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27.②
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呆気に取られた顔をする貴臣に、そりゃそうなるよなと返しつつ、ポケットからジュエリーケースを取り出す。
そして貴臣の左手を掴んで有無を言わさず薬指に指輪をはめた。
「先がどうなるかなんて分からないけど、俺はじじいになってもお前と一緒に笑ってたい」
「圭吾……」
「一緒に住むとか、パートナーシップのこととか、これから考えることは出てくるかも知れないけど、ずっと俺だけのお前でいて欲しい」
「今日の言葉は思いつきじゃなかったってことか」
「俺は浮気されるような情けない男だけど、浮気はしないし一途なんだよ」
「なにそれ。まるで俺が浮気してお前を捨てるみたいに」
「そういう意味じゃねえよ」
「分かってるよ。て言うか、普通俺が返事してから指輪はめるんじゃないの?」
「イエス以外の返答はちょっと受け付けてません」
「なんだそれ」
貴臣は可笑しそうに笑って肩を揺らす。
「お前の指輪はないの?」
「あるよ」
「じゃあ、俺がはめてやるよ」
貴臣はジュエリーケースを受け取ると、中に入った俺の指輪を手に取って、チュッとリングにキスをしてから俺の左手の薬指にそれをはめる。
「先のことなんて分からないけど、俺はお前がどんな女の子と付き合っても見守ってきた実績があるからね。今更嫌いになることはないよ。だから覚悟するのはそっちだぞ」
「おう。受けて立つ!」
「なんで喧嘩腰なんだよ」
よほど可笑しかったのか、貴臣はお腹を抱えて爆笑している。
「爆笑すんなよ。つか、お前こそ逃げるなよ」
「だから逃げないって。嬉しいよ。俺もおじいちゃんになっても一緒に笑ってたいからね」
「言質取ったからな」
「物騒な言い回しだな」
笑いながら分かったよと呟いて、貴臣は俺を抱き寄せてキスをして唇を塞ぐ。
啄むようなキスを繰り返して、そのうち何故か可笑しくなって噴き出すと、二人でお腹を抱えて笑い合う。
「なんでこんな大事な瞬間に爆笑してんだろうな」
「分かんねえ」
「しまらないな……」
「仕方ないよ」
ひとしきり笑うと、再び皿を手に取ってスイーツを堪能することにする。
「なあ貴臣、住むところとかどうする」
「住むところ?」
「今のままでも良いけど、結局貴臣の家に入り浸ることが多いからな」
「確かにね。でも仕事も家もって、四六時中一緒だと疲れない? 大丈夫なの」
「それは広い部屋借りて、ルームシェアみたいに個人のスペース確保すれば大丈夫じゃないの?」
「ああ。一軒家とかね」
「まあ借りられるかどうかは別としてね」
実際、未婚の男二人で部屋を借りるとなると、どういう関係性なのかと不動産屋で詮索されるような気もする。
「あれじゃない? 諒太さんたちに相談すれば良いんじゃないの」
「兄ちゃんに? ああ、確かに」
細長いガラスの容器に入った抹茶プリンを手に取ると、確かに兄に相談するのはありかも知れないと納得する。
「まあそれより、プロポーズしたなんて知ったら驚くんじゃない?」
「そうかな。そうでもないと思うけど」
「圭吾って、本当に色々凄いよね」
「え? なにが」
「なんでもないことみたいに、サラッと凄いことやってのけちゃうの、尊敬するよ」
「それ褒めてる? バカにしてないか」
「してないよ。まあ、とりあえず、諒太さんに連絡してみようよ」
「今から?」
「うん。プロポーズ成功した報告しないと」
「他人事みたいに言うなよ。お前が受けたんだろ」
「そうだったね」
「今気付いたわ、みたいなノリやめろよ」
「ふふ。冗談だって」
付き合ってそんな日も経ってないのに、プロポーズだなんて若いとか青いって言われるかも知れない。
ましてや俺たちは男同士で、こんな誓いに意味はないのかも知れない。だけど俺が言葉にしたのは紛れもない真実で、皺くちゃのじいさんになったイケメンってのを見てみたい。
だからこそ、貴臣が指輪を受け取ってくれたことは、さらに俺に自信を与えてくれた。
そして貴臣の左手を掴んで有無を言わさず薬指に指輪をはめた。
「先がどうなるかなんて分からないけど、俺はじじいになってもお前と一緒に笑ってたい」
「圭吾……」
「一緒に住むとか、パートナーシップのこととか、これから考えることは出てくるかも知れないけど、ずっと俺だけのお前でいて欲しい」
「今日の言葉は思いつきじゃなかったってことか」
「俺は浮気されるような情けない男だけど、浮気はしないし一途なんだよ」
「なにそれ。まるで俺が浮気してお前を捨てるみたいに」
「そういう意味じゃねえよ」
「分かってるよ。て言うか、普通俺が返事してから指輪はめるんじゃないの?」
「イエス以外の返答はちょっと受け付けてません」
「なんだそれ」
貴臣は可笑しそうに笑って肩を揺らす。
「お前の指輪はないの?」
「あるよ」
「じゃあ、俺がはめてやるよ」
貴臣はジュエリーケースを受け取ると、中に入った俺の指輪を手に取って、チュッとリングにキスをしてから俺の左手の薬指にそれをはめる。
「先のことなんて分からないけど、俺はお前がどんな女の子と付き合っても見守ってきた実績があるからね。今更嫌いになることはないよ。だから覚悟するのはそっちだぞ」
「おう。受けて立つ!」
「なんで喧嘩腰なんだよ」
よほど可笑しかったのか、貴臣はお腹を抱えて爆笑している。
「爆笑すんなよ。つか、お前こそ逃げるなよ」
「だから逃げないって。嬉しいよ。俺もおじいちゃんになっても一緒に笑ってたいからね」
「言質取ったからな」
「物騒な言い回しだな」
笑いながら分かったよと呟いて、貴臣は俺を抱き寄せてキスをして唇を塞ぐ。
啄むようなキスを繰り返して、そのうち何故か可笑しくなって噴き出すと、二人でお腹を抱えて笑い合う。
「なんでこんな大事な瞬間に爆笑してんだろうな」
「分かんねえ」
「しまらないな……」
「仕方ないよ」
ひとしきり笑うと、再び皿を手に取ってスイーツを堪能することにする。
「なあ貴臣、住むところとかどうする」
「住むところ?」
「今のままでも良いけど、結局貴臣の家に入り浸ることが多いからな」
「確かにね。でも仕事も家もって、四六時中一緒だと疲れない? 大丈夫なの」
「それは広い部屋借りて、ルームシェアみたいに個人のスペース確保すれば大丈夫じゃないの?」
「ああ。一軒家とかね」
「まあ借りられるかどうかは別としてね」
実際、未婚の男二人で部屋を借りるとなると、どういう関係性なのかと不動産屋で詮索されるような気もする。
「あれじゃない? 諒太さんたちに相談すれば良いんじゃないの」
「兄ちゃんに? ああ、確かに」
細長いガラスの容器に入った抹茶プリンを手に取ると、確かに兄に相談するのはありかも知れないと納得する。
「まあそれより、プロポーズしたなんて知ったら驚くんじゃない?」
「そうかな。そうでもないと思うけど」
「圭吾って、本当に色々凄いよね」
「え? なにが」
「なんでもないことみたいに、サラッと凄いことやってのけちゃうの、尊敬するよ」
「それ褒めてる? バカにしてないか」
「してないよ。まあ、とりあえず、諒太さんに連絡してみようよ」
「今から?」
「うん。プロポーズ成功した報告しないと」
「他人事みたいに言うなよ。お前が受けたんだろ」
「そうだったね」
「今気付いたわ、みたいなノリやめろよ」
「ふふ。冗談だって」
付き合ってそんな日も経ってないのに、プロポーズだなんて若いとか青いって言われるかも知れない。
ましてや俺たちは男同士で、こんな誓いに意味はないのかも知れない。だけど俺が言葉にしたのは紛れもない真実で、皺くちゃのじいさんになったイケメンってのを見てみたい。
だからこそ、貴臣が指輪を受け取ってくれたことは、さらに俺に自信を与えてくれた。
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