彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

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10.②

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 営業部に所属すると、会社から補助が出るのでソムリエの資格取得を目指して勉強出来る制度も整っているが、他の部署はそれぞれの知識によるところが大きい。
 元からワインが好きで入ってくる社員がほとんどだが、専門知識があるかどうかというと、それは顧客と同じ程度か、あるいは詳しい顧客よりも劣っている場合もある。
 ワイン好きは拘りの強い人が多いし、営業部の社員の努力には頭が上がらない。
「そういえば、もう友だちとの予定は良いワケ?」
「え、なんの話」
「いや。昨日聞いたけど、そのソッチ系の友だちに色々相談してたんだろ。そういうのって俺には分かんないけど、貴重な存在なんじゃないの」
「ああ、将生さんのこと? まあお礼にご飯くらいは行くべきかなって思ってるけど、恋人が出来たのに他の人を優先はしたくないしね」
「恋人って俺のこと言ってる?」
「え⁉︎ 違うの?」
 貴臣はギョッとした様子で目を見開く。
「違う違う。好きとは言ったけど、ちゃんと付き合うとかそういう話しなかったから。俺の思い過ごしじゃなくて、ちゃんと付き合うってことで良いんだな?」
「当たり前じゃん。脅かさないでよ」
「悪かったって」
 肩を思いっきり叩かれて平謝りすると、貴臣はまだ怒ってる様子だが、とりあえずは落ち着いたのかハンバーガーを食べ切って包み紙を握り潰した。
「言っとくけど、付き合うなら俺は寛容じゃないからね。浮気とか絶対許さないし」
「お、おう」
 過去の恋愛において一度も浮気なんてしたことはないが、貴臣が言う浮気とは、会社で女の子と話すことが含まれてる気がする。
「だけど立場も理解出来るから、外では今まで通りで許してあげる」
「ああ、仲の良い同僚ってこと?」
「そう。お互いに恋人がいることはオープンにして、紛らわしい誘いは受けないようにするってこと」
「確かに今まで通りだな」
「まあ付き合いがあるのも分かるし、全部の飲み会を断れとは言わないけど、そんな時間があるなら俺と一緒の時間を作って欲しい」
「……急に可愛いこと言うなよ」
「は? いま俺可愛いこと言った?」
 ポテトを食べた指をペロっと舐めて、貴臣は不思議そうに首を傾げる。
 現金なもので、好きだと自覚するとそんな仕草一つですら愛おしいしエロく感じるんだから、俺はどうしようもないアホなんだと思う。
「よし! 今日は一日中エロいことして過ごすぞ」
「ちょっとなに、急にどうしたの」
「お前がエロいのが悪いんだぞ」
「なんだよそれ」
 言いながらわざとらしく貴臣は舌舐めずりをする。
 こういうところが俺を熟知してて嫌になるのに、嬉しくて仕方ない。
「本当に、お前は魔性の男だな」
「なんだろうね。ドヤ顔なのに、凄い頭悪い感じがする言葉だね」
「うるせえよ」
 貴臣の脇腹をくすぐると、さりげなく抱き寄せて腕の中に閉じ込める。
「んー。俺の服着てんのに圭吾の匂いがする」
「さりげなく可愛いこと言うなって」
「こんなことで可愛さ感じてるの」
「安いな。みたいな顔すんじゃねえよ」
 完全に緩み切った顔でニヤニヤする貴臣なのに、イケメン過ぎて眩しさすら感じてしまう凡庸な自分が悲しくなる。
「あ。圭吾、俺もう食べらんないよ。残りどうするの」
「なら俺が食べるわ」
「本当に、よく入るよね」
「うちの家系が、そもそも痩せの大食いっていうか、みんなよく食べるんだよ」
「へえ。そういえば家族の話は聞いたことないかも」
「そうか? あー。そういえば年末年始どうすんのかって連絡来てたわ」
「そんな時期か」
「貴臣は? 実家に帰ったりしないの」
「……うん」
 振ってはいけない話題だったのか、貴臣の表情が曇る。
「じゃあ俺の実家一緒に行く?」
 何気なくそう声を掛けると、貴臣は驚いた顔をした。
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