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19.②
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立ち止まった俺の顔を覗き込むと、貴臣はちょっとごめんと呟いて俺の額に手を当てる。
ひんやりしたその手が気持ち良くて、なんだかボーッとして重たい頭が過ごしだけ軽くなる気がする。
「圭吾、お前凄い熱だよ」
「マジか」
「マジ。とりあえず急いで家に帰ろう。歩けるよね?」
「うん。大丈夫」
貴臣に手を引かれてなんとか歩き続け、ようやく実家に辿り着くと玄関にへたり込む。
頭の上で貴臣がなにかを言っていて、バタバタと忙しなく歩き回る音がする。
それから貴臣に支えられて離れに移動すると、ようやくダウンジャケットを脱がされ、着の身着のまま布団に寝かされた。
朦朧とする意識の中で母がバタバタと動き回り、氷枕がどうだとか、貴臣は母屋で寝た方が良いだとかやり取りする声が聞こえる。
すると次の瞬間、額がひんやりしたのでまた貴臣がそこに手を当ててくれたのかと思ったが、どうやら冷却シートが貼られたらしい。
ごめんとかありがとうって言ってるつもりなのに、思ったように声が出なくて、そのうち熱のせいなのか節々がヒリヒリしてきて起きていられなくなる。
「俺がそばに居るから」
「…………」
貴臣の声がした気がするけど、頭がボーッとしてまともに返事も出来ない。
多分それからしばらくは寝てたんだと思う。
だけど急に吐き気が込み上げて気持ち悪くなって、なんとかして起き上がると、マスクをした貴臣がウトウトしながら吐きそうなのかと声を掛けてきた。
「トイレ間に合いそう?」
「うぅ……」
「とりあえず行こう」
貴臣に支えられてトイレに向かうと、胃がひっくり返るほど嘔吐した。
便座が冷たくて心地よくて、しばらくしゃがみ込んでいたら、背後からペットボトルを持った貴臣がやってきて、よく冷えた水を口に含む。
「立てそう? まだ気持ち悪い?」
「いや、もう大丈夫と思う」
「なら口を濯がないとね」
用を足してからトイレを離れると、洗面所に移動して手や顔を洗って口を濯ぎ、貴臣に支えられて布団に戻る。
「熱測ろうか」
「うん」
言われるままに熱を測ると四十度を超えていて、こんな時になんて間の悪いことだと情けなくなる。
「明日は元旦だけど病院に連れて行くって、諒太さんが言ってたよ。だから今はとりあえずゆっくり寝てな」
「悪いな貴臣。これ、山ちゃんのインフルエンザかな」
「どうかな。日にちが経ってるし、別のじゃない?」
「お前、うつるぞ。母屋で寝ろって言われなかったのか」
「言われたけど、一人にさせるのは心配だったから。さっきみたいに、一人だと大変だったでしょ」
「そりゃ、そうだけど……」
「さあ、もう喋ってないで寝た方が良い。おやすみ」
「おう……悪いな」
寝る前にもう一口だけ水を飲んで、強くなっていく倦怠感から逃れるように寝ようとするけど、節々が痛いし、寒気が酷くてなかなか寝付けない。
貴臣はそれに気付いたのか、俺の布団に潜り込んできて、気休めにしかならないけどと、ぴったりとくっついて俺を抱き締める。
「マジ、お前までうつったらシャレにならん」
「大丈夫だよマスクしてるし。ほら、呼吸が浅くなってるからリラックスして。深呼吸してみたら息が楽になるよ」
そう言われて何度か深呼吸すると、気休めかも知れないけどなんだか少し楽になった気がするから不思議だ。
「マジ……うつったら本当ヤバいから、お前は自分の布団に戻れ」
「分かった。また気分悪くなったらちゃんと起こせよ」
「おう」
やり取りしてるうちにウトウトして、結局その後すぐ俺は泥のように眠った。
ひんやりしたその手が気持ち良くて、なんだかボーッとして重たい頭が過ごしだけ軽くなる気がする。
「圭吾、お前凄い熱だよ」
「マジか」
「マジ。とりあえず急いで家に帰ろう。歩けるよね?」
「うん。大丈夫」
貴臣に手を引かれてなんとか歩き続け、ようやく実家に辿り着くと玄関にへたり込む。
頭の上で貴臣がなにかを言っていて、バタバタと忙しなく歩き回る音がする。
それから貴臣に支えられて離れに移動すると、ようやくダウンジャケットを脱がされ、着の身着のまま布団に寝かされた。
朦朧とする意識の中で母がバタバタと動き回り、氷枕がどうだとか、貴臣は母屋で寝た方が良いだとかやり取りする声が聞こえる。
すると次の瞬間、額がひんやりしたのでまた貴臣がそこに手を当ててくれたのかと思ったが、どうやら冷却シートが貼られたらしい。
ごめんとかありがとうって言ってるつもりなのに、思ったように声が出なくて、そのうち熱のせいなのか節々がヒリヒリしてきて起きていられなくなる。
「俺がそばに居るから」
「…………」
貴臣の声がした気がするけど、頭がボーッとしてまともに返事も出来ない。
多分それからしばらくは寝てたんだと思う。
だけど急に吐き気が込み上げて気持ち悪くなって、なんとかして起き上がると、マスクをした貴臣がウトウトしながら吐きそうなのかと声を掛けてきた。
「トイレ間に合いそう?」
「うぅ……」
「とりあえず行こう」
貴臣に支えられてトイレに向かうと、胃がひっくり返るほど嘔吐した。
便座が冷たくて心地よくて、しばらくしゃがみ込んでいたら、背後からペットボトルを持った貴臣がやってきて、よく冷えた水を口に含む。
「立てそう? まだ気持ち悪い?」
「いや、もう大丈夫と思う」
「なら口を濯がないとね」
用を足してからトイレを離れると、洗面所に移動して手や顔を洗って口を濯ぎ、貴臣に支えられて布団に戻る。
「熱測ろうか」
「うん」
言われるままに熱を測ると四十度を超えていて、こんな時になんて間の悪いことだと情けなくなる。
「明日は元旦だけど病院に連れて行くって、諒太さんが言ってたよ。だから今はとりあえずゆっくり寝てな」
「悪いな貴臣。これ、山ちゃんのインフルエンザかな」
「どうかな。日にちが経ってるし、別のじゃない?」
「お前、うつるぞ。母屋で寝ろって言われなかったのか」
「言われたけど、一人にさせるのは心配だったから。さっきみたいに、一人だと大変だったでしょ」
「そりゃ、そうだけど……」
「さあ、もう喋ってないで寝た方が良い。おやすみ」
「おう……悪いな」
寝る前にもう一口だけ水を飲んで、強くなっていく倦怠感から逃れるように寝ようとするけど、節々が痛いし、寒気が酷くてなかなか寝付けない。
貴臣はそれに気付いたのか、俺の布団に潜り込んできて、気休めにしかならないけどと、ぴったりとくっついて俺を抱き締める。
「マジ、お前までうつったらシャレにならん」
「大丈夫だよマスクしてるし。ほら、呼吸が浅くなってるからリラックスして。深呼吸してみたら息が楽になるよ」
そう言われて何度か深呼吸すると、気休めかも知れないけどなんだか少し楽になった気がするから不思議だ。
「マジ……うつったら本当ヤバいから、お前は自分の布団に戻れ」
「分かった。また気分悪くなったらちゃんと起こせよ」
「おう」
やり取りしてるうちにウトウトして、結局その後すぐ俺は泥のように眠った。
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