彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

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22.④

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「だって十年以上一緒にいるんでしょ。もっともっと一緒に居たいって思わないの」
「圭吾くんは意外とロマンチストだね」
 俺は割と真剣に聞いたつもりなのに、兄と将生さんにはぐらかされてしまう。
「今にも暴走して貴臣くんにプロポーズしそうだな」
「だって、好きならそうしたくならない? 俺が変なのかな」
「あのな圭吾、お前今まで誰とも付き合わなかった訳じゃないだろ。年齢のせいもあったかも知れないけど、どんだけ好きでも別れたこともあったんじゃないか?」
「そりゃまあ、そうだけど」
 過去に浮気をされて捨てられた心の古傷が痛む。
「なにも貴臣くんとそうなるとは言わないけど、人間同士なんだから、なにが起こるか分からないのも事実。男同士ともなれば尚更、世間の目ってのもある」
「そうなの?」
「お前ら同じ会社だろ? 会社の人間の何割がお前たちのことを知って受け入れると思う。真剣に付き合ってますって言っても、理解を得られるかは分からないだろ」
「そっか」
「世間の目なんて、まだまだそんなもんだ」
 兄はそれ以上は語らないが、きっと自分自身と将生さんとのことを言っているのかも知れない。
「さ、小難しい話はやめて食べよ食べよ」
 将生さんはパンッと手を打つと、みんなの取り皿に料理をどんどん取り分けて、ビールを次々と開けていく。
「圭吾くんは、正月にインフルエンザになったんだったよね」
「そうなんですよ。あ、あの時はここに泊めてもらって。すみませんでした」
「そうそう。諒太から急に連絡が来てね。でもあの時、実は俺家に居たんだよ」
「え、そうなんですか⁉︎」
「やっぱり気付いてなかったか」
 将生さんはイタズラが成功したみたいに楽しげに笑う。
「この奥が二間になってて、寝室の奥は俺の作業部屋なんだよ。ホテルに泊まることも考えたけど、長くても二、三日のことだろうし、ひっそりと息を殺してた」
「マジでご迷惑を……」
「じゃあ今度はケーキ持ってきてね」
 将生さんは可笑しそうに笑うと、兄に向かって抜けてるところが似てると暴言を吐いている。
 そのやりとりを見ていると、兄は今幸せなのだと突然堪らない気持ちになった。
 家族に自分のことをずっと打ち明けずにきたということは、貴臣のように隠し通さなければいけないというプレッシャーがあるのかも知れない。
 俺は無責任に、うちの家族なら大丈夫と思ってしまうけど、兄の中ではそうじゃないのだ。
 だけど兄には、兄を大切に思ってくれる将生さんがそばに居る。その事実が嬉しかった。
「圭吾、お前なんでそんな泣きそうなんだよ」
「兄ちゃんが、幸せそうで……なんかそれで」
「はは。そりゃどうも」
 兄は苦笑しながらティッシュを箱ごと俺によこすと、貴臣に本当にこいつで大丈夫かと笑いながら声を掛けている。
「こういう、ちょっとアホなところが可愛いんですよね」
「おいー」
「ははは。確かにな。圭吾は残念なところがあるよな」
「兄ちゃん!」
「そう? 諒太もそういうとこ可愛いよ」
「おい将生」
 最初はどうなるのか心配だったけど、将生さんは想像よりも素敵な人で、出張彼氏も友人に頼まれて仕方なく続けてるだけで、それももう辞めるのだと言った。
「貴臣みたいに、いつも相談に乗ってるんですか」
「いやいや。こんなことは初めてだよ。なにか縁があったんだろうね」
「相手が将生さんで良かったよ……。最初に聞かされた時はめちゃくちゃビビったんで」
「そうだね。信用し過ぎるのは危険かも知れないし、貴臣くんはもう少し危機感持っておいた方が良いかもね」
「お前が言うなよ」
「だから俺が例外で、安全で良かったって話だろ」
「また調子の良いことを」
「や、あの。俺のことでケンカしないでください」
「なにそのヒロインみたいなツッコミ」
「ははは。確かに」
 その後も恋バナを交えながら、四人で飲んで騒いで夜を過ごした。
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