彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

文字の大きさ
上 下
17 / 66

7.②

しおりを挟む
「塚本部長に回す前に、俺がチェックするから忘れないでね」
「了解です」
 俺もボーッとしてられない。
 取り掛かり途中だった来週の会議資料に手を付けると、今日中に完成させられるようにエンジンを掛ける。
 視界の端に、同じようにパソコンに向かう貴臣の姿が入ったが、今はとりあえずそのことを考えている暇はない。
 そうして資料作りをメインに、時折かかってくる電話やメールの対応をしていると、あっという間に定時になった。
「東条さん、お疲れ様です」
「お疲れ様。どうかしたの?」
「あれ、本多さんから聞いてませんか」
「なにを?」
 少し驚いた様子で俺を見る貴臣と目が合って、一瞬だけなんだっけと思った後に、そういえば昼休憩の時に彼女たちに飲みに誘われたことを思い出した。
「今日一緒に飲もうって誘われたんだよ。でも俺は残業確定です」
「そうなんだ。俺もまた仕事終わりそうにないね」
 貴臣がやんわり断るが、彼女たちは諦める様子がなく、何時に終わりそうですかと詰め寄っている。
「圭吾は? お前が行くなら俺も顔出すよ」
「本多さん、どれくらい掛かりそうですか」
「え、俺? 俺は……早くても、後二時間くらいは掛かるかな」
 作業の手を止めて腕時計を見つめると、声を掛けてくれた女性社員が残念そうな顔をする。
「もしかして東条さんもそれくらいですか」
「ごめん。俺は見通し立たないから、圭吾が無理なら俺も今日はキャンセルで」
 貴臣が俺を理由に断るので、一気に俺に悲痛な表情が向けられる。
「ごめんって。また今度ね」
「絶対ですよ。東条さんも、たまには顔出してくださいね」
「俺なんか呼んでもつまんないよ?」
「そんなことないです。みんな東条さんと飲みたがってますから」
 結局のところ俺はダシにされた訳だが、確かに恋人を理由に適当に断っていたし、貴臣が飲み会に顔を出すなんてレアかも知れない。
 一騒ぎして帰っていく彼女たちを見送ると、せっかくの金曜だっていうのに、残業でどんどん人がいなくなる中キーボードを叩く。
 そして会議資料をなんとか完成させると、デスクに貴臣の姿がなく、どこに行ったのかと辺りを見回す。
「休憩スペースかな」
 ちょうど喉が渇いたし、財布から取り出した小銭を持って立ち上がると、休憩スペースに移動する。
「あ、おい貴臣……」
 案の定休憩スペースで姿を見つけ、呼び掛けた瞬間に声を抑えたのは、貴臣が電話中だったからだ。
「……ですよ。えー、それ本当ですか将生まさきさん」
 楽しげにやり取りする様子。それを見た瞬間、相手はあの時見た男じゃないかと直感が騒いだ。
(楽しそうに笑いやがって。……マサキって誰だよ)
 俺が居ることに気付いてない様子なので、休憩スペースになかなか入ることが出来ず、入り口でもたついていると、同じく残業で残っていた野島さんに声を掛けられた。
「あれ、なにやってんのお前」
「あ、野島さん」
「うん。お疲れ様。なんだ、東条も居るじゃん」
 野島さんは無遠慮に休憩スペースに入ると、そこでようやく貴臣が電話中なことに気付いて、声のトーンを落とす。
「本多、お前もう上がる?」
「そうですね、とりあえず一区切りつきました」
「じゃあまた飯食いにいくか?」
 野島さんは気さくに誘ってくれるけど、そのタイミングで電話を切った貴臣が会話に割り込んできた。
「すみません野島さん。この後飲み会に遅れて参加する予定で」
「なんだ、そうなのか?」
 少し驚いた様子で野島さんは俺と貴臣を交互に見る。
「……そうなんですよ。貴臣連れて来いって、総務の子たちに言われてて」
 仕方なく貴臣に話を合わせると、野島さんは気にする様子もなく、楽しんでこいよと言い残して休憩スペースから出て行った。
「なにお前、なんであんなこと言ったの」
「今日こそ一緒に居たかったから」
 急にしおらしいことを言われ、迂闊にもキュンと心奪われてからハッとする。
「つかなんだよ。お前、また約束があるんじゃねえの」
 さっきまで、楽しそうに電話していたことを思い出して、八つ当たりみたいな言葉が出る。
「いや、今日・・はないよ? だから俺んち来いよ」
 言い方に少しだけ引っ掛かったけど、ちょっと恥ずかしそうに目を伏せる仕草にすっかり参ってしまう。
 やっぱり俺はアホなのかも知れない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...