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16.②
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ロータリーから車を出すと、ミラー越しに後部座席を覗きながら兄が笑顔を見せる。
「……お世話になります。東条貴臣です」
「そんなに堅苦しくなくて良いよ。気楽にお兄ちゃんって呼んでもらって構わないよ」
「貴臣、さっき言ったろ。この人が四十前なのにフラフラしてる自由人の兄ちゃん。気なんか遣わなくて大丈夫だから」
「なにお前、そんな酷い紹介したのかよ。フラフラって俺は無職じゃねえっつの」
兄を交えて雑談しながら実家までの道のりを過ごすと、買い物を頼まれていたらしく、途中でスーパーに立ち寄ってビールや日本酒を大量に買い込む。
「ああ、この前ワインありがとうな」
「この前って、それ春のことだろ。いつの話だよ」
「春?」
不思議そうにする貴臣に、説明がないと分からないよなと苦笑して、兄の誕生日にワインやシャンパンを送り付けた話をする。
「野島さんからオススメのワイン教えてもらってさ。安く買えたから、たまにはと思って誕生日にね。でも四月はこの前じゃないと思うんだよな」
「はは。確かに」
「いや、この歳になると一年はあっという間でさ」
「年寄りアピールすんなよ。まだ三十代だろ」
「お前が滅多に連絡くれないからだよ」
「兄ちゃんだって連絡してこないだろ」
また賑やかになった車内はうるさいくらいで、それでも貴臣も緊張は少しほぐれたのか、楽しそうに俺たちの会話に加わって実家に向かうことになった。
「圭吾、荷物下ろして」
「ん。貴臣は良いからな」
「いやでも」
「いいよ、貴臣くん。君はお客さんなんだから」
大量に買い込んだビールや日本酒を、数回に分けて玄関まで運び入れると、ようやく人の気配に気付いたらしい母が顔を出した。
「まあまあ、沢山買い込んで来たこと」
「ただいま」
「母ちゃん、貴臣連れて来たよ。貴臣、これがうちの母ちゃん」
「この度はお世話になります。圭吾さんの同僚の東条貴臣です。今回はご無理を言いましてご迷惑をお掛けします。お口汚しですが、どうぞお受け取りください」
「あらまあ、ご丁寧に。圭吾の母です。いつも息子がお世話になってます。貴臣くんの名前はよく聞いてたのよ。こんなイケメンだったなんてびっくりだわ」
母は菓子折りを受け取りながらイケメンを連呼して貴臣を凝視するので、失礼だろと苦笑してやめさせる。
「それより一樹にいと果穂ねえたちは。チビたち居ないの?」
「雪合戦やるとかで、遊びに連れて行ったわ」
「そうなんだ? 俺が出る時は家に居たのにな」
「あいつら帰って来たら、本当にうるさいくらい賑やかだからごめんな」
「いや……大丈夫だよ。楽しみにしてる」
また緊張した様子に戻ってしまった貴臣の肩を抱くと、一瞬驚いたような顔をしてから、すぐに笑顔を作って貴臣がにこやかに答えた。
台所までビールや日本酒を運び入れ、保冷個にビールを移し替えて大量に冷やすと、居間でテレビを見てた父に挨拶をしてから、離れの俺の使っていた部屋に移動する。
「凄いね、離れがあるなんて」
「母屋だけだと収拾つかなくなったんだよ。ちゃんとトイレと風呂もあるから、気を遣わずにこっちで寛げばいいからな」
「泊まるのは俺たちだけ?」
「そうだよ。一応お前に寛いでもらうためだから。さ、荷物置いたし母屋に行こうぜ」
「あ、ちょっと待ってよ」
握った貴臣の手がなんだか冷たい気がしたけど、緊張のせいだろうと思っていた。
「……お世話になります。東条貴臣です」
「そんなに堅苦しくなくて良いよ。気楽にお兄ちゃんって呼んでもらって構わないよ」
「貴臣、さっき言ったろ。この人が四十前なのにフラフラしてる自由人の兄ちゃん。気なんか遣わなくて大丈夫だから」
「なにお前、そんな酷い紹介したのかよ。フラフラって俺は無職じゃねえっつの」
兄を交えて雑談しながら実家までの道のりを過ごすと、買い物を頼まれていたらしく、途中でスーパーに立ち寄ってビールや日本酒を大量に買い込む。
「ああ、この前ワインありがとうな」
「この前って、それ春のことだろ。いつの話だよ」
「春?」
不思議そうにする貴臣に、説明がないと分からないよなと苦笑して、兄の誕生日にワインやシャンパンを送り付けた話をする。
「野島さんからオススメのワイン教えてもらってさ。安く買えたから、たまにはと思って誕生日にね。でも四月はこの前じゃないと思うんだよな」
「はは。確かに」
「いや、この歳になると一年はあっという間でさ」
「年寄りアピールすんなよ。まだ三十代だろ」
「お前が滅多に連絡くれないからだよ」
「兄ちゃんだって連絡してこないだろ」
また賑やかになった車内はうるさいくらいで、それでも貴臣も緊張は少しほぐれたのか、楽しそうに俺たちの会話に加わって実家に向かうことになった。
「圭吾、荷物下ろして」
「ん。貴臣は良いからな」
「いやでも」
「いいよ、貴臣くん。君はお客さんなんだから」
大量に買い込んだビールや日本酒を、数回に分けて玄関まで運び入れると、ようやく人の気配に気付いたらしい母が顔を出した。
「まあまあ、沢山買い込んで来たこと」
「ただいま」
「母ちゃん、貴臣連れて来たよ。貴臣、これがうちの母ちゃん」
「この度はお世話になります。圭吾さんの同僚の東条貴臣です。今回はご無理を言いましてご迷惑をお掛けします。お口汚しですが、どうぞお受け取りください」
「あらまあ、ご丁寧に。圭吾の母です。いつも息子がお世話になってます。貴臣くんの名前はよく聞いてたのよ。こんなイケメンだったなんてびっくりだわ」
母は菓子折りを受け取りながらイケメンを連呼して貴臣を凝視するので、失礼だろと苦笑してやめさせる。
「それより一樹にいと果穂ねえたちは。チビたち居ないの?」
「雪合戦やるとかで、遊びに連れて行ったわ」
「そうなんだ? 俺が出る時は家に居たのにな」
「あいつら帰って来たら、本当にうるさいくらい賑やかだからごめんな」
「いや……大丈夫だよ。楽しみにしてる」
また緊張した様子に戻ってしまった貴臣の肩を抱くと、一瞬驚いたような顔をしてから、すぐに笑顔を作って貴臣がにこやかに答えた。
台所までビールや日本酒を運び入れ、保冷個にビールを移し替えて大量に冷やすと、居間でテレビを見てた父に挨拶をしてから、離れの俺の使っていた部屋に移動する。
「凄いね、離れがあるなんて」
「母屋だけだと収拾つかなくなったんだよ。ちゃんとトイレと風呂もあるから、気を遣わずにこっちで寛げばいいからな」
「泊まるのは俺たちだけ?」
「そうだよ。一応お前に寛いでもらうためだから。さ、荷物置いたし母屋に行こうぜ」
「あ、ちょっと待ってよ」
握った貴臣の手がなんだか冷たい気がしたけど、緊張のせいだろうと思っていた。
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