彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

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28.②

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「うん。諒太さんと圭吾は兄弟だから、そんなにしょっちゅう会うのはあれかなって思うけど、だからって将生さんと二人ってのもね」
 今更ヤキモチ焼かないよねと苦笑しながらも、二人きりで会う気はないと貴臣が言う。
「俺は別に構わないよ。でも兄ちゃんがどうなのかは、さすがに分かんない」
「はは、やっぱ兄弟だね。諒太さんも同じようなこと言ってるから大丈夫だと思うって、将生さんが言ってた」
「なるほどね。それでまた向こうの家に遊びに行く感じ?」
「今度の週末はどうかって」
「良いんじゃないの。でも指輪のこと揶揄われるんだろうな……」
「諒太さん、かなり面白がってたもんね」
 クスクス笑って肩を揺らす貴臣の指には、当たり前みたいに俺が贈った指輪がはめられている。
「それより、指輪の効果抜群みたいだな」
「ああ、これ?」
「社内の女の子たち、大騒ぎしてたもんな」
「虫除けにちょうど良いよ」
「虫除けって」
 貴臣は以前からミステリアスな印象が強いのか、人事部の社員ですら、届け出をした訳でもないのに、左手の薬指に指輪をつけて現れた貴臣は結婚したのではないかと騒いでた。
 普通に考えてそんなことあるはずないのに、たかが指輪程度のことで周りが騒ぐのはなんだか可笑しかった。
 仲の良い同僚として、当然のよう俺も何人かに探りを入れられたが、まさか贈ったのが自分だなんて言い出せるはずもないし、適当に分からないと言ってあしらうことにした。
「本当は俺もつけときたいんだけどね」
「指輪のこと?」
 筑前煮を頬張りながら、この店の味付けはちょっと薄いねと貴臣は眉を寄せる。
「そう。一応身にはつけてるけどさ」
 チェーンに通してネックレスをつけるようになったけど、やっぱり一緒につけられないのはもどかしい。
「まあ、時間が経てば俺のことも下火になるだろうし、そのうちシレッとつけちゃえば良いんじゃないの」
「そうなれば良いんだけどな」
 キビナゴの天ぷらを食べながら、確かになんだか物足りない味付けだなと貴臣の顔を見た。
「じゃあ、今度の食事の時はつけていこうよ」
「それやっぱ、めちゃくちゃ揶揄われるやつじゃん」
「良いじゃん。向こうだって一緒に住んでるんだから、揶揄ってやれば良いじゃない」
「兄ちゃんああ見えて怖いからね?」
 さっさと頼んだ料理を食べ切ると、口直しに二杯目のビールを飲み、すぐに会計を済ませて店を出た。
「どうする? 飲み直すか」
「いや、明日は役所回りだから素直に帰るわ」
「マジかよ、泊まらないの」
「なにその子犬みたいな目。やめなさいよ」
「だって泊まるもんだと思ってたから」
 駅の改札に着くと、家で飲み直そうと貴臣はしきりに俺を誘ってくる。
 別に一緒に過ごすのが嫌な訳じゃない。むしろこんな風に分かりやすくグイグイ来られると、気恥ずかしい嬉しさもある。
「分かった分かった。行くから引っ張るな」
「あんまり食べられなかったし、この時間でデリバリー出来るところあるかな」
「どっかしらあるだろ」
 ラッシュを過ぎた電車に揺られて貴臣の自宅の最寄駅に移動すると、良い匂いにつられて駅前の焼き鳥屋に入ることにした。
「あ、やべ。これ匂いつくじゃん」
「家に消臭のスプレーあるから大丈夫だと思う」
「お前のスーツ借りる訳にいかねえもんな」
「ああ、丈が?」
「おいー。あえて言わなかったのによ」
「ごめんね、足が長くて」
 クスッと笑う顔は挑発的なのにどこか妖艶で、艶かしく白い足を思い出す。
「お前、いちいちエロいわ」
「なんの話だよ」
 貴臣は笑いながらビールを飲み干した。
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