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26.①
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仕事帰りにそのまま貴臣の家に泊まって迎えた土曜日。
いつもなら目覚めた時、腕の中で爆睡してるはずの貴臣の姿がなくて、手を伸ばしたシーツは少し冷たい。
「貴臣?」
ベッドから起き上がって寝室を出ると、リビングのソファーに座って俯き、クッションを抱き締める貴臣が見えた。
「おはよ。いつから起きてたんだよ」
「……あ、起きた?」
「ちょ、お前。どうした」
「ごめん圭吾」
慌てて駆け寄ったのは、目を真っ赤にして泣き腫らした顔をしているからだ。そして今は俺にしがみつくように抱き付いて、声を殺して泣いている。
「どうしたんだよ」
「…………」
今は答える気がないのか、それとも感情が溢れて言葉が出てこないのか。
とにかく震える貴臣を抱き締め、落ち着かせるように背中を撫でてやると、しばらくして大きく息を吸い込む気配を感じ、そのタイミングで体を離して顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
「……ばあちゃんが、また倒れて意識ないって」
「え?」
「俺のことがあって、あれからずっと心臓の調子が良くなくて、また発作が出て……それで」
「バカ、お前のせいじゃないよ」
「でも!」
「違う‼︎ お前のせいじゃない」
「でも俺、昼の電話も話聞かないで終わらせちゃったし、こんなんで、もしも最後になっちゃったら」
「貴臣……」
どう声を掛けてやるのが正解か分からなくて、俺はまた貴臣を抱き締めることしか出来ない。
「俺、どうしたら良いんだろう」
「どうしたらって、行けば良いだろ」
「でも俺が顔出したら、ばあちゃんもっと具合悪くなるかも知れない。行かない方が良いのは分かってるけど、でも……」
「俺も行こうか?」
「え」
「とりあえず支度してすぐに行こう」
「いや、でも」
「今のお前を一人にはさせられない。俺が逆の立場ならお前にそばにいて欲しい。理由はそれだけ」
「圭吾……」
「よし。なら急いで支度するぞ」
どこかぼんやりとした様子の貴臣を急かすと、すぐにスーツに着替えて支度を整え、同じく支度を済ませた貴臣の肩を叩いて喝を入れる。
「ほら、シャキッとしろ」
「ごめん」
「とりあえず母ちゃんに連絡しとけ」
「あ、うん」
貴臣が実家に顔を出すことでどうなるか分からないけど、後悔のないようにして欲しい。それがたとえ家族に望まれないことだったとしても。
電話を終えたのを確認すると、早速家を出て駅に向かう。
品川から新幹線に乗り込んで、売店で買ったサンドイッチを二人で分けて食べると、青白い顔をして震える貴臣の手をそっと握る。
「大丈夫だって」
「……うん。ありがと」
そして約一時間電車に揺られて静岡まで移動すると、貴臣の弟が駅前まで車で迎えに来るというので貴臣とは駅で一旦別れた。
「大丈夫だと良いんだけど」
駅前のネットカフェに移動すると、適当にネトゲをして時間を潰す。
その間ずっと着信が気になってゲームどころじゃなかったけど、二時間ほど経った頃に貴臣からようやくメッセージが来た。
貴臣の訪問を見計らったように、今朝方お祖母さんは無事に意識を取り戻したらしく、だけど貴臣が来たことでまた興奮して色々とあったらしい。
実家に泊まれと言われたらしいけど、俺が一緒に来てることを家族に伝えたそうで、それなら挨拶をと、今からお母さんが弟さんの運転で一緒に来ると書かれている。
「……マジかよ」
とりあえず了解のメッセージを返すと、ネットカフェの会計を済ませて店を出ると、近場のカフェに移動して貴臣たちを待つことにした。
それから三十分くらい経っただろうか。
いつもなら目覚めた時、腕の中で爆睡してるはずの貴臣の姿がなくて、手を伸ばしたシーツは少し冷たい。
「貴臣?」
ベッドから起き上がって寝室を出ると、リビングのソファーに座って俯き、クッションを抱き締める貴臣が見えた。
「おはよ。いつから起きてたんだよ」
「……あ、起きた?」
「ちょ、お前。どうした」
「ごめん圭吾」
慌てて駆け寄ったのは、目を真っ赤にして泣き腫らした顔をしているからだ。そして今は俺にしがみつくように抱き付いて、声を殺して泣いている。
「どうしたんだよ」
「…………」
今は答える気がないのか、それとも感情が溢れて言葉が出てこないのか。
とにかく震える貴臣を抱き締め、落ち着かせるように背中を撫でてやると、しばらくして大きく息を吸い込む気配を感じ、そのタイミングで体を離して顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
「……ばあちゃんが、また倒れて意識ないって」
「え?」
「俺のことがあって、あれからずっと心臓の調子が良くなくて、また発作が出て……それで」
「バカ、お前のせいじゃないよ」
「でも!」
「違う‼︎ お前のせいじゃない」
「でも俺、昼の電話も話聞かないで終わらせちゃったし、こんなんで、もしも最後になっちゃったら」
「貴臣……」
どう声を掛けてやるのが正解か分からなくて、俺はまた貴臣を抱き締めることしか出来ない。
「俺、どうしたら良いんだろう」
「どうしたらって、行けば良いだろ」
「でも俺が顔出したら、ばあちゃんもっと具合悪くなるかも知れない。行かない方が良いのは分かってるけど、でも……」
「俺も行こうか?」
「え」
「とりあえず支度してすぐに行こう」
「いや、でも」
「今のお前を一人にはさせられない。俺が逆の立場ならお前にそばにいて欲しい。理由はそれだけ」
「圭吾……」
「よし。なら急いで支度するぞ」
どこかぼんやりとした様子の貴臣を急かすと、すぐにスーツに着替えて支度を整え、同じく支度を済ませた貴臣の肩を叩いて喝を入れる。
「ほら、シャキッとしろ」
「ごめん」
「とりあえず母ちゃんに連絡しとけ」
「あ、うん」
貴臣が実家に顔を出すことでどうなるか分からないけど、後悔のないようにして欲しい。それがたとえ家族に望まれないことだったとしても。
電話を終えたのを確認すると、早速家を出て駅に向かう。
品川から新幹線に乗り込んで、売店で買ったサンドイッチを二人で分けて食べると、青白い顔をして震える貴臣の手をそっと握る。
「大丈夫だって」
「……うん。ありがと」
そして約一時間電車に揺られて静岡まで移動すると、貴臣の弟が駅前まで車で迎えに来るというので貴臣とは駅で一旦別れた。
「大丈夫だと良いんだけど」
駅前のネットカフェに移動すると、適当にネトゲをして時間を潰す。
その間ずっと着信が気になってゲームどころじゃなかったけど、二時間ほど経った頃に貴臣からようやくメッセージが来た。
貴臣の訪問を見計らったように、今朝方お祖母さんは無事に意識を取り戻したらしく、だけど貴臣が来たことでまた興奮して色々とあったらしい。
実家に泊まれと言われたらしいけど、俺が一緒に来てることを家族に伝えたそうで、それなら挨拶をと、今からお母さんが弟さんの運転で一緒に来ると書かれている。
「……マジかよ」
とりあえず了解のメッセージを返すと、ネットカフェの会計を済ませて店を出ると、近場のカフェに移動して貴臣たちを待つことにした。
それから三十分くらい経っただろうか。
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