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13.②
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「そんなのいつの間に手配したの」
「ふふふ、俺は出来る男なのだよ」
「その顔ウザい」
「酷い!」
いつもより多少混雑した電車で貴臣の自宅の最寄駅に向かうと、二手に分かれて商品を受け取ることにして、待ち合わせ場所を決めて一旦別れる。
俺はチキンを受け取りに、駅の裏手にあるビストロに向かうと、ローストチキンとおまけのマッシュポテトを受け取り、ワインも仕入れて集合場所に向かう。
貴臣は今頃ケーキを受け取っているはずだ。
小ぶりなホールケーキは、誰あろう貴臣本人から美味しい店だと聞いていたパティスリーで予約したので、おそらく不満は出ないと思う。
それでも反応が気になってソワソワしながら集合場所に向かうと、貴臣が女の子にナンパされているではないか。
一瞬羨ましいと思ってしまってからハッと我に返ると、それは俺の恋人ですからと表情を戻し、困惑気味の貴臣の元に駆け付けた。
「お待たせ」
「ああ、待ってないから大丈夫だよ。じゃあ連れが来たので、すみません」
貴臣が女の子に頭を下げると、彼女たちはヒソヒソとなにか俺たちに向かって暴言でも吐いている様子だ。
「さーせん。大事な恋人なんで、ナンパしないでくださいね。ほら、行くぞ」
「え、ちょ……」
驚く貴臣の手を掴むと、少し強引に引き寄せて並んで歩かせる。
「お前さ、ナンパくらいはあしらえるようになってくれよ」
「いや、あの子たちがしつこくて」
「お前イケメンだもんな。……ちくしょう、可愛い子たちだったな」
「なんで惜しそうな顔してんだよ」
「バレたか」
くだらない話をしながら掴んでいた手を離すと、貴臣が少しだけ残念そうな顔をした気がして、ちょっとだけ気分が良くなった。
本当は普通に手を繋いで歩きたいけど、どこまでどんな風にオープンにして良いのか分からないし、貴臣にだって考えはあるだろうから無理強いは出来ない。
マンションに到着すると、エレベーターで六階に上がり、通い慣れた部屋に入って靴を脱ぐ。
「ただいま」
「お邪魔しますだろ」
相変わらずふざけたやり取りをしながら、お互いに買ってきた商品をテーブルに置くと、とりあえずコートを脱いでハンガーに掛ける。
「なに、ワインもあるの。凄くない?」
「だから言ったろ、俺は出来る男なんだよ」
「だからその顔やめろって。ウザい」
「酷い! あたしあんたの彼氏なのに」
「ウザさ増したわ」
貴臣はクスッと笑いながら、お風呂を洗ってくると言ってバスルームに向かった。
手持ち無沙汰になったので、とりあえずケーキを冷蔵庫にしまうと、ソファーに座ってエアコンのスイッチを入れ、テレビをつけて寛がせてもらう。
料理とケーキは手配出来たけど、プレゼントは気に入ってもらえるか分からない。
そもそも浮き足だって色々と準備したけど、貴臣が引いてないか心配だ。
「お湯貯まったらすぐ入る?」
「ゆっくり食べたいし、明日も仕事だしな」
「そだね」
風呂の掃除を終えたらしい貴臣がリビングに戻ってきたので、先に風呂に入ることにしてゲームをして時間を潰す。
「そうだ。俺出来る男だからさ、お前にプレゼントも用意してあるんだよ」
「は? マジで」
「マジ。まあ俺の趣味だし、毎日使える無難なもので悪いけど、この時期寒いからストールな」
「いや、めっちゃ嬉しいよ。ありがとう」
早速包みを開けてストールを手に取ると、手触りを確かめて嬉しそうに笑うので、俺まで嬉しくなってしまった。
「ふふふ、俺は出来る男なのだよ」
「その顔ウザい」
「酷い!」
いつもより多少混雑した電車で貴臣の自宅の最寄駅に向かうと、二手に分かれて商品を受け取ることにして、待ち合わせ場所を決めて一旦別れる。
俺はチキンを受け取りに、駅の裏手にあるビストロに向かうと、ローストチキンとおまけのマッシュポテトを受け取り、ワインも仕入れて集合場所に向かう。
貴臣は今頃ケーキを受け取っているはずだ。
小ぶりなホールケーキは、誰あろう貴臣本人から美味しい店だと聞いていたパティスリーで予約したので、おそらく不満は出ないと思う。
それでも反応が気になってソワソワしながら集合場所に向かうと、貴臣が女の子にナンパされているではないか。
一瞬羨ましいと思ってしまってからハッと我に返ると、それは俺の恋人ですからと表情を戻し、困惑気味の貴臣の元に駆け付けた。
「お待たせ」
「ああ、待ってないから大丈夫だよ。じゃあ連れが来たので、すみません」
貴臣が女の子に頭を下げると、彼女たちはヒソヒソとなにか俺たちに向かって暴言でも吐いている様子だ。
「さーせん。大事な恋人なんで、ナンパしないでくださいね。ほら、行くぞ」
「え、ちょ……」
驚く貴臣の手を掴むと、少し強引に引き寄せて並んで歩かせる。
「お前さ、ナンパくらいはあしらえるようになってくれよ」
「いや、あの子たちがしつこくて」
「お前イケメンだもんな。……ちくしょう、可愛い子たちだったな」
「なんで惜しそうな顔してんだよ」
「バレたか」
くだらない話をしながら掴んでいた手を離すと、貴臣が少しだけ残念そうな顔をした気がして、ちょっとだけ気分が良くなった。
本当は普通に手を繋いで歩きたいけど、どこまでどんな風にオープンにして良いのか分からないし、貴臣にだって考えはあるだろうから無理強いは出来ない。
マンションに到着すると、エレベーターで六階に上がり、通い慣れた部屋に入って靴を脱ぐ。
「ただいま」
「お邪魔しますだろ」
相変わらずふざけたやり取りをしながら、お互いに買ってきた商品をテーブルに置くと、とりあえずコートを脱いでハンガーに掛ける。
「なに、ワインもあるの。凄くない?」
「だから言ったろ、俺は出来る男なんだよ」
「だからその顔やめろって。ウザい」
「酷い! あたしあんたの彼氏なのに」
「ウザさ増したわ」
貴臣はクスッと笑いながら、お風呂を洗ってくると言ってバスルームに向かった。
手持ち無沙汰になったので、とりあえずケーキを冷蔵庫にしまうと、ソファーに座ってエアコンのスイッチを入れ、テレビをつけて寛がせてもらう。
料理とケーキは手配出来たけど、プレゼントは気に入ってもらえるか分からない。
そもそも浮き足だって色々と準備したけど、貴臣が引いてないか心配だ。
「お湯貯まったらすぐ入る?」
「ゆっくり食べたいし、明日も仕事だしな」
「そだね」
風呂の掃除を終えたらしい貴臣がリビングに戻ってきたので、先に風呂に入ることにしてゲームをして時間を潰す。
「そうだ。俺出来る男だからさ、お前にプレゼントも用意してあるんだよ」
「は? マジで」
「マジ。まあ俺の趣味だし、毎日使える無難なもので悪いけど、この時期寒いからストールな」
「いや、めっちゃ嬉しいよ。ありがとう」
早速包みを開けてストールを手に取ると、手触りを確かめて嬉しそうに笑うので、俺まで嬉しくなってしまった。
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