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29.②
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呆れる貴臣に後のことは任せると、勝手にクローゼットから着替えを取り出してバスルームに向かう。
そういえば、そろそろ兄の誕生日だし、また野島さんに選んでもらってワインをプレゼントするのも良いかも知れない。
それにゴールデンウィークは、兄が実家に顔を出すかも知れないと言っていたので、俺もそのタイミングで帰省するのも良いだろう。
いや、それよりも貴臣とどこかに旅行に行くのも悪くない。なかなか大っぴらにデートが出来ないので、関西辺りに遊びに行って、ラブラブデートを楽しむのもアリだ。
そんな勝手な想像をしながら、サッと体や頭を洗ってシャワーを済ませると、なるほど、どうして貴臣が風呂上がりにあの状態で部屋に来たのか理解した。
「あっつ……」
洗面所で髪を拭いてタオルドライを済ませると、パンツとズボンだけを穿いて、上半身は裸のままリビングに向かう。
「圭吾。お前も臨戦態勢かよ」
「それな。風呂上がりがこんなに暑いとは」
「ほんと、一気に春だもんな。この前までめちゃくちゃ寒かったのに」
「それで? 結局どうなったの」
「金曜の仕事終わりにおいでって」
「そっか、了解。俺もビールもらうぞ」
断りを入れて冷蔵庫からビールを取り出すと、そのままソファーに座ってプルトップに指を掛ける。
プシュッと良い音がして缶ビールを開けると、風呂上がりの渇いた喉にシュワシュワと炭酸が弾け、なんとも贅沢な気分になる。
「だぁああ! 美味い」
「大袈裟だな」
呆れる貴臣をチラッと見ると、そう言いながらも美味そうにビールを飲んでいる。
「そういやもう時期、兄ちゃん誕生日なんだわ」
「春生まれだって、前に言ってたね」
「誕生日は将生さんとゆっくり祝うだろうし、今週末にサプライズでまたワインとシャンパン用意しようと思って」
「良いんじゃない? じゃあ行く前にデパ地下かどこかに寄って、プチ贅沢なデリとか買って持って行こうか」
「将生さん甘いの好きって言ってたし、そういえば伸彦くんが美味いって教えてくれた店がどっかのデパートに入ってたような」
「まだノブと連絡取ってるの」
「取ってるよ。秀一さんも連絡くれるし」
「は? 兄貴もなの⁉︎ この人たらしめ。いつの間にそんなことになってんだよ」
「なんだろうね。俺、東条家の男にモテるみたい」
「バカなこと言うんじゃない」
「冗談だよ。伸彦くんから秀一さんは横浜だから会う機会もあるかも知れないって、紹介されたんだよ」
「またノブのやつ、勝手なことを」
貴臣は文句を言いながらも、どこか楽しそうで、その横顔を見られて安心する。
「さてさて貴臣くん。他の男の話はもう良いからさ、俺とキスしてドロドロになりたくないですか」
「なんだよ急に」
「明日も仕事だから、飛ぶまでまではしないけど、そのエロい足がさっきからチラついてて気になっちゃうんだよね」
バスタオルの中に手を忍ばせると、白くてしなやかな太腿の内側をゆっくりと撫でて、敏感な場所に徐々に手を近付けていく。
「んっ」
「あれ、もうそんな声出ちゃうのかよ」
「だから……それは、圭吾の触り方がエロいからだろ」
「エロいのダメ?」
「ふふ、お前だったら喜んで」
貴臣は俺の首の後ろに手を回すと、口付けてすぐに舌を絡め、濃厚なキスで俺を誘う。
最初に好きだなんて言われた時は、まさかこんな風に貴臣のことを好きになると思ってなかったし、お互いにまだまだ知らないことも沢山あるのかも知れない。
だけどそうだからこそ、これからの日々を積み重ねてお互いを知り、理解を深めていければ良いと思う。
そんな新たな誓いを胸に、これからの日々に思いを馳せる。
貴臣と一緒なら乗り越えていけると信じて。
【完】
そういえば、そろそろ兄の誕生日だし、また野島さんに選んでもらってワインをプレゼントするのも良いかも知れない。
それにゴールデンウィークは、兄が実家に顔を出すかも知れないと言っていたので、俺もそのタイミングで帰省するのも良いだろう。
いや、それよりも貴臣とどこかに旅行に行くのも悪くない。なかなか大っぴらにデートが出来ないので、関西辺りに遊びに行って、ラブラブデートを楽しむのもアリだ。
そんな勝手な想像をしながら、サッと体や頭を洗ってシャワーを済ませると、なるほど、どうして貴臣が風呂上がりにあの状態で部屋に来たのか理解した。
「あっつ……」
洗面所で髪を拭いてタオルドライを済ませると、パンツとズボンだけを穿いて、上半身は裸のままリビングに向かう。
「圭吾。お前も臨戦態勢かよ」
「それな。風呂上がりがこんなに暑いとは」
「ほんと、一気に春だもんな。この前までめちゃくちゃ寒かったのに」
「それで? 結局どうなったの」
「金曜の仕事終わりにおいでって」
「そっか、了解。俺もビールもらうぞ」
断りを入れて冷蔵庫からビールを取り出すと、そのままソファーに座ってプルトップに指を掛ける。
プシュッと良い音がして缶ビールを開けると、風呂上がりの渇いた喉にシュワシュワと炭酸が弾け、なんとも贅沢な気分になる。
「だぁああ! 美味い」
「大袈裟だな」
呆れる貴臣をチラッと見ると、そう言いながらも美味そうにビールを飲んでいる。
「そういやもう時期、兄ちゃん誕生日なんだわ」
「春生まれだって、前に言ってたね」
「誕生日は将生さんとゆっくり祝うだろうし、今週末にサプライズでまたワインとシャンパン用意しようと思って」
「良いんじゃない? じゃあ行く前にデパ地下かどこかに寄って、プチ贅沢なデリとか買って持って行こうか」
「将生さん甘いの好きって言ってたし、そういえば伸彦くんが美味いって教えてくれた店がどっかのデパートに入ってたような」
「まだノブと連絡取ってるの」
「取ってるよ。秀一さんも連絡くれるし」
「は? 兄貴もなの⁉︎ この人たらしめ。いつの間にそんなことになってんだよ」
「なんだろうね。俺、東条家の男にモテるみたい」
「バカなこと言うんじゃない」
「冗談だよ。伸彦くんから秀一さんは横浜だから会う機会もあるかも知れないって、紹介されたんだよ」
「またノブのやつ、勝手なことを」
貴臣は文句を言いながらも、どこか楽しそうで、その横顔を見られて安心する。
「さてさて貴臣くん。他の男の話はもう良いからさ、俺とキスしてドロドロになりたくないですか」
「なんだよ急に」
「明日も仕事だから、飛ぶまでまではしないけど、そのエロい足がさっきからチラついてて気になっちゃうんだよね」
バスタオルの中に手を忍ばせると、白くてしなやかな太腿の内側をゆっくりと撫でて、敏感な場所に徐々に手を近付けていく。
「んっ」
「あれ、もうそんな声出ちゃうのかよ」
「だから……それは、圭吾の触り方がエロいからだろ」
「エロいのダメ?」
「ふふ、お前だったら喜んで」
貴臣は俺の首の後ろに手を回すと、口付けてすぐに舌を絡め、濃厚なキスで俺を誘う。
最初に好きだなんて言われた時は、まさかこんな風に貴臣のことを好きになると思ってなかったし、お互いにまだまだ知らないことも沢山あるのかも知れない。
だけどそうだからこそ、これからの日々を積み重ねてお互いを知り、理解を深めていければ良いと思う。
そんな新たな誓いを胸に、これからの日々に思いを馳せる。
貴臣と一緒なら乗り越えていけると信じて。
【完】
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今回も素敵な作品をありがとうございます!今年はリアタイで作品を追いかけているのでジリジリしてます(笑)
都内を探せばどこかに居そうなリアル感だったり、圭吾君と貴臣君の気安い会話のやり取りだったり(好こ♡)ドラマを見ているみたいで、読んでてグイグイ引き込まれます。
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黒川さん
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そしてあたたかい感想をいただいて本当に嬉しいです。
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最後までお付き合いいただけたら嬉しく思います!
読んでくださってありがとうございます。