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29.①
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決算はなんとか黒字を叩き出し、新しい年度を迎えた四月。
無事オープンを迎えたビブリオバーは集客も上々で売上も堅調に推移している。
「これはやべえわ。眠くなる」
「ああ、オーディオブックか」
「こんなん寝かせにかかってるだろ」
「いや、言い掛かりだろ」
貴臣は可笑しそうに笑って俺の足を叩く。
珍しく塚本部長が飲みに行こうと声を掛けてきた時は何事かと思ったが、集まった理由は簡単で、なんと山口がいつの間にか四元さんと婚約したらしい。
一次会の居酒屋での飲み会を終え、二次会はオープンしたばかりのビブリオバーに来たと言う訳だ。
「しかし山ちゃんがね」
「俺はなんとなく気付いてたよ」
「え? マジで」
「うん。年明けくらいかな? 二人で歩いてんの見掛けたよ」
「そうなんだ。え? じゃあインフルエンザの時も、もしかして付き合ってたのかな」
「分かんないけど、婚約したくらいだしそうなんじゃないかな」
「よく鉢合わせしなかったな」
「どうだろうね。案外慌ててクローゼットに隠れたのかもよ?」
「怖いこと言うなよ」
「あはは。冗談だよ」
半個室になった座席でそんなやり取りをしていると、別の場所に案内されていた坂牧さんが、そろそろ帰るらしく俺たちの元にやってきた。
結局俺たちもそのタイミングで店を出ると、電車に揺られて貴臣の家に向かい、すっかりあたたかくなって過ごしやすい日が増えたとか言いながら帰宅した。
「また結局お前の家に来ちゃったな」
「どうする? そろそろ一緒に住む?」
「それな。でもお前は良いのか」
「なにが」
「指輪のこともそうだけど、一緒に住んだら確実にバレるだろ。うちの会社、そんなにうるさくないと思うけど、噂はされると思うぞ」
「圭吾はどうなんだよ」
「俺は指輪用意した時点で腹括ってるから。必要なら会社にも報告しても良いと思ってるし」
「いや、そこまではね。でも覚悟は分かったよ」
貴臣は少し納得したように俺に顔を寄せてキスをすると、先にシャワー浴びてくるわと言ってバスルームに向かった。
俺は適当にテレビをつけてゲーム機を起動させると、やり込み途中のソフトを入れてセーブデータを読み込む。
そしてゲームをしながら、確かに一緒に住んでしまった方が、色々と便利だし、真剣に考えるべきタイミングなんじゃないかと思う。
ゲームを一時停止してスマホを手に取ると、兄にメッセージを送り、貴臣と一緒に住もうかと思うと送ってみる。
人生の先輩であり、将生さんというパートナーも居る兄だからこそ、こういう時は甘えて相談すべきだと思ったからだ。
するとすぐに返事がきて、今度会う時に直接話を聞くと言うので、集まる日程を決めてしばらくメッセージのやり取りを続ける。
頭ごなしに反対はしてこないが、もう少しゆっくり考えても良いんじゃないかと遠回しなアドバイスも添えられていたけど、それも会った時に話し合って考えることにした。
そうこうしてるうちにシャワーを浴び終えた貴臣が、またバスタオルを腰に巻いた姿のまま、ハンドタオルで髪の毛を拭きながらリビングに現れた。
「お前な……その無防備な格好で出てくるなよ」
「やだエッチ。そんなエロい目で見て」
「そりゃそうだろ。襲うぞ!」
「あはは。冗談はさておき、なんでゲーム止めてんの」
「ああ、兄ちゃんとメッセージやり取りしてる。集まるの今週末でも良かったか?」
「俺は構わないよ」
貴臣は答えながら、喉が渇いたと冷蔵庫からビールを取り出してきた。
「じゃあ、後はお前が続きやっといて。俺も風呂入ってくるから」
「続きってなに。ゲーム?」
「違うよ。兄ちゃんか将生さんに連絡して。家でゆっくり飯食うみたいだけど、金曜なのか土曜なのか。あと、何時頃とか、ちゃんと決めといて」
「丸投げじゃん」
無事オープンを迎えたビブリオバーは集客も上々で売上も堅調に推移している。
「これはやべえわ。眠くなる」
「ああ、オーディオブックか」
「こんなん寝かせにかかってるだろ」
「いや、言い掛かりだろ」
貴臣は可笑しそうに笑って俺の足を叩く。
珍しく塚本部長が飲みに行こうと声を掛けてきた時は何事かと思ったが、集まった理由は簡単で、なんと山口がいつの間にか四元さんと婚約したらしい。
一次会の居酒屋での飲み会を終え、二次会はオープンしたばかりのビブリオバーに来たと言う訳だ。
「しかし山ちゃんがね」
「俺はなんとなく気付いてたよ」
「え? マジで」
「うん。年明けくらいかな? 二人で歩いてんの見掛けたよ」
「そうなんだ。え? じゃあインフルエンザの時も、もしかして付き合ってたのかな」
「分かんないけど、婚約したくらいだしそうなんじゃないかな」
「よく鉢合わせしなかったな」
「どうだろうね。案外慌ててクローゼットに隠れたのかもよ?」
「怖いこと言うなよ」
「あはは。冗談だよ」
半個室になった座席でそんなやり取りをしていると、別の場所に案内されていた坂牧さんが、そろそろ帰るらしく俺たちの元にやってきた。
結局俺たちもそのタイミングで店を出ると、電車に揺られて貴臣の家に向かい、すっかりあたたかくなって過ごしやすい日が増えたとか言いながら帰宅した。
「また結局お前の家に来ちゃったな」
「どうする? そろそろ一緒に住む?」
「それな。でもお前は良いのか」
「なにが」
「指輪のこともそうだけど、一緒に住んだら確実にバレるだろ。うちの会社、そんなにうるさくないと思うけど、噂はされると思うぞ」
「圭吾はどうなんだよ」
「俺は指輪用意した時点で腹括ってるから。必要なら会社にも報告しても良いと思ってるし」
「いや、そこまではね。でも覚悟は分かったよ」
貴臣は少し納得したように俺に顔を寄せてキスをすると、先にシャワー浴びてくるわと言ってバスルームに向かった。
俺は適当にテレビをつけてゲーム機を起動させると、やり込み途中のソフトを入れてセーブデータを読み込む。
そしてゲームをしながら、確かに一緒に住んでしまった方が、色々と便利だし、真剣に考えるべきタイミングなんじゃないかと思う。
ゲームを一時停止してスマホを手に取ると、兄にメッセージを送り、貴臣と一緒に住もうかと思うと送ってみる。
人生の先輩であり、将生さんというパートナーも居る兄だからこそ、こういう時は甘えて相談すべきだと思ったからだ。
するとすぐに返事がきて、今度会う時に直接話を聞くと言うので、集まる日程を決めてしばらくメッセージのやり取りを続ける。
頭ごなしに反対はしてこないが、もう少しゆっくり考えても良いんじゃないかと遠回しなアドバイスも添えられていたけど、それも会った時に話し合って考えることにした。
そうこうしてるうちにシャワーを浴び終えた貴臣が、またバスタオルを腰に巻いた姿のまま、ハンドタオルで髪の毛を拭きながらリビングに現れた。
「お前な……その無防備な格好で出てくるなよ」
「やだエッチ。そんなエロい目で見て」
「そりゃそうだろ。襲うぞ!」
「あはは。冗談はさておき、なんでゲーム止めてんの」
「ああ、兄ちゃんとメッセージやり取りしてる。集まるの今週末でも良かったか?」
「俺は構わないよ」
貴臣は答えながら、喉が渇いたと冷蔵庫からビールを取り出してきた。
「じゃあ、後はお前が続きやっといて。俺も風呂入ってくるから」
「続きってなに。ゲーム?」
「違うよ。兄ちゃんか将生さんに連絡して。家でゆっくり飯食うみたいだけど、金曜なのか土曜なのか。あと、何時頃とか、ちゃんと決めといて」
「丸投げじゃん」
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