彼女に浮気された俺がミステリアスな美貌の同期と××したら溺愛沼から逃げられなくなりました

藜-LAI-

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5.①

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 十一月も半ばになり、新規オープンを目指すダイニングバーの企画開発は、マーケティングのために次々と視察の予定が入り、バタバタと慌ただしく日々が過ぎていく。
「有楽町で改めてビブリオバーのコンセプト試す話聞いた?」
「聞いた。でも場所が悪いだろ、客層が違う」
「だからこそだろ。どうしてもビブリオバー作りたいみたいだからな」
「だったらコアターゲットは女性なんじゃないの? ノンアルコールの種類を増やして読書を楽しめるってところをアピールするなら、新宿とかの方が集客あると思うけどな」
 フロアから一番離れた人の少ない喫煙所に来ると、貴臣と何気ない仕事のやり取りをする。
「まあな。データ取るなら有楽町じゃないよな」
「オープン予定地は赤坂だろ? 客層が違い過ぎるよ、やっぱり」
 こうして仕事で一緒に過ごすことが多い俺たちだが、このところ貴臣の様子がおかしいというか、以前に戻ったと言う方がしっくりくるかも知れない。
「なに?」
「いや。お前、あんまり好き好き言わなくなったよな」
「そうかな。なんだよ、言って欲しいのかよ。欲しがりさんめ」
「違うから」
 ケンカとまではいかないが、俺とセックスしたがる貴臣の根本的な意識の違いについて話し合ってから、貴臣の口からそういう言葉が出なくなった。
 別にそれが寂しい訳じゃないけど、なんだか様子がおかしい気がして変な感じがする。
「そうだ。俺今週末は予定があるから、うちに泊めらんない」
「了解。あ、そうだ。予定で思い出したけど、新宿に出来たワインバー、今夜辺り飲みに行ってみないか」
「ごめん、今日はちょっと無理だわ」
「明日にリスケする?」
「いや、明日もちょっと無理」
「マジかよ。市場調査も立派な仕事だぜ?」
「分かってるけど、今週はちょっと無理なんだよ」
「まあ予定入れてしまってるもんは仕方ないけどさ。なら誰か誘って行ってこようかな」
 さすがにワインバーに一人で行くのも寂しいので、貴臣が行けないなら、久しぶりに社内の女の子に声を掛けてみても良いかも知れない。
 なにも貴臣と付き合ってる訳じゃないんだから、操を立てる義理もないし、彼女を作っちゃいけないルールなんてない。
 そのまま喫煙所を出てからも、仕事の話をしながらフロアに戻ると、先ほど話題に出た件でミーティングをするらしく、バタバタしながら会議室に入った。
 やはりビブリオバーのコンセプトを改めて試す話が出ているらしく、現在の店舗の商品提供具合から、有楽町が妥当だという判断が降りたようだ。
 確かに立地や客層がオープン予定のダイニングバーとはかなり異なるが、新たにノンアルコールの提供など店側の負担を考えると、新宿よりも有楽町が妥当なのかも知れない。
 その後は各店の売上状況の共有などがあり、小一時間ほどのミーティングを終えると、当初の予定通り、ワインバーに一緒に行ける人が居ないか、片っ端から声を掛けて回る。
 競合の視察とはいえ、あまりそればかり言ってしまうと楽しめなくなるだろうから、営業にも声を掛けてせっかくだから飲み会を企画する。
 誰か一人、女の子を誘って飲みに行っても良かったはずなのに、どうしてか貴臣が気になってそれが出来なかった。
 そして仕事に追われて定時を迎えると、今日の飲み会に参加するメンバーが俺を呼びにきて、デスク周りが一気に騒がしくなる。
 普段なら貴臣もすぐに会話に入ってきそうなのに、なにも反応がないので違和感を覚え、貴臣のデスクを見るともぬけの殻だった。
「山ちゃん、貴臣は?」
 隣の席の山口やまぐちに声を掛けると、さっき帰ったみたいですよと返ってきた。
「予定があったんじゃないですか」
「そっか。ありがと」
 貴臣が俺に声を掛けずに帰るだなんて滅多にないことなので少し驚いたが、そもそも今日は予定があると言っていたので急いでたんだろう。
「本多さん、まだですか。みんな本多さん待ちですよ」
「ごめんごめん」
 俺の顔を覗き込んできたのは、営業部の小林さんだった。
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