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18.① 貴臣視点
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まだ飲むのかという戸惑いの言葉を呑み込んで、圭吾の家族におやすみの挨拶を済ませると、母屋を出て離れに向かう。
「鍵ちゃんとしとけよ」
「なんで」
「チビどもが奇襲を掛けてくるからな」
「なるほど。真っ裸で抱き合ってるところなんて、見られたら大変だもんね」
「ま、そういうこと」
入り口の鍵を閉めて中に入ると、離れの中はひんやりしていて、どうして圭吾が半纏を脱ぐなと言ったのかようやく理解した。
「エアコンすぐつくかな。ストーブつけたほうが早いな」
圭吾が慣れた様子でストーブに火を入れ、加湿器もつけないと乾燥するからと、バタバタと離れの中を歩き回る。
「ふう。めっちゃ飲んだ」
布団を広げてその場にへたり込むと、小さな冷蔵庫からペットボトルを取り出し、圭吾がそれを俺に投げてよこす。
「ははは。明日もしこたま飲まされるぞ」
「笑い事じゃないよ」
「大丈夫。明日は夜中に初詣行くだろ? 酔い潰れたら行けないからな。チビたちとゲームで遊んでれば、断る理由になるだろ」
「ゲームな。俺つい本気出しちゃうから、嫌われないかな」
「今日も盛り上がってたじゃん。大丈夫だよ」
隣の布団に腰を下ろすと、俺の頭を撫でて圭吾がヘラッと笑い、次の瞬間なにかを思い出したように口を開けた。
「そういえば、諒太にいがなんだって? 知り合いってどういうことだよ」
「あ、うん」
だから俺は正直に、順を追って説明した。
初めて出来たゲイ友の将生さんとは、ゲイ向けの出張彼氏のサービスで出会い、意気投合してその後もサービスを介さずに会うことになったこと。
だけど二人きりで会ったのは最初だけで、その場には必ず将生さんの恋人が同席して、二度目以降は三人で会って相談を持ち掛けていたこと。
「出張彼氏って、お前……出会い系アプリよりヤバいじゃんか。マサキって人のこと信用しすぎじゃね?」
隠してたことを打ち明けると、案の定想定通りのツッコミを入れられて返す言葉もない。
「それは本当にごめん。でもどうしてもゲイの人に相談に乗って欲しくて」
「気持ちは分からないでもないけど、そのマサキは本当に信用出来るのか? ゲイのフリしてるだけかも知れないし、恋人役を連れて来てただけかも知れないだろ」
危ない橋を渡るなと怒られて、俺なりに猛省する。
「しかし、マサキの話は良いとして、諒太にいと知り合いなのはなんでなの?」
「諒太さんなんだ」
「なにが」
「将生さんの恋人」
「……は?」
案の定、圭吾は目を見開いて驚いた顔をしている。
「将生さんが、二人で会うのは怖いだろうからって、恋人を同席させてくれたんだけど、その時に来たのが諒太さんだったんだよ」
「マジで? 諒太にいって……」
「それは本人から聞いて。圭吾だって俺と付き合ってるけど、じゃあゲイなのかって聞かれたらそうとは言わないでしょ」
「あ、そういう感じ?」
「それは諒太さんに聞いてよ」
「確かに言われてみれば、実家出たのも早かったし、結婚しないでフラフラしてんのも納得っていうか。なんだよ、直接言ってくれれば良いのによ」
圭吾はペットボトルの蓋を閉めると、枕元にそれを置いて、不貞腐れたように唇を尖らせる。
これは純粋に、諒太さんから信用されてなくて不満だって態度だ。
「家族だからこそ、言えないってあると思うんだ。だけど諒太さんは、圭吾には伝えても良いって言ってくれたんだから、そこは汲んであげて欲しい」
「そんなもんなのかな」
「少なくても俺は理解出来るよ」
「そっか……いや待てよ? ってことは、諒太にいは、俺とお前が付き合ってるの知ってるってことか!」
「うん」
「やっべ。ハズい。ウキウキ実家に連れてきて浮かれてんのバレてるんじゃん」
圭吾は斜め上の方向で動揺し始め、布団に突っ伏して叫び声まで上げ始めた。
キャーとかヒャーなんて繰り返す姿が可笑しくて、隣でそれを見ながら笑うのを堪えていると、突然足で蹴られて笑いごとかよと圭吾が起き上がる。
「ならみんな貴臣が彼氏って分かってんのかな」
「鍵ちゃんとしとけよ」
「なんで」
「チビどもが奇襲を掛けてくるからな」
「なるほど。真っ裸で抱き合ってるところなんて、見られたら大変だもんね」
「ま、そういうこと」
入り口の鍵を閉めて中に入ると、離れの中はひんやりしていて、どうして圭吾が半纏を脱ぐなと言ったのかようやく理解した。
「エアコンすぐつくかな。ストーブつけたほうが早いな」
圭吾が慣れた様子でストーブに火を入れ、加湿器もつけないと乾燥するからと、バタバタと離れの中を歩き回る。
「ふう。めっちゃ飲んだ」
布団を広げてその場にへたり込むと、小さな冷蔵庫からペットボトルを取り出し、圭吾がそれを俺に投げてよこす。
「ははは。明日もしこたま飲まされるぞ」
「笑い事じゃないよ」
「大丈夫。明日は夜中に初詣行くだろ? 酔い潰れたら行けないからな。チビたちとゲームで遊んでれば、断る理由になるだろ」
「ゲームな。俺つい本気出しちゃうから、嫌われないかな」
「今日も盛り上がってたじゃん。大丈夫だよ」
隣の布団に腰を下ろすと、俺の頭を撫でて圭吾がヘラッと笑い、次の瞬間なにかを思い出したように口を開けた。
「そういえば、諒太にいがなんだって? 知り合いってどういうことだよ」
「あ、うん」
だから俺は正直に、順を追って説明した。
初めて出来たゲイ友の将生さんとは、ゲイ向けの出張彼氏のサービスで出会い、意気投合してその後もサービスを介さずに会うことになったこと。
だけど二人きりで会ったのは最初だけで、その場には必ず将生さんの恋人が同席して、二度目以降は三人で会って相談を持ち掛けていたこと。
「出張彼氏って、お前……出会い系アプリよりヤバいじゃんか。マサキって人のこと信用しすぎじゃね?」
隠してたことを打ち明けると、案の定想定通りのツッコミを入れられて返す言葉もない。
「それは本当にごめん。でもどうしてもゲイの人に相談に乗って欲しくて」
「気持ちは分からないでもないけど、そのマサキは本当に信用出来るのか? ゲイのフリしてるだけかも知れないし、恋人役を連れて来てただけかも知れないだろ」
危ない橋を渡るなと怒られて、俺なりに猛省する。
「しかし、マサキの話は良いとして、諒太にいと知り合いなのはなんでなの?」
「諒太さんなんだ」
「なにが」
「将生さんの恋人」
「……は?」
案の定、圭吾は目を見開いて驚いた顔をしている。
「将生さんが、二人で会うのは怖いだろうからって、恋人を同席させてくれたんだけど、その時に来たのが諒太さんだったんだよ」
「マジで? 諒太にいって……」
「それは本人から聞いて。圭吾だって俺と付き合ってるけど、じゃあゲイなのかって聞かれたらそうとは言わないでしょ」
「あ、そういう感じ?」
「それは諒太さんに聞いてよ」
「確かに言われてみれば、実家出たのも早かったし、結婚しないでフラフラしてんのも納得っていうか。なんだよ、直接言ってくれれば良いのによ」
圭吾はペットボトルの蓋を閉めると、枕元にそれを置いて、不貞腐れたように唇を尖らせる。
これは純粋に、諒太さんから信用されてなくて不満だって態度だ。
「家族だからこそ、言えないってあると思うんだ。だけど諒太さんは、圭吾には伝えても良いって言ってくれたんだから、そこは汲んであげて欲しい」
「そんなもんなのかな」
「少なくても俺は理解出来るよ」
「そっか……いや待てよ? ってことは、諒太にいは、俺とお前が付き合ってるの知ってるってことか!」
「うん」
「やっべ。ハズい。ウキウキ実家に連れてきて浮かれてんのバレてるんじゃん」
圭吾は斜め上の方向で動揺し始め、布団に突っ伏して叫び声まで上げ始めた。
キャーとかヒャーなんて繰り返す姿が可笑しくて、隣でそれを見ながら笑うのを堪えていると、突然足で蹴られて笑いごとかよと圭吾が起き上がる。
「ならみんな貴臣が彼氏って分かってんのかな」
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