彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

文字の大きさ
上 下
65 / 66

29.①

しおりを挟む
 決算はなんとか黒字を叩き出し、新しい年度を迎えた四月。
 無事オープンを迎えたビブリオバーは集客も上々で売上も堅調に推移している。
「これはやべえわ。眠くなる」
「ああ、オーディオブックか」
「こんなん寝かせにかかってるだろ」
「いや、言い掛かりだろ」
 貴臣は可笑しそうに笑って俺の足を叩く。
 珍しく塚本部長が飲みに行こうと声を掛けてきた時は何事かと思ったが、集まった理由は簡単で、なんと山口がいつの間にか四元さんと婚約したらしい。
 一次会の居酒屋での飲み会を終え、二次会はオープンしたばかりのビブリオバーに来たと言う訳だ。
「しかし山ちゃんがね」
「俺はなんとなく気付いてたよ」
「え? マジで」
「うん。年明けくらいかな? 二人で歩いてんの見掛けたよ」
「そうなんだ。え? じゃあインフルエンザの時も、もしかして付き合ってたのかな」
「分かんないけど、婚約したくらいだしそうなんじゃないかな」
「よく鉢合わせしなかったな」
「どうだろうね。案外慌ててクローゼットに隠れたのかもよ?」
「怖いこと言うなよ」
「あはは。冗談だよ」
 半個室になった座席でそんなやり取りをしていると、別の場所に案内されていた坂牧さんが、そろそろ帰るらしく俺たちの元にやってきた。
 結局俺たちもそのタイミングで店を出ると、電車に揺られて貴臣の家に向かい、すっかりあたたかくなって過ごしやすい日が増えたとか言いながら帰宅した。
「また結局お前の家に来ちゃったな」
「どうする? そろそろ一緒に住む?」
「それな。でもお前は良いのか」
「なにが」
「指輪のこともそうだけど、一緒に住んだら確実にバレるだろ。うちの会社、そんなにうるさくないと思うけど、噂はされると思うぞ」
「圭吾はどうなんだよ」
「俺は指輪用意した時点で腹括ってるから。必要なら会社にも報告しても良いと思ってるし」
「いや、そこまではね。でも覚悟は分かったよ」
 貴臣は少し納得したように俺に顔を寄せてキスをすると、先にシャワー浴びてくるわと言ってバスルームに向かった。
 俺は適当にテレビをつけてゲーム機を起動させると、やり込み途中のソフトを入れてセーブデータを読み込む。
 そしてゲームをしながら、確かに一緒に住んでしまった方が、色々と便利だし、真剣に考えるべきタイミングなんじゃないかと思う。
 ゲームを一時停止してスマホを手に取ると、兄にメッセージを送り、貴臣と一緒に住もうかと思うと送ってみる。
 人生の先輩であり、将生さんというパートナーも居る兄だからこそ、こういう時は甘えて相談すべきだと思ったからだ。
 するとすぐに返事がきて、今度会う時に直接話を聞くと言うので、集まる日程を決めてしばらくメッセージのやり取りを続ける。
 頭ごなしに反対はしてこないが、もう少しゆっくり考えても良いんじゃないかと遠回しなアドバイスも添えられていたけど、それも会った時に話し合って考えることにした。
 そうこうしてるうちにシャワーを浴び終えた貴臣が、またバスタオルを腰に巻いた姿のまま、ハンドタオルで髪の毛を拭きながらリビングに現れた。
「お前な……その無防備な格好で出てくるなよ」
「やだエッチ。そんなエロい目で見て」
「そりゃそうだろ。襲うぞ!」
「あはは。冗談はさておき、なんでゲーム止めてんの」
「ああ、兄ちゃんとメッセージやり取りしてる。集まるの今週末でも良かったか?」
「俺は構わないよ」
 貴臣は答えながら、喉が渇いたと冷蔵庫からビールを取り出してきた。
「じゃあ、後はお前が続きやっといて。俺も風呂入ってくるから」
「続きってなに。ゲーム?」
「違うよ。兄ちゃんか将生さんに連絡して。家でゆっくり飯食うみたいだけど、金曜なのか土曜なのか。あと、何時頃とか、ちゃんと決めといて」
「丸投げじゃん」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...