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26.③
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伸彦くんがオススメするだけあって、かなり美味しい料理を堪能した俺たちは追加でデザートを頼むと、お茶をしながら本題に移る。
「大変不躾ですが、まずはきちんとご挨拶をさせてください」
「圭吾?」
不思議そうな顔をする貴臣に微笑んで見せると、俺は貴臣のお母さんを見て頭を下げる。
「結婚という選択肢がないので、ご安心いただくのは難しいことだと思いますが、私は貴臣さんと真剣に交際させてもらってます」
「ちょ、圭吾」
「貴臣さんの了解を得てないのでまだですが、そのうち実家にも同様の報告をするつもりです。俺が良い加減な気持ちで彼を弄んでいる訳ではないことは理解してください」
「そんな、頭を上げてください」
慌てた様子で貴臣のお母さんが俺の肩に触れ、頭を下げるのはこちらの方ですと謝られてしまう。
「私は母親失格です」
「母さん……」
「貴臣が他の子と違うのは、この子が幼い頃からなんとなく気付いていたんです。それなのになんのケアもしてあげられなくて、母親なのに」
貴臣のお母さんは膝の上でギュッと手を握ると、その様子を見ていた伸彦くんがお母さんの肩をぽんぽんと優しく撫でる。
「圭吾さん、うちはばあちゃんが特殊な経験をしてて、親父もそのことでトラウマがあって、兄貴のことを毛嫌いしてしまうのは聞いてますか」
「うん。聞いてるよ」
「身内の恥なんで大声で話せませんけど、俺は兄貴が悪いなんて思ってないんです。むしろ家に寄り付かなかった理由が分かってホッとしたんですよ」
「そっか。良い弟で良かったな、貴臣」
隣に座る貴臣に声を掛けると、怒ってるような恥ずかしがってるような複雑な顔をして伸彦くんを睨んでいる。
「あの、お母さん。俺は一生涯を掛けて息子さんを幸せにしたいと思ってます。他人同士ですからケンカをすることもあるかも知れません。だけど俺はそう思ってます」
俺の言葉に驚いた様子で、貴臣のお母さんは目を丸くする。当然ながら貴臣も黙ってない。
「おい圭吾、なにもそこまで」
「うん。先のことは誰にも分からないし、そうなりたくない結論を出さなきゃいけない日が来るかも知れない。でも俺はそういう気持ちでお前と付き合ってるから」
「別に親に会わせたからって、そこまでしてくれなくても」
「確かにね。まだ三十にもなってないし、これから先にどんな人との出会いがあるかも分からない。貴臣が俺に愛想を尽かすかも知れないし、考えたらキリがないよ」
「そうだよ。だからなにもそこまで言い切らなくても」
「だけどさ、今こうしてこの場にいるのもなにかしら意味があって、縁があるからこうなったんだと思うんだよ」
押し掛けてきておいて、縁があるだなんてちょっと身勝手な言い方かなとも思ったけど、貴臣のお母さんは俺が恋人だと知ってて会ってくれたんだから、それくらい許して欲しい。
「本多さんは誠実で真面目な方なのね」
それまで黙って話を聞いていた貴臣のお母さんが、初めて柔らかい笑顔を見せる。
「いえいえ、そんなことはないです。俺はいい加減だし大雑把だから、よく貴臣に怒られてばっかりですよ」
「貴臣はね、喜怒哀楽を表に出さない子で、なんでも一人で出来てしまう子なんです」
「ちょっと母さん、突然なんの話だよ」
貴臣は恥ずかしそうにお母さんの話を止めに掛かるけど、俺は続きが聞きたくてお母さんの方を見る。
「周りとは違う自覚があったから、ご家族に心配を掛けたくなかったんじゃないでしょうか」
「そうなんでしょうね。そうさせてしまったことに、今更ながら後悔してるんです」
「母さん、もう大丈夫だって」
「ごめんなさいね貴臣。だけどそうね。本多さんに会えて、ご挨拶も出来て安心したわ」
「大変不躾ですが、まずはきちんとご挨拶をさせてください」
「圭吾?」
不思議そうな顔をする貴臣に微笑んで見せると、俺は貴臣のお母さんを見て頭を下げる。
「結婚という選択肢がないので、ご安心いただくのは難しいことだと思いますが、私は貴臣さんと真剣に交際させてもらってます」
「ちょ、圭吾」
「貴臣さんの了解を得てないのでまだですが、そのうち実家にも同様の報告をするつもりです。俺が良い加減な気持ちで彼を弄んでいる訳ではないことは理解してください」
「そんな、頭を上げてください」
慌てた様子で貴臣のお母さんが俺の肩に触れ、頭を下げるのはこちらの方ですと謝られてしまう。
「私は母親失格です」
「母さん……」
「貴臣が他の子と違うのは、この子が幼い頃からなんとなく気付いていたんです。それなのになんのケアもしてあげられなくて、母親なのに」
貴臣のお母さんは膝の上でギュッと手を握ると、その様子を見ていた伸彦くんがお母さんの肩をぽんぽんと優しく撫でる。
「圭吾さん、うちはばあちゃんが特殊な経験をしてて、親父もそのことでトラウマがあって、兄貴のことを毛嫌いしてしまうのは聞いてますか」
「うん。聞いてるよ」
「身内の恥なんで大声で話せませんけど、俺は兄貴が悪いなんて思ってないんです。むしろ家に寄り付かなかった理由が分かってホッとしたんですよ」
「そっか。良い弟で良かったな、貴臣」
隣に座る貴臣に声を掛けると、怒ってるような恥ずかしがってるような複雑な顔をして伸彦くんを睨んでいる。
「あの、お母さん。俺は一生涯を掛けて息子さんを幸せにしたいと思ってます。他人同士ですからケンカをすることもあるかも知れません。だけど俺はそう思ってます」
俺の言葉に驚いた様子で、貴臣のお母さんは目を丸くする。当然ながら貴臣も黙ってない。
「おい圭吾、なにもそこまで」
「うん。先のことは誰にも分からないし、そうなりたくない結論を出さなきゃいけない日が来るかも知れない。でも俺はそういう気持ちでお前と付き合ってるから」
「別に親に会わせたからって、そこまでしてくれなくても」
「確かにね。まだ三十にもなってないし、これから先にどんな人との出会いがあるかも分からない。貴臣が俺に愛想を尽かすかも知れないし、考えたらキリがないよ」
「そうだよ。だからなにもそこまで言い切らなくても」
「だけどさ、今こうしてこの場にいるのもなにかしら意味があって、縁があるからこうなったんだと思うんだよ」
押し掛けてきておいて、縁があるだなんてちょっと身勝手な言い方かなとも思ったけど、貴臣のお母さんは俺が恋人だと知ってて会ってくれたんだから、それくらい許して欲しい。
「本多さんは誠実で真面目な方なのね」
それまで黙って話を聞いていた貴臣のお母さんが、初めて柔らかい笑顔を見せる。
「いえいえ、そんなことはないです。俺はいい加減だし大雑把だから、よく貴臣に怒られてばっかりですよ」
「貴臣はね、喜怒哀楽を表に出さない子で、なんでも一人で出来てしまう子なんです」
「ちょっと母さん、突然なんの話だよ」
貴臣は恥ずかしそうにお母さんの話を止めに掛かるけど、俺は続きが聞きたくてお母さんの方を見る。
「周りとは違う自覚があったから、ご家族に心配を掛けたくなかったんじゃないでしょうか」
「そうなんでしょうね。そうさせてしまったことに、今更ながら後悔してるんです」
「母さん、もう大丈夫だって」
「ごめんなさいね貴臣。だけどそうね。本多さんに会えて、ご挨拶も出来て安心したわ」
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