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5.②

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 小柄で華奢な彼女は可愛らしい小動物系で、なんとも庇護欲をそそられるタイプの子だ。
(そうだよ、俺は女の子が好きなんだから)
 なんだかんだ貴臣に振り回されている自分に気付いてハッとすると、帰り支度を整えてみんなと一緒に会社を出た。
 社内の飲み会なんて、いつぶりだろうか。そんなことを考えながら、電車に揺られて目的地に移動する。
 移動中に同期で営業の高宮たかみやから、俺に彼女がいるのかどうかをみんなが気にしてると聞かされ、居ないと答えればいいのに、どうしてだか話を濁してしまった。
「本多さ、なんか雰囲気変わったね」
「なに、俺のこと口説く気?」
「このお調子者。私は東条くん派です」
「また貴臣かよ」
「本多はチャラチャラし過ぎなのよ。どこの部署行っても、あんたを知らない社員が居ないのは呆れを通り越して感心するわ」
「だってみんな可愛くて感じ良いからさ。声掛けたくなるんだよ」
「本多の彼女には同情するわ」
「彼女ね……」
 どう答えて良いか分からずに苦笑すると、気付けば目的のワインバーに到着し、案内された窓側にセットされたテーブル席に腰を下ろす。
「店の雰囲気は、うちと違ってかなりカジュアルだね」
「あ、見て。ワインバーなのに他のお酒が充実してる」
 テーブルに着くなり、早速みんなが色々と話し始める。今日はただの飲み会だというのに、やはり着眼点が同じなのは興味深い。
 全員にファーストドリンクが運ばれてきたのを確認すると、簡単に乾杯して飲み会をスタートする。
 久々の飲み会で女の子と話してて、凄く楽しいはずなのに、どうしてか気分が上がらない。
 それが顔に出てるのか、会話が止まる度にどうしたのかと、あざといくらい可愛い表情で尋ねられて苦笑してしまう。
 さすがに同じ会社の子を口説きはしないけど、今までの俺ならもっとその場を盛り上げられてたと思う。
 なのにそれが上手く出来ないのは、貴臣とのことが中途半端になっているからだ。
 自分自身に情けなさを感じながら、俺は貴臣とどうなりたいのかぼんやりと考える。
(付き合いたいってこと? いや、どうかな……)
 ちょっとというか、かなり厭らしいことまでしてしまったけど、本番には至ってないし、セーフと言えばセーフなんだろうか。
 そんな風に考えてから、セーフってなんなんだろうと思ってしまう。
 結局のところ、飲み会の最中はずっとワインを飲んで男性社員とばかり話すことになり、俺の動向を気にも留めてない貴臣に気を遣う変な事態になってしまった。
 支払いを済ませて店を出ると、二次会に行くか行かないかで、その場でみんなの意見を取りまとめる。
 今日はまだ週半ばの水曜日だし、いくら酒好きの奴が多いとはいえ、このまま解散で良いんじゃないかと、俺は解散希望の奴らに混ざる。
 そんな騒がしさの中で、ふと視線を外して周りを眺めていると、そこに居るはずがない姿を見つけて思わず思考が停止する。
「あ……」
 見間違うはずはない。だけど貴臣は俺の知らない男と二人で楽しそうに並んで歩いていて、俺にも見せないような表情をしている。
「本多さん、どうかしました?」
 不意に声を掛けられて、視線の先を探られてはいけないと焦った俺は、わざとらしいくらい大きな声で返事してしまう。
「なんでもない!」
「うわっ、びっくりした」
「ああ、ごめん。本当、ボーッとしてて」
 貴臣が男と二人で歩いていようが、そんなことを隠す必要はない。
 だけど貴臣は自分がゲイだと言っていた。見る人が見ればなにかを感じ取るかも知れない。そんな距離感だった。
(あいつ、なんなんだよ……)
 言葉に出来ないモヤモヤした感情で、一気に気分が悪くなった。
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