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26.④
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「そうだよ。俺は別に可哀想な子じゃない。異質かも知れないけど、俺にとっては今も昔も普通のままなんだから」
貴臣はそれまで喉に閊えていただろう言葉を吐き出せたからか、すっきりとした顔をしている。
「本多さん。貴臣への気持ち、本当に嬉しかったです。うちは主人が偏屈で、今は貴臣のことを受け入れられないみたいですけど、家族はみんなこの子を支えるつもりです」
「微力ながら俺も支えますから。安心してもらえるように努力していきますね」
「ふふ。本当に真面目な方なのね」
貴臣のお母さんは、貴臣によく似た顔で優しく笑う。
「圭吾さん、そういえば兄貴とは付き合って長いの?」
「おいこらノブ」
「そこ気になるよね。仲良くなったのは入社してからだから、付き合い自体はもう六年になるかな」
恋人として付き合ったのはもっと最近のことだけど、そこは別に濁しても問題ないだろう。友人としての付き合いがそれくらいなのは事実なんだから。
貴臣はなにを言ってるんだと複雑そうな顔をしているけれど、伸彦くんとお母さんは驚いた様子で目を見開いている。
「すご。そりゃ結婚とかいう感覚になるよね」
「おいノブ。圭吾が話しやすいからって、色々聞き過ぎなんだよ。デリカシーのない質問するな」
「いいじゃん。圭吾さんはもう俺の兄貴も同然だろ」
「んな訳あるか、バカ」
賑やかな伸彦くんのおかげで、そんな風に終始楽しく過ごすと、デザートのケーキも食べ終えてそろそろ解散しようかと話を切り上げる。
「今日はお時間を取らせてしまってすみませんでした」
「いいえ、お会いできて良かったです。本多さん、貴臣のこと、よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
貴臣のお母さんと頭を下げ合うと、相変わらず複雑な顔をした貴臣が俺を睨んでいる視線とぶつかる。
確かに断りなく結婚だとか、ちょっとぶっ飛んだ話をしてしまったことは反省してるけど、後悔は一切ない。
「圭吾さん、連絡先交換しませんか」
「おう。良いよ」
スマホを取り出してメッセージアプリの連絡先を交換すると、早速よろしくと手を振るキャラクターのスタンプが送られてきた。
伸彦くんは貴臣よりもだいぶ人懐っこい性格らしい。見た目も貴臣とは違うタイプだけど、爽やかな王子様っぽいところは似てるだろうか。
いや。正直なところ、めちゃくちゃ人懐っこい犬みたいだ。可愛らしい大型犬。それがぴったりだと思う。
俺たちが連絡先を交換している間、お手洗いで席を外していたと思ってた貴臣が会計を済ませていたらしく、俺たちは慌ただしく店を出た。
駅まで引き返す道で、俺は改めて貴臣のお母さんに個人の連絡先を書いた名刺を渡しておいた。
「貴臣と連絡がつかなかったら、いつでも連絡してください」
「ありがとうございます」
雨が降るのか、曇天になってきた空の下をまた五分ほど歩き、駅前に到着すると、やっぱり泊まっていかないかと貴臣のお母さんが少し悲しそうな顔をする。
「ばあちゃんと親父を刺激したくないから。そんな顔しないでよ、母さん」
貴臣とお母さんがやり取りする横で、伸彦くんからお土産を買うならオススメのスイーツがあると教えてもらい、帰りに買って帰ることにする。
貴臣のお兄さんと妹さんも俺に会いたがってるとのことなので、いつか集まろうと約束していよいよ解散した。
「本当にお前は……」
「あ、なに。結婚とか言ったこと?」
「そうだよ。いくらなんでも暴走し過ぎだろ」
「そんなことないよ。俺は結構真剣に考えてるし」
「真剣ってお前」
「まあ良いじゃん。とりあえず帰ろうぜ」
伸彦くんにオススメされたスイーツを買って回り、大荷物で新幹線のチケットを購入すると、また一時間掛けて東京に戻り、俺の家に行くことにした。
貴臣はそれまで喉に閊えていただろう言葉を吐き出せたからか、すっきりとした顔をしている。
「本多さん。貴臣への気持ち、本当に嬉しかったです。うちは主人が偏屈で、今は貴臣のことを受け入れられないみたいですけど、家族はみんなこの子を支えるつもりです」
「微力ながら俺も支えますから。安心してもらえるように努力していきますね」
「ふふ。本当に真面目な方なのね」
貴臣のお母さんは、貴臣によく似た顔で優しく笑う。
「圭吾さん、そういえば兄貴とは付き合って長いの?」
「おいこらノブ」
「そこ気になるよね。仲良くなったのは入社してからだから、付き合い自体はもう六年になるかな」
恋人として付き合ったのはもっと最近のことだけど、そこは別に濁しても問題ないだろう。友人としての付き合いがそれくらいなのは事実なんだから。
貴臣はなにを言ってるんだと複雑そうな顔をしているけれど、伸彦くんとお母さんは驚いた様子で目を見開いている。
「すご。そりゃ結婚とかいう感覚になるよね」
「おいノブ。圭吾が話しやすいからって、色々聞き過ぎなんだよ。デリカシーのない質問するな」
「いいじゃん。圭吾さんはもう俺の兄貴も同然だろ」
「んな訳あるか、バカ」
賑やかな伸彦くんのおかげで、そんな風に終始楽しく過ごすと、デザートのケーキも食べ終えてそろそろ解散しようかと話を切り上げる。
「今日はお時間を取らせてしまってすみませんでした」
「いいえ、お会いできて良かったです。本多さん、貴臣のこと、よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
貴臣のお母さんと頭を下げ合うと、相変わらず複雑な顔をした貴臣が俺を睨んでいる視線とぶつかる。
確かに断りなく結婚だとか、ちょっとぶっ飛んだ話をしてしまったことは反省してるけど、後悔は一切ない。
「圭吾さん、連絡先交換しませんか」
「おう。良いよ」
スマホを取り出してメッセージアプリの連絡先を交換すると、早速よろしくと手を振るキャラクターのスタンプが送られてきた。
伸彦くんは貴臣よりもだいぶ人懐っこい性格らしい。見た目も貴臣とは違うタイプだけど、爽やかな王子様っぽいところは似てるだろうか。
いや。正直なところ、めちゃくちゃ人懐っこい犬みたいだ。可愛らしい大型犬。それがぴったりだと思う。
俺たちが連絡先を交換している間、お手洗いで席を外していたと思ってた貴臣が会計を済ませていたらしく、俺たちは慌ただしく店を出た。
駅まで引き返す道で、俺は改めて貴臣のお母さんに個人の連絡先を書いた名刺を渡しておいた。
「貴臣と連絡がつかなかったら、いつでも連絡してください」
「ありがとうございます」
雨が降るのか、曇天になってきた空の下をまた五分ほど歩き、駅前に到着すると、やっぱり泊まっていかないかと貴臣のお母さんが少し悲しそうな顔をする。
「ばあちゃんと親父を刺激したくないから。そんな顔しないでよ、母さん」
貴臣とお母さんがやり取りする横で、伸彦くんからお土産を買うならオススメのスイーツがあると教えてもらい、帰りに買って帰ることにする。
貴臣のお兄さんと妹さんも俺に会いたがってるとのことなので、いつか集まろうと約束していよいよ解散した。
「本当にお前は……」
「あ、なに。結婚とか言ったこと?」
「そうだよ。いくらなんでも暴走し過ぎだろ」
「そんなことないよ。俺は結構真剣に考えてるし」
「真剣ってお前」
「まあ良いじゃん。とりあえず帰ろうぜ」
伸彦くんにオススメされたスイーツを買って回り、大荷物で新幹線のチケットを購入すると、また一時間掛けて東京に戻り、俺の家に行くことにした。
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