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27.①
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「散らかってるから、ちょっと掃除するわ」
玄関に入るなり靴を脱ぐと、掃除をサボっていたのを思い出してごめんと謝る。
「俺も手伝うよ」
「今日泊まるだろ。風呂掃除頼んで良い?」
「分かった」
とりあえずマフラーを外してコートを脱ぎ、同じようにコートを脱いだ貴臣から服を預かってハンガーに掛ける。
そして買ってきたお土産を冷蔵庫にしまうと、寝室のクローゼットから掃除機を取り出して窓を開ける。
床に散らばった洋服を回収しつつ、寝室からリビングまで一気に掃除機をかけ、それを終えるとフロアモップのシートを取り替えて床掃除をする。
「風呂、お湯貯めて良いんだよな」
「うん。ありがとう」
枕カバーやシーツを取り替えて、集めた洗濯物を洗濯機に放り込むと、コーヒーを淹れてソファーで一息つく。
「ふう。なんかバタバタしたけど、とりあえず落ち着いて良かったな」
「一緒に行ってくれてありがとう」
「行って良かったか?」
「うん、まあ……後味悪い感じにはならずに済んだかな」
「貴臣には貴臣んちの事情があるだろうし、俺が安易に首を突っ込んで良い話じゃないけどさ、やっぱり家族とは出来れば仲良くして欲しいから」
「分かってるよ。感謝してる」
「そっか。お節介が過ぎた感じは反省してる」
「分かってるなら良いよ」
貴臣は俺の脇腹にパンチすると、なに言い出すのかと焦ったよと苦笑した。
別に俺は奇を衒ったことをしたつもりはない。純粋に今の俺に出来る最善のことをしたつもりだ。
結婚なんて言葉が出たのは理由があって、来週のバレンタインに貴臣にプロポーズをするつもりだったからだったりする。
いや、プロポーズと言っても、本当に結婚する訳じゃないし、パートナーシップの届け出をするという意味でもない。
ただ、先行き不安な関係を少しでも揺るぎないものにするために指輪を贈ろうとしている。
「ノブのオススメのスイーツ食おうぜ」
「じゃあ冷蔵庫から出して、適当な皿取ってきてくれる?」
「良いよ」
貴臣がキッチンに向かったのを確認すると、俺は寝室のクローゼットを開け、チェストの一番上の引き出しからジュエリーケースを取り出して大きく深呼吸する。
「圭吾?」
急に寝室に向かった俺の行動に違和感を覚えたのか、貴臣が様子を見に部屋を覗きにきた。
「ん?」
「どれから食う? ホールケーキもあるじゃん。買い過ぎだよ」
「伸彦くんが、全部美味しいって言うからさ」
「ノブの言葉に全幅の信頼寄せ過ぎでしょ」
「でもランチも美味かったし」
貴臣にバレないようにジュエリーケースをポケットにしまうと、リビングに移動してテーブルに広げたスイーツを皿に取り分ける。
「ああ、あの店は美味かったね」
貴臣も適当に皿に取り分け、いただきますと手を合わせて早速スイーツを頬張る。
「なにこれ。このチーズケーキ溶ける」
「こっちのクッキーシューもめちゃくちゃ美味い」
少し小ぶりなサイズの、カリッとしてサクサクしたシュー生地の中に、ずっしりと濃厚なカスタードクリームが詰まっている。
「それで? さっき寝室でなにしてたの」
「別になにもしてねえよ」
「嘘だね。なんか隠すの見えたし」
「はあ……お前は本当に」
「なんだよ」
「まあ良いや。えっと、ちょっと良いか」
「ん?」
二口目のチーズケーキを頬張りながら、貴臣は何事かと目を丸くして俺の方を見る。
「食ってても良いけどさ、ちょっと皿置いてくんないかな」
「なに。なんか大事な話?」
「まあ……大事っちゃ大事」
「なんだよ改まって」
おかしな奴だなと笑いながら皿を置くと、貴臣は俺を見て首を傾げている。
こんな風に仕切り直すと緊張感が増すが、大事な話ではあるので、ケーキを食べつつという訳にもいかない。
「お前に受け取って欲しいものがある」
「え、なに」
「バレンタインに渡すつもりだったんだけど」
「そうなの? じゃあなんで今なの」
「結婚を申し込みたいからだ」
「は?」
玄関に入るなり靴を脱ぐと、掃除をサボっていたのを思い出してごめんと謝る。
「俺も手伝うよ」
「今日泊まるだろ。風呂掃除頼んで良い?」
「分かった」
とりあえずマフラーを外してコートを脱ぎ、同じようにコートを脱いだ貴臣から服を預かってハンガーに掛ける。
そして買ってきたお土産を冷蔵庫にしまうと、寝室のクローゼットから掃除機を取り出して窓を開ける。
床に散らばった洋服を回収しつつ、寝室からリビングまで一気に掃除機をかけ、それを終えるとフロアモップのシートを取り替えて床掃除をする。
「風呂、お湯貯めて良いんだよな」
「うん。ありがとう」
枕カバーやシーツを取り替えて、集めた洗濯物を洗濯機に放り込むと、コーヒーを淹れてソファーで一息つく。
「ふう。なんかバタバタしたけど、とりあえず落ち着いて良かったな」
「一緒に行ってくれてありがとう」
「行って良かったか?」
「うん、まあ……後味悪い感じにはならずに済んだかな」
「貴臣には貴臣んちの事情があるだろうし、俺が安易に首を突っ込んで良い話じゃないけどさ、やっぱり家族とは出来れば仲良くして欲しいから」
「分かってるよ。感謝してる」
「そっか。お節介が過ぎた感じは反省してる」
「分かってるなら良いよ」
貴臣は俺の脇腹にパンチすると、なに言い出すのかと焦ったよと苦笑した。
別に俺は奇を衒ったことをしたつもりはない。純粋に今の俺に出来る最善のことをしたつもりだ。
結婚なんて言葉が出たのは理由があって、来週のバレンタインに貴臣にプロポーズをするつもりだったからだったりする。
いや、プロポーズと言っても、本当に結婚する訳じゃないし、パートナーシップの届け出をするという意味でもない。
ただ、先行き不安な関係を少しでも揺るぎないものにするために指輪を贈ろうとしている。
「ノブのオススメのスイーツ食おうぜ」
「じゃあ冷蔵庫から出して、適当な皿取ってきてくれる?」
「良いよ」
貴臣がキッチンに向かったのを確認すると、俺は寝室のクローゼットを開け、チェストの一番上の引き出しからジュエリーケースを取り出して大きく深呼吸する。
「圭吾?」
急に寝室に向かった俺の行動に違和感を覚えたのか、貴臣が様子を見に部屋を覗きにきた。
「ん?」
「どれから食う? ホールケーキもあるじゃん。買い過ぎだよ」
「伸彦くんが、全部美味しいって言うからさ」
「ノブの言葉に全幅の信頼寄せ過ぎでしょ」
「でもランチも美味かったし」
貴臣にバレないようにジュエリーケースをポケットにしまうと、リビングに移動してテーブルに広げたスイーツを皿に取り分ける。
「ああ、あの店は美味かったね」
貴臣も適当に皿に取り分け、いただきますと手を合わせて早速スイーツを頬張る。
「なにこれ。このチーズケーキ溶ける」
「こっちのクッキーシューもめちゃくちゃ美味い」
少し小ぶりなサイズの、カリッとしてサクサクしたシュー生地の中に、ずっしりと濃厚なカスタードクリームが詰まっている。
「それで? さっき寝室でなにしてたの」
「別になにもしてねえよ」
「嘘だね。なんか隠すの見えたし」
「はあ……お前は本当に」
「なんだよ」
「まあ良いや。えっと、ちょっと良いか」
「ん?」
二口目のチーズケーキを頬張りながら、貴臣は何事かと目を丸くして俺の方を見る。
「食ってても良いけどさ、ちょっと皿置いてくんないかな」
「なに。なんか大事な話?」
「まあ……大事っちゃ大事」
「なんだよ改まって」
おかしな奴だなと笑いながら皿を置くと、貴臣は俺を見て首を傾げている。
こんな風に仕切り直すと緊張感が増すが、大事な話ではあるので、ケーキを食べつつという訳にもいかない。
「お前に受け取って欲しいものがある」
「え、なに」
「バレンタインに渡すつもりだったんだけど」
「そうなの? じゃあなんで今なの」
「結婚を申し込みたいからだ」
「は?」
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