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23.①
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週末に兄や将生さんの家で飲み会をして、俺は俺なりに貴臣とのことをゆっくり考えていけば良いと思っていた矢先、貴臣のお祖母さんが倒れたらしく、有休を取って貴臣は実家に帰ってしまった。
ありがたいことなのか、仕事は忙しなくバタバタしていて、貴臣の心配だけをしている余裕はなく、毎日が過ぎていった。
家に帰って味気ないコンビニ弁当を食べ、カップの味噌汁を飲むと、ワイワイ騒がしく四人で飯を食った週末がすごく前のことみたいで物悲しい気持ちになる。
「どうしてんのかな。全然連絡ねえけど」
スマホを握って音沙汰のないメッセージアプリを開いてみるものの、最後に来たメッセージは心配しないでだった。
(心配すんなって言われてもな……)
食べ終わったゴミを片付け、新しい缶ビールを冷蔵庫から取り出すと、リビングのソファーに座ってテレビの音量を少し上げる。
貴臣に実家から連絡があったのは週頭の月曜日。
最初は大したことないだろうから帰る気はないと言ってたのに、何度も家族から連絡が来たのか、様子を確認してくると有休を申請して火曜から実家に帰ってもう四日経つ。
「大丈夫なのかよ」
スマホを見つめ、自分がゲイだからと実家に帰りたがらなかった貴臣のことを心配するけど、四日も戻ってこないとなると、お祖母さんの容体はそんなに良くないのだろうか。
メッセージ一件くらいならおかしく思われることはないだろうと、返信できるようになったら連絡して欲しいとメッセージを打って送信する。
だけど既読がつく気配はなく、もしかして向こうでなにかあったんじゃないかと心がザワザワし始める。
するとそんなタイミングでインターホンが鳴って、思わず体がビクッと跳ねる。
「なに。こんな時間に」
通販でなにか頼んでいただろうか。記憶を探りながらモニターを覗くと、ぼんやりとした人影が映っていてさらに気味の悪さが増す。
「はい」
『……圭吾、入れてもらえる?』
「貴臣⁉︎ お、おう。とりあえず入ってこい」
エントランスの自動ドアのロックを解除すると、気が動転してその場でぐるぐる回るように足踏みしてしまう。
しばらくするとドアチャイムが鳴って、玄関を開けると元気がない様子の貴臣が立っていた。
「どした? とりあえず入れよ」
「……うん。急にごめん」
「そういうの良いから。あ、鍵閉めて入ってこいよ」
先にリビングに向かって散らかった部屋をザッと整えると、ようやくやってきた貴臣はなんだか青白い顔をしている。
「ばあちゃん、そんなに悪いのか」
「え?」
「お前、顔真っ青だぞ」
「ああ、違う違う。大丈夫、ピンピンしてる」
「じゃあどうしたんだよ」
近付いて顔を覗き込むと、貴臣は力無く笑ってダメだったと呟き、そのまま俺を抱き締めた。
「ダメってなにがだよ、どうしたんだよ」
「ごめん、もうちょっとこうしてて」
「……分かった」
貴臣の背中に手を回してギュッと抱き締めると、スンと鼻を啜るような音が聞こえる。もしかして泣いているんだろうか。
そのまま背中をさすったり、ぽんぽんと優しく頭を撫でたりして場を繋ぐと、貴臣が小さく息を吐いてから、もう一度ダメだったと呟いた。
「うまくいかないね」
「なにがあったんだよ」
「家族の……縁を切ってきた」
「は⁉︎」
思わず身を離して顔を覗き込むと、涙の跡が残る目元は寂しそうで、小さな声でごめんと貴臣が呟く。
「なんでお前が謝るんだよ。ちょ、とりあえず座ろう。飲み物は? 酒にするか」
「なんでも良いよ。本当ごめん」
「だから謝るなって」
貴臣を座らせて冷蔵庫からビールを取り出すと、そのまま隣に腰掛けて、飲みかけだったビールを手に取る。
「とりあえずおかえり」
「うん。ただいま」
ありがたいことなのか、仕事は忙しなくバタバタしていて、貴臣の心配だけをしている余裕はなく、毎日が過ぎていった。
家に帰って味気ないコンビニ弁当を食べ、カップの味噌汁を飲むと、ワイワイ騒がしく四人で飯を食った週末がすごく前のことみたいで物悲しい気持ちになる。
「どうしてんのかな。全然連絡ねえけど」
スマホを握って音沙汰のないメッセージアプリを開いてみるものの、最後に来たメッセージは心配しないでだった。
(心配すんなって言われてもな……)
食べ終わったゴミを片付け、新しい缶ビールを冷蔵庫から取り出すと、リビングのソファーに座ってテレビの音量を少し上げる。
貴臣に実家から連絡があったのは週頭の月曜日。
最初は大したことないだろうから帰る気はないと言ってたのに、何度も家族から連絡が来たのか、様子を確認してくると有休を申請して火曜から実家に帰ってもう四日経つ。
「大丈夫なのかよ」
スマホを見つめ、自分がゲイだからと実家に帰りたがらなかった貴臣のことを心配するけど、四日も戻ってこないとなると、お祖母さんの容体はそんなに良くないのだろうか。
メッセージ一件くらいならおかしく思われることはないだろうと、返信できるようになったら連絡して欲しいとメッセージを打って送信する。
だけど既読がつく気配はなく、もしかして向こうでなにかあったんじゃないかと心がザワザワし始める。
するとそんなタイミングでインターホンが鳴って、思わず体がビクッと跳ねる。
「なに。こんな時間に」
通販でなにか頼んでいただろうか。記憶を探りながらモニターを覗くと、ぼんやりとした人影が映っていてさらに気味の悪さが増す。
「はい」
『……圭吾、入れてもらえる?』
「貴臣⁉︎ お、おう。とりあえず入ってこい」
エントランスの自動ドアのロックを解除すると、気が動転してその場でぐるぐる回るように足踏みしてしまう。
しばらくするとドアチャイムが鳴って、玄関を開けると元気がない様子の貴臣が立っていた。
「どした? とりあえず入れよ」
「……うん。急にごめん」
「そういうの良いから。あ、鍵閉めて入ってこいよ」
先にリビングに向かって散らかった部屋をザッと整えると、ようやくやってきた貴臣はなんだか青白い顔をしている。
「ばあちゃん、そんなに悪いのか」
「え?」
「お前、顔真っ青だぞ」
「ああ、違う違う。大丈夫、ピンピンしてる」
「じゃあどうしたんだよ」
近付いて顔を覗き込むと、貴臣は力無く笑ってダメだったと呟き、そのまま俺を抱き締めた。
「ダメってなにがだよ、どうしたんだよ」
「ごめん、もうちょっとこうしてて」
「……分かった」
貴臣の背中に手を回してギュッと抱き締めると、スンと鼻を啜るような音が聞こえる。もしかして泣いているんだろうか。
そのまま背中をさすったり、ぽんぽんと優しく頭を撫でたりして場を繋ぐと、貴臣が小さく息を吐いてから、もう一度ダメだったと呟いた。
「うまくいかないね」
「なにがあったんだよ」
「家族の……縁を切ってきた」
「は⁉︎」
思わず身を離して顔を覗き込むと、涙の跡が残る目元は寂しそうで、小さな声でごめんと貴臣が呟く。
「なんでお前が謝るんだよ。ちょ、とりあえず座ろう。飲み物は? 酒にするか」
「なんでも良いよ。本当ごめん」
「だから謝るなって」
貴臣を座らせて冷蔵庫からビールを取り出すと、そのまま隣に腰掛けて、飲みかけだったビールを手に取る。
「とりあえずおかえり」
「うん。ただいま」
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