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4.①
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貴臣の家にいると曜日感覚がバクるけど、今週はまだ始まったばかりだ。
「明日に備えて寝るのは良いけどさ」
「ん?」
「いや、なんでお前はナチュラルに俺の布団に入って来てんの。しかもズボンに手ぇ入れんなよ」
「えへ、気付いた?」
「可愛く言い逃れしようとすんな」
邪な手を払いのけると、股間を死守しながら寝返りを打って貴臣と距離を取る。
「なんで逃げるの」
「お前こそ、盛り過ぎなんだよ。早くベッドに戻れよ、貴臣」
「つまんないの」
「つまるつまらないで、手を出そうとすんな」
「じゃあ本気なら良い?」
急に甘ったるい声がして、耳元にフッと息を吹き掛けられると、呆れて睨んだ瞬間にチュッと啄むようなキスをされる。
「お前ねえ……」
「チューくらい良いでしょ」
「減る、メンタルが減る」
「そう? こっちはそうでもないっぽいよ」
情けなくも反応してしまった股間に貴臣の手が伸びると、スウェットの上からカリカリと鈴口を引っ掻かれる。
「ちょっと聞きたいんだけどさ」
「咥えて欲しい?」
「違うわ! お前はセックスがしたいのか、俺が好きなのか、どっちか分かってんの」
「ん? どういうこと」
本当に意味が分からないと言った顔で、貴臣は困惑して手を止める。
「俺に好意があるとして、それ以前にお前には免疫がなさ過ぎるだろ。この前なんとなく出来ちゃったから、セックスしたいだけじゃないのか?」
「そんなことはないけど」
「いや、あるだろ。お前の性欲は思春期からずっとセーブされ続けて来たんだろ。今日だって来るなり玄関であんなことして……やり過ぎなんだよ」
「だって我慢出来なくて」
「だから、それが性欲の方が勝っちゃってるって話。貴臣は俺を好きなんじゃなくて、セックス出来そうだから俺に執着してるだけじゃないのか」
二人で抜き合いっこしてしまったし、どエロいキスも拒まなかった俺が言うことではないが、恋愛をするって感じではない気がして、本意を確認したくなる。
(俺、コイツに本気で好きって言われたいのか?)
不意にそんな思いが頭をよぎる。
体だけじゃ嫌だと、そう思っているということなんだろうか。
なにを馬鹿らしい。一蹴するものの、本気で思いを向けられたら俺は貴臣とセックスしても良いと思い始めてる自分に気付いてしまった。
「圭吾はさ」
「お、おう。なんだよ」
「俺が男と付き合ったことがないし、セックスの経験もないからそう思うの?」
「まあ、多少なりともそれが影響してるとは思うよ」
「じゃあ経験があれば、俺の気持ちを受け入れくれんの」
「ん?」
「分かった。俺、今までそういうのしたことなかったけど、マッチングアプリ試してみるわ」
「いや、待て待て待て!」
思わず貴臣の肩を掴んでブンブン振り回す。
「なに?」
「なに、じゃねえよ。俺とやる前に一発試してくるわみたいな軽率なノリやめて」
「違うの?」
「違うわ。いつもの理性的なお前はどこ行った。もうちょっと冷静になれよ。本当、お前の情緒はしょっちゅう家出するよな」
頭を抱えて溜め息を吐くと、こっちが溜め息を吐きたいよと貴臣が体を起こして頭を抱え始めた。
「貴臣?」
「あのさ、圭吾の言ってることってなんか矛盾しない?」
「なんでだよ」
「だって俺はお前が好きなんだよ? でも俺に経験がないから、その気持ちは性欲に負けた結果だって言ってるのに、俺が男と経験積もうとしたら止めてくるのおかしいだろ」
「いやお前の思考回路がおかしいわ。直列繋ぎかよ」
「直列繋ぎって」
貴臣は噴き出して肩を揺らす。
「笑いごとじゃないだろ」
「いや、毎度のことながら言い回しが可笑しくて」
涙出てきたじゃんと笑いながら目元を指で拭うと、貴臣は喉が渇いたと言ってそのままキッチンに向かった。
「明日に備えて寝るのは良いけどさ」
「ん?」
「いや、なんでお前はナチュラルに俺の布団に入って来てんの。しかもズボンに手ぇ入れんなよ」
「えへ、気付いた?」
「可愛く言い逃れしようとすんな」
邪な手を払いのけると、股間を死守しながら寝返りを打って貴臣と距離を取る。
「なんで逃げるの」
「お前こそ、盛り過ぎなんだよ。早くベッドに戻れよ、貴臣」
「つまんないの」
「つまるつまらないで、手を出そうとすんな」
「じゃあ本気なら良い?」
急に甘ったるい声がして、耳元にフッと息を吹き掛けられると、呆れて睨んだ瞬間にチュッと啄むようなキスをされる。
「お前ねえ……」
「チューくらい良いでしょ」
「減る、メンタルが減る」
「そう? こっちはそうでもないっぽいよ」
情けなくも反応してしまった股間に貴臣の手が伸びると、スウェットの上からカリカリと鈴口を引っ掻かれる。
「ちょっと聞きたいんだけどさ」
「咥えて欲しい?」
「違うわ! お前はセックスがしたいのか、俺が好きなのか、どっちか分かってんの」
「ん? どういうこと」
本当に意味が分からないと言った顔で、貴臣は困惑して手を止める。
「俺に好意があるとして、それ以前にお前には免疫がなさ過ぎるだろ。この前なんとなく出来ちゃったから、セックスしたいだけじゃないのか?」
「そんなことはないけど」
「いや、あるだろ。お前の性欲は思春期からずっとセーブされ続けて来たんだろ。今日だって来るなり玄関であんなことして……やり過ぎなんだよ」
「だって我慢出来なくて」
「だから、それが性欲の方が勝っちゃってるって話。貴臣は俺を好きなんじゃなくて、セックス出来そうだから俺に執着してるだけじゃないのか」
二人で抜き合いっこしてしまったし、どエロいキスも拒まなかった俺が言うことではないが、恋愛をするって感じではない気がして、本意を確認したくなる。
(俺、コイツに本気で好きって言われたいのか?)
不意にそんな思いが頭をよぎる。
体だけじゃ嫌だと、そう思っているということなんだろうか。
なにを馬鹿らしい。一蹴するものの、本気で思いを向けられたら俺は貴臣とセックスしても良いと思い始めてる自分に気付いてしまった。
「圭吾はさ」
「お、おう。なんだよ」
「俺が男と付き合ったことがないし、セックスの経験もないからそう思うの?」
「まあ、多少なりともそれが影響してるとは思うよ」
「じゃあ経験があれば、俺の気持ちを受け入れくれんの」
「ん?」
「分かった。俺、今までそういうのしたことなかったけど、マッチングアプリ試してみるわ」
「いや、待て待て待て!」
思わず貴臣の肩を掴んでブンブン振り回す。
「なに?」
「なに、じゃねえよ。俺とやる前に一発試してくるわみたいな軽率なノリやめて」
「違うの?」
「違うわ。いつもの理性的なお前はどこ行った。もうちょっと冷静になれよ。本当、お前の情緒はしょっちゅう家出するよな」
頭を抱えて溜め息を吐くと、こっちが溜め息を吐きたいよと貴臣が体を起こして頭を抱え始めた。
「貴臣?」
「あのさ、圭吾の言ってることってなんか矛盾しない?」
「なんでだよ」
「だって俺はお前が好きなんだよ? でも俺に経験がないから、その気持ちは性欲に負けた結果だって言ってるのに、俺が男と経験積もうとしたら止めてくるのおかしいだろ」
「いやお前の思考回路がおかしいわ。直列繋ぎかよ」
「直列繋ぎって」
貴臣は噴き出して肩を揺らす。
「笑いごとじゃないだろ」
「いや、毎度のことながら言い回しが可笑しくて」
涙出てきたじゃんと笑いながら目元を指で拭うと、貴臣は喉が渇いたと言ってそのままキッチンに向かった。
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