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20.②
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「ですぞってなんだよ」
ようやく可笑しそうに肩を揺らす貴臣を見て少し安心すると、スマホを手に取って母にメッセージを送り、俺と貴臣のご飯を持ってきてもらうように伝える。
「いま母ちゃんに連絡したから、お前も腹減っただろ。ごめんな、マジで」
「大丈夫。帰ったら色々おねだり聞いてもらうから」
「おねだり? なんだよ……怖いな」
「あはは、安心しなよ。エロいことだから」
「ハードル一気に上がったわ!」
アホなことを言いつつ、テレビをつけるつけないで揉めていると、母と兄が料理を運んできた。
「どうだ圭吾、吐き気は出てないか」
「平気。多分明日帰れる」
「本当に大丈夫なの?」
「仕事もあるからね。早めに帰って向こうで静養するよ」
母や兄と雑談して体を起こすと、用意された雑炊に口をつける。
「食べ終わったらまた連絡して。下げに来るから」
「ん。ありがとう」
「貴臣くん、食べ終わったらタバコ吸いにおいで」
「はい。ありがとうございます」
母と兄が離れから出て行くと、結局テレビをつけて賑やかな空気の中でご飯を食べる。
昼前に食べた粥と違って、細かく刻んだ野菜がたっぷり入った雑炊は食べ応えがあり、出汁でほんのり味がついているのも食欲をそそる。
「無理して食べすぎないようにね」
「大丈夫だよ。貴臣は? なに食べてんの」
「煮込みうどんだね。わざわざ作ってくれたのかな、なんか申し訳ないね」
「いや、おせちばっかりも味気ないだろ。向こうじゃとっくにカレーとか唐揚げとか食べてると思うよ」
「そうなの?」
「チビたちが飽きるからね。おせちはもう大人のツマミになってると思う」
会話しながらゆっくりと咀嚼して雑炊を食べ終えると、薬を飲んで先に横にならせてもらう。
念の為熱を測ったら三十八度七分と、結構まだ熱があって、寒気が治らないのは熱のせいかとぼんやり思った。
しばらくすると兄が食器を下げにきて、貴臣がなにか俺に声を掛けたような気がするけど、多分タバコを吸いに行ったんだと思う。
しんと静まり返った部屋に、ストーブにかけたやかんが沸騰してシュンシュンと音を立てている。
窓の外の月をぼんやりと眺め、三泊四日なんてあっという間で、明日には東京に帰るのかと思うとなんだか変な気分だ。
実家にはもう帰るつもりがないと言った貴臣は、俺の実家に居て楽しむことが出来ただろうか。ふと自分の家族のことを思ったりはしなかったんだろうか。
それを思うと、兄も実家は居心地が悪かったりするのだろうかと、今更ながらその心中が気になった。
うちには下の兄と姉の子どもが既にいるし、兄が無理をして家庭を持つ必要なんてない。
もちろん俺だって、別れずに済むなら貴臣とずっと一緒に居ようと思っているけど、世間の目ってやつは簡単に払拭出来るものじゃないってことにやっと気付いた。
貴臣と一緒に居たいなら、もっとその辺りのことを、きちんと調べておくべきなんだろうか。それともその行為は貴臣にとって重荷になってしまうんだろうか。
ゲイの友人が風俗で出会った人だと聞いて、心配とか不安があったけど、その人の恋人が兄だと分かっただけでも少し安心出来た。
俺じゃ不安にさせるかも知れないし、頼りになるなら東京に戻っても、兄とも積極的に交流して欲しいと思う。
「一人じゃ、不安だもんな……」
俺は好いたり愛してやることは出来ても、貴臣の本当の苦悩とか苦痛を分かってはやれない。
もどかしいけど俺はゲイじゃないし、貴臣に別れようって捨てられたら、きっとまた女の子と恋をすることだってあるだろう。
そんな自分が酷く狡い人間な気がして、ジワッと涙が滲んでしまう。
俺は俺なりに貴臣を好きでいるけど、どんなにその気持ちを伝えても、貴臣の不安を拭ってやれない気がして、悶々としたまま眠りについた。
ようやく可笑しそうに肩を揺らす貴臣を見て少し安心すると、スマホを手に取って母にメッセージを送り、俺と貴臣のご飯を持ってきてもらうように伝える。
「いま母ちゃんに連絡したから、お前も腹減っただろ。ごめんな、マジで」
「大丈夫。帰ったら色々おねだり聞いてもらうから」
「おねだり? なんだよ……怖いな」
「あはは、安心しなよ。エロいことだから」
「ハードル一気に上がったわ!」
アホなことを言いつつ、テレビをつけるつけないで揉めていると、母と兄が料理を運んできた。
「どうだ圭吾、吐き気は出てないか」
「平気。多分明日帰れる」
「本当に大丈夫なの?」
「仕事もあるからね。早めに帰って向こうで静養するよ」
母や兄と雑談して体を起こすと、用意された雑炊に口をつける。
「食べ終わったらまた連絡して。下げに来るから」
「ん。ありがとう」
「貴臣くん、食べ終わったらタバコ吸いにおいで」
「はい。ありがとうございます」
母と兄が離れから出て行くと、結局テレビをつけて賑やかな空気の中でご飯を食べる。
昼前に食べた粥と違って、細かく刻んだ野菜がたっぷり入った雑炊は食べ応えがあり、出汁でほんのり味がついているのも食欲をそそる。
「無理して食べすぎないようにね」
「大丈夫だよ。貴臣は? なに食べてんの」
「煮込みうどんだね。わざわざ作ってくれたのかな、なんか申し訳ないね」
「いや、おせちばっかりも味気ないだろ。向こうじゃとっくにカレーとか唐揚げとか食べてると思うよ」
「そうなの?」
「チビたちが飽きるからね。おせちはもう大人のツマミになってると思う」
会話しながらゆっくりと咀嚼して雑炊を食べ終えると、薬を飲んで先に横にならせてもらう。
念の為熱を測ったら三十八度七分と、結構まだ熱があって、寒気が治らないのは熱のせいかとぼんやり思った。
しばらくすると兄が食器を下げにきて、貴臣がなにか俺に声を掛けたような気がするけど、多分タバコを吸いに行ったんだと思う。
しんと静まり返った部屋に、ストーブにかけたやかんが沸騰してシュンシュンと音を立てている。
窓の外の月をぼんやりと眺め、三泊四日なんてあっという間で、明日には東京に帰るのかと思うとなんだか変な気分だ。
実家にはもう帰るつもりがないと言った貴臣は、俺の実家に居て楽しむことが出来ただろうか。ふと自分の家族のことを思ったりはしなかったんだろうか。
それを思うと、兄も実家は居心地が悪かったりするのだろうかと、今更ながらその心中が気になった。
うちには下の兄と姉の子どもが既にいるし、兄が無理をして家庭を持つ必要なんてない。
もちろん俺だって、別れずに済むなら貴臣とずっと一緒に居ようと思っているけど、世間の目ってやつは簡単に払拭出来るものじゃないってことにやっと気付いた。
貴臣と一緒に居たいなら、もっとその辺りのことを、きちんと調べておくべきなんだろうか。それともその行為は貴臣にとって重荷になってしまうんだろうか。
ゲイの友人が風俗で出会った人だと聞いて、心配とか不安があったけど、その人の恋人が兄だと分かっただけでも少し安心出来た。
俺じゃ不安にさせるかも知れないし、頼りになるなら東京に戻っても、兄とも積極的に交流して欲しいと思う。
「一人じゃ、不安だもんな……」
俺は好いたり愛してやることは出来ても、貴臣の本当の苦悩とか苦痛を分かってはやれない。
もどかしいけど俺はゲイじゃないし、貴臣に別れようって捨てられたら、きっとまた女の子と恋をすることだってあるだろう。
そんな自分が酷く狡い人間な気がして、ジワッと涙が滲んでしまう。
俺は俺なりに貴臣を好きでいるけど、どんなにその気持ちを伝えても、貴臣の不安を拭ってやれない気がして、悶々としたまま眠りについた。
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