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25.②
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新店舗ではノンアルコールの提供が圧倒的に増える予定なので、営業は仕入れの関係でかなりバタバタしたと聞いている。
そのまましばらく情報収集を兼ねて立ち話をして、キリの良いところでデスクに戻ると、貴臣は何事もなかったようにキーボードを叩いて仕事をしている。
家族の問題に俺が立ち入るべきじゃないし、俺が思うよりきっと問題はセンシティブだ。
無言のまま見つめていたので、視線が気になったのか、貴臣は厭らしい目で見るなよとふざけたことを言う。
「そんな上から下まで舐め回すみたいに。やめてくださいよ本多さん」
「あのなあ、お前ね……」
「ボサッとしてないで、早く仕事しろよ」
「お前に言われたくないわ!」
すぐに席についてパソコンにログインすると、取り掛かっていた数字のチェックに戻り、新店舗オープンに備えた資料を作る。
途中電話対応やメールチェックなど、息抜き程度に違うこともしつつ、集中すると痛み出す目頭を揉みながらなんとかデータを整理すると、そろそろ定時になろうとしている。
「本多さん、いま大丈夫ですか?」
そんな時、突然声を掛けられて顔を上げると、営業の小林さんが俺の背後に立っていた。
「ん? なんかあったのかな」
「あの、ちょっと相談に乗って欲しくて。今日飲みに行けませんか」
これは久しくなかった女の子からの誘いだ。俺の嗅覚が女の子からのデートの誘いだと騒ぎ始める。
だけど同時に、斜め向かいの席からただならぬ恐ろしい気配を感じてハッとする。
「相談ね。飲みってまさか二人で? 俺付き合ってる子居るし、女の子と二人はちょっと無理かな」
「えぇ、ダメなんですか」
「そうだね。二人なら無理」
「じゃあ、高宮先輩も呼びます」
「高宮?」
同期の名前が出てそれならと一瞬思ったけど、それでも相手は女性二人だから話を受けるべきじゃない。
「だから、女の子とは飲みに行けないって」
「そんなぁ。あ、じゃあ山口さんもどうですか」
突然話を振られた山口が、何事かと驚いて俺と小林さんを交互に見る。
「山ちゃん居ても大丈夫な相談なら、山ちゃんに相談すれば?」
「えー。私、本多さんに相談したいんですけど」
「なら今、休憩スペースで聞くわ」
「え⁉︎」
「だって高宮と山ちゃん居て良いなら、会社で聞いても大丈夫な話でしょ。なんなら二人同席させる?」
「もう本多さんッ! なんでそんな空気読めないんですか」
「えー。なんの話?」
なんとなく小林さんの意図は分かったけど、そういうことなら尚更話を聞く訳にはいかないので、なにも分かってない鈍感で通すことにする。
そもそも俺には可愛い可愛い貴臣が居るし、そうでなかったとしても、会社の子と付き合うなんてリスキーなことはしない。
小林さんからは、そういう雰囲気がビンビン出てるし、あざとい仕草の中に肉食特有の危険なフェロモンが出てて怖い。
「誰が同席しても良い相談でしょ? だから休憩スペースで聞くって」
「もう良いです」
小林さんはようやく諦めてくれたようで、大きな胸を揺らして自分のデスクの方へ戻っていった。
「今日もモテモテですね、本多さん?」
「貴臣、お前聞いてたなら助けろよ。山ちゃんまで被害に遭っただろ」
「俺ああいう人苦手だから」
「俺も得意じゃねえよ」
冷ややかな視線を向けてくる貴臣に応戦していると、隣の山口が意外でしたと会話に混ざってきた。
「本多さんってみんなに優しいから、相談に乗ってあげると思ってました」
「山ちゃん、あんな肉食獣が涎垂らしたような女の子は俺だって怖いよ」
「え! そうなんですか」
「そうだよ。そうは見えない人の方が怖いから気を付けなね」
怯える山口に冗談だよと付け加えて場を和ませると、キリの良いところまで仕事を片付けて、貴臣と一緒に会社を出た。
そのまましばらく情報収集を兼ねて立ち話をして、キリの良いところでデスクに戻ると、貴臣は何事もなかったようにキーボードを叩いて仕事をしている。
家族の問題に俺が立ち入るべきじゃないし、俺が思うよりきっと問題はセンシティブだ。
無言のまま見つめていたので、視線が気になったのか、貴臣は厭らしい目で見るなよとふざけたことを言う。
「そんな上から下まで舐め回すみたいに。やめてくださいよ本多さん」
「あのなあ、お前ね……」
「ボサッとしてないで、早く仕事しろよ」
「お前に言われたくないわ!」
すぐに席についてパソコンにログインすると、取り掛かっていた数字のチェックに戻り、新店舗オープンに備えた資料を作る。
途中電話対応やメールチェックなど、息抜き程度に違うこともしつつ、集中すると痛み出す目頭を揉みながらなんとかデータを整理すると、そろそろ定時になろうとしている。
「本多さん、いま大丈夫ですか?」
そんな時、突然声を掛けられて顔を上げると、営業の小林さんが俺の背後に立っていた。
「ん? なんかあったのかな」
「あの、ちょっと相談に乗って欲しくて。今日飲みに行けませんか」
これは久しくなかった女の子からの誘いだ。俺の嗅覚が女の子からのデートの誘いだと騒ぎ始める。
だけど同時に、斜め向かいの席からただならぬ恐ろしい気配を感じてハッとする。
「相談ね。飲みってまさか二人で? 俺付き合ってる子居るし、女の子と二人はちょっと無理かな」
「えぇ、ダメなんですか」
「そうだね。二人なら無理」
「じゃあ、高宮先輩も呼びます」
「高宮?」
同期の名前が出てそれならと一瞬思ったけど、それでも相手は女性二人だから話を受けるべきじゃない。
「だから、女の子とは飲みに行けないって」
「そんなぁ。あ、じゃあ山口さんもどうですか」
突然話を振られた山口が、何事かと驚いて俺と小林さんを交互に見る。
「山ちゃん居ても大丈夫な相談なら、山ちゃんに相談すれば?」
「えー。私、本多さんに相談したいんですけど」
「なら今、休憩スペースで聞くわ」
「え⁉︎」
「だって高宮と山ちゃん居て良いなら、会社で聞いても大丈夫な話でしょ。なんなら二人同席させる?」
「もう本多さんッ! なんでそんな空気読めないんですか」
「えー。なんの話?」
なんとなく小林さんの意図は分かったけど、そういうことなら尚更話を聞く訳にはいかないので、なにも分かってない鈍感で通すことにする。
そもそも俺には可愛い可愛い貴臣が居るし、そうでなかったとしても、会社の子と付き合うなんてリスキーなことはしない。
小林さんからは、そういう雰囲気がビンビン出てるし、あざとい仕草の中に肉食特有の危険なフェロモンが出てて怖い。
「誰が同席しても良い相談でしょ? だから休憩スペースで聞くって」
「もう良いです」
小林さんはようやく諦めてくれたようで、大きな胸を揺らして自分のデスクの方へ戻っていった。
「今日もモテモテですね、本多さん?」
「貴臣、お前聞いてたなら助けろよ。山ちゃんまで被害に遭っただろ」
「俺ああいう人苦手だから」
「俺も得意じゃねえよ」
冷ややかな視線を向けてくる貴臣に応戦していると、隣の山口が意外でしたと会話に混ざってきた。
「本多さんってみんなに優しいから、相談に乗ってあげると思ってました」
「山ちゃん、あんな肉食獣が涎垂らしたような女の子は俺だって怖いよ」
「え! そうなんですか」
「そうだよ。そうは見えない人の方が怖いから気を付けなね」
怯える山口に冗談だよと付け加えて場を和ませると、キリの良いところまで仕事を片付けて、貴臣と一緒に会社を出た。
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