彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

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11.② 貴臣視点

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「あれ? もう電話終わったの」
「うん。終わった」
 圭吾はそう言いながら、ちゃんと水分取れよと炭酸水のペットボトルをサイドテーブルに置く。
「ていうか、なんで圭吾のお母さんが俺の名前知ってるの」
「なんかで俺が話したんだろ。普通に覚えてたから、何回も貴臣の話したのかも。覚えてないけど」
 あっけらかんとした様子で豪快に笑うと、ベッドに腰を下ろして心配そうに俺の額から頬を撫でる。
「もう少し寝てるか」
「そうだね、ちょっとまだボーッとしてる」
「ごめんなマジで」
「もう良いって」
 ひんやりとした圭吾の手を掴むと、その手の甲にキスをして大丈夫だからと苦笑する。
「じゃあ俺は向こうでゲームしてるわ」
「うん、分かった」
「気分悪くなったらすぐ呼べよ」
「ありがとう」
 今度は唇でキスをすると、圭吾は俺の頭を一撫でしてベッドを離れた。
(本当に付き合うことになったんだな……)
 今になって考えてみても不思議な気がするし、あの晩どうして圭吾に告白したり迫ったり出来たのか、自分でもよく分からない。
 多分衝動的だったし、後先は考えていなかった。
 だけどなんとなく直感が、今なら圭吾は俺を拒まないとうるさく騒いだ気がする。
 いや、そうじゃない。今言わないとダメだって焦りがあった。
 それに、もうこれ以上見ているだけの恋なんてしんどいと感じたのも、あんな行動に出た大きな理由かも知れない。俺は俺なりに六年も圭吾を見てきたんだから。
 俺はそんなウジウジした俺自身を、バッサリと切り捨てたかったんだと思う。
 サイドテーブルに手を伸ばしてペットボトルを手に取り、キャップを開けるとすぐにプシッと炭酸が抜ける音がする。
 肘をついて体を起こすと、炭酸水を飲んで喉の渇きを癒し、適当にキャップを閉めてサイドテーブルに戻した。
(そうだ。将生さんにお礼言っとかないと……)
 枕元を手で探ると、充電ケーブルに繋がったスマホを手繰り寄せる。
 圭吾に本当のことは話せてないけど、将生さんは男性向けの出張彼氏をしている人だ。
 これを言うと、絶対に話がややこしくなるので友だちだと言ってある。
 そもそも俺にゲイコミュニティの知り合いなんていないし、そんな知り合いの作り方も分からない。
 そんな中、たまたまネットで知ったゲイ向けの出張彼氏のサービスを利用したところ、気さくな人で個人的な悩みを聞いてくれた初めてのゲイ友だ。
 もちろんいかがわしいサービスはなく、せいぜい手を繋いでもらえるくらい。当たり前だけど、俺には必要ないので手なんか繋いでない。
 将生さんはフリーランスのイラストレーターで、友人に頼まれて人助け半分で、恋人も公認であの仕事をしているらしい。
 俺の事情を知って、毎回お金を払わせるのは悪いからと、友だちになってくれて個人的なやり取りをしてはいるが、もちろん向こうにもこちらにも、特別な感情はない。
 それが証拠に二度目に会った時には恋人を連れてきて、二人で一緒に相談に乗ってくれたし、彼らとは十近く歳も離れているので頼れる兄貴分と言ったところだ。
 だからメッセージで付き合うことになったと送信すると、すぐにおめでとうとスタンプが返ってくる。
 圭吾が気にするだろうから、今後は連絡を控えた方が良いとは思っている。
 だけど俺の閉鎖的な世界が僅かながらもパッと明るくなるような、そんなあたたかい出会いだったので縁を切るのは躊躇してしまう。
 こんな俺は、圭吾を騙していることになるんだろうか。
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