友川さん、お待たせしてすみません。本日はお疲れ様でした」
出されたハーブティーを飲んでいると、扉をノックしてから秋塚がV.I.Pルームに入って来る。悠仁は慌てて立ち上がると深々と頭を下げた。
「秋塚様。この度は、この様な機会を賜りましてありがとうございます。とても有意義な時間を過ごさせていただきました」
「固いなー。でもそこが友川さんらしいね。パーソナルエリアには誰も入れない感じ」
「秋塚様?」
「人の大事なところには、あんなに躊躇なく入れるのにね」
顔を寄せて小さく呟く。
「!?」
「俺のここ、そんなに美味しかった?」
秋塚は悠仁の腕を掴んで引き寄せると、抱き合うような姿勢で臀部を弄る。
「秋塚様!」
「大丈夫。鍵も掛けたしここは完全な密室。カメラもありません」
そう言うと妖艶に笑って、悠仁の唇に舌を這わせて、それをすぐ追うように下唇を食んで、強く噛んだ。
「……痛っ」
「昼間のことは感謝してますけど、俺は本来捕食が好きなので、やられっぱなしじゃ終われない訳です」
「……そうは申されましても」
「友川さんもタチだからって理由は無しですよ?」
「あの場合は不可抗力かと存じます」
そう言って悠仁は仕返しのように秋塚の唇に吸い付くと、そのまま唇の端を噛み返した。
「うっ」
秋塚は一瞬呻いて、咄嗟に突き放すように悠仁の体を突き飛ばす。
「はあぁ、まったく」
悠仁は大きく溜め息を吐き出して頭を抱えると、何か吹っ切ったように秋塚を睨め付ける。
「私如きが差し出がましいですが、秋塚様に一言申し上げても宜しいですか」
「どうしたんです?別に構いませんよ」
「……あの状況で、酷く欲しがって強請る顔したのは記憶に残ってない。そう言い逃れるつもりですか」
「あら、その顔が本来の友川さんなのかな?」
「ここが疼くような薬盛られたのは自業自得でしょ」
そう言って秋塚の腕を掴んで抱き寄せると、臀部を乱暴に揉みしだき、トラウザーズの上から双丘の溝を割るように指を滑らせて後孔へと指を押し込む。
「あ……ちょ」
「ほら、昼みたいに腰が跳ねた」
秋塚の体にはまだ感覚が残っているのだろう。薪が燻るような静かな赤みが頰に差す。
「気持ち良くても悪いことじゃないでしょう?」
悠仁は続けてそう呟くと、右手で秋塚の後頭部を抑えて、昼間の再現のような卑猥なキスをする。
「ん、ふっ」
咄嗟のことに息遣いが乱れる秋塚の甘い吐息が漏れる。
悠仁の左腕が秋塚の背中を支えると、まるで激しい喧嘩のように荒々しいキスをしてお互いを貪り合う。
くちゅくちゅと鈍い水音が跳ねると、熱を持ち始めた互いの昂りがベルトの下で頭を突き合わせる。
「……生理現象と、ただの処理。それだけですよ」
「友川さんて、素もこんな感じ?まだ隠してる?」
「普通の人間ですよ」
名残惜し気に唇を啄むと、悠仁は体を離して少し乱れた衣服を整える。
「ご用件は以上でお済みになりましたでしょうか。お借りしたアクセサリーと、ご用意いただいたこの洋服をお返ししなければいけませんが、如何致しましょうか」
「あ、戻った?」
くすりと笑う秋塚に無表情のまま顔を寄せると、悠仁は物音がしますと耳元に囁く。
「気のせいでなければ、ドアの外で様子を窺ってる方がいらっしゃいます」
「なるほど」
小さく答えて頷くので、悠仁は秋塚が聡い男でホッとする。
だが何を考えてるのか、次の瞬間にはこんなことを言い出すのだ。
「お礼のつもりとは云え、本日は無理なお願いでしたが、ご協力くださってありがとうございました。宜しければ予定通り、少し場所を変えたいのですが、もうそろそろ移動しましょうか」
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悠仁は仕方なくそれに応えた。
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