彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

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20.①

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 翌日になって休日外来で診察を受けると、俺は案の定インフルエンザで、薬を処方してもらって兄が運転する車で実家に戻っている。
 潜伏期間を考えると、あながち山口からもらった可能性は捨てきれず、貴臣も発症する可能性はあるので薬が出された。
「こんな時にインフルエンザだなんて、お前も間が悪いね」
 後部座席でぐったりする俺をからかうように、兄がミラー越しに俺を見ながら笑う。
「マジねえわ……怠い」
「確か明日帰る予定だったよな。さすがに発熱したまま新幹線はヤバいだろ。俺が送ってやるから車で一緒に帰ったらどうだ」
「そりゃ助かるけど」
「貴臣くんも、帰りは車でも良いかな」
「ご迷惑じゃないですか」
「良いの良いの。一人で帰るより賑やかだし。俺も早めに帰る口実になるし」
 そうして予定は変えずに兄の運転で東京に帰ることが決まり、実家に着くとすぐに兄が母に事情を説明してくれて、俺と貴臣はとりあえず離れに向かった。
「諒太さん、本当に良かったのかな」
「良かったって……なにが」
「いや、やっぱりなんでもない。ほら、ちゃんと布団被りなよ」
「助かる」
 寝転がっていられるだけでもかなり楽で、貴臣とたわいないやり取りをしていると、マスクをつけた母が薬を飲めと食事を運んできた。
「貴臣くんは母屋に居たら良いのに」
「大丈夫です。俺も薬もらったんで、万が一うつってたらいけないから、こちらで過ごさせてもらいます」
「じゃあ、後で貴臣くんのご飯も持ってくるわね」
「お手数お掛けします」
「良いのよ、そんなに気を遣わないで。ほら圭吾、食べたらちゃんと薬飲むのよ」
「分かってるって」
 口やかましい母がようやく離れから出て行くと、貴臣が少し寂しそうに、良いお母さんだねと呟いたのがやけに頭に残る。
 それからすぐに貴臣用に、雑煮とおせちの詰め合わせみたいな御膳が運ばれてくると、二人で雑談しながらご飯を食べて食後にしっかりと薬を飲んだ。
「お前は向こうで寛いでれば良いのに」
「ダメだろ。子どもちゃんたちが居るのに、万が一うつしたら大変じゃないか」
「なんかごめんな」
「なにが」
「本当は今日温泉連れて行こうと思ってたんだよ」
「へえ。じゃあまた今度連れてきてよ」
「またこんな田舎に来てくれんのか」
「良いところじゃない」
 薬のせいか眠気が強くなってあくびをすると、換気のために開けていた窓を貴臣が閉め、その頃になって母が食べ終えた食器を下げに来た。
 夢現ゆめうつつで貴臣の声に返事しているつもりだったけど、俺はすっかり寝入ってしまっていたらしく、次に目を覚ますと辺りはすっかり日が暮れて何時なのか分からない。
「ん……」
 まだぼんやりとする頭でなにしてたんだっけと考えながら視線を移すと、真っ暗な部屋の中で貴臣が俺を気遣ったのか、イヤホンをつけてスマホでゲームをしてるのが見える。
 こんな場所に来てまでスマホでゲームだなんて、申し訳なくて手を伸ばすと、俺の手が触れた瞬間ビクッと体を跳ねさせて貴臣が振り返った。
「脅かすなよ。起きて平気? もっとちゃんと寝てなよ」
「悪い。喉渇いた」
「ああ、ちょっと待って」
 ゆっくりと体を起こしてペットボトルを受け取ると、貴臣が部屋の電気をつけ、俺はマスクを外してスポーツドリンクを飲む。
「熱どうよ」
「まだボーッとするけど、もう上がりきったんじゃないかな。昨夜はめちゃくちゃ辛かった」
「ああね。お腹はどう? さっき諒太さんが来て、明日連れて帰れそうか気にしてた」
「薬飲んで寝てれば大丈夫だと思う。つか、マジでごめんな。テレビとか見てていいのに」
「うるさいと寝らんないだろ。俺のことは良いから、体調のことだけ考えなよ」
「ん。すまん。でもテレビくらい見てて大丈夫だよ。お笑いとか、楽しげなのやってるだろ」
 ペットボトルの蓋を閉めて枕元に置き、マスクをつけて布団に寝転ぶと、氷枕が取り替えられたばかりなのか、ひんやりして気持ちが良い。
「つか電気くらいつけとけよな」
「いや、眩しくて起きちゃうかなって」
「そういう気遣いは無用ですぞ」
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