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3.②
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キッチンから投げられた布巾を受け取ると、リビングのローテーブルに乗っていた雑誌をまとめて脇に退け、テーブルを拭いて支度を整える。
「よし、じゃあ食おうぜ」
「お前なに頼んだの」
「俺? ヒレカツダブルと唐揚げのコンボ。圭吾は?」
「俺はね、特上ロースカツにアジフライとクリームコロッケ」
「アジフライ俺も迷ったわ」
弁当のパッケージを開けながら、観たかったアニメをサブスクで流すと、手を合わせて早速夕飯を食べ始める。
「このアニメ、今期人気なんだろ」
「夜中たまたま観てさ、面白かったよ」
「どうせアレだろ。ヒロインがおっぱい大きくて可愛いとかだろ」
「なぜ分かる」
「単純なんだよ、圭吾は」
貴臣は鼻で笑うと、一切れ交換してと言って俺の器からカツを抜き取る。
「俺、そんなに単純かな」
「分かりやすいよ」
「それはお前が俺に注目してるからだろ」
「まあ、そうなんだけどね」
「そもそもさ、お前はいつから俺のこと好きなの」
タルタルソースがたっぷりかかったアジフライを頬張りながら、隣で同じようにトンカツを頬張る貴臣を見る。
「いつから? 結構前からだね」
「なんだよそれ。貴臣って、そもそもゲイなの」
「そうだよ。俺は女の子は好きになったことない」
「マジか」
「マジっす」
結局アジフライも一口欲しいと言うのでかじらせると、満足そうに貴臣が笑う。
「なんで今頃になって俺に打ち明けたんだよ」
「なに。グイグイくるね」
「そりゃ気になるからさ」
「おお? 意識し始めたじゃん」
「揶揄うなよ」
「いや、揶揄ってはいないんだけど……圭吾はそれ聞いてどうするの。俺に向き合う決心ついたの」
「それが分かんないから、情報収集してんだよ」
「まあ、そうだよね」
貴臣は静かに頷くと、箸を置いて小さく咳払いする。
だから俺も居住いを正して背筋を伸ばすと、貴臣がリラックスしろよと苦笑した。
「俺が自分のことゲイじゃないかなって思ったのは小学生の頃。その当時はそんな単語も知らなかったけど、同級生の男子にドキドキする自分はみんなと違うんだって分かった」
「そんな小さい時からなの」
「うん。だから自分のことは絶対バレちゃいけないんだと思って隠してきた。カモフラージュで彼女作った時期もある」
「隠してきたってことは、今まで男と付き合ったことないの?」
「ないよ。誰ともセックスの経験ない。俺はお前と違って、体はキレイだよ」
「え、それなのに、初めてであんなエロいことしたの」
「うん。したかったし」
「したかったって、お前……」
驚いて貴臣を見つめると、性欲は普通にあるよと笑っている。
「でも彼女作ったことあるんだよな」
「セックスとか、試さなかったのかってこと?」
「うん、まあそうなんだけど」
「普通に無理。そもそもお前だって、進んで男とセックス試そうと思わないだろ?」
「そういう感じなんだ」
「うん」
冷めるぞと呟くと、貴臣は話を一旦区切って食事を再開する。そして豚汁の味が薄いと文句を言いながら再び口を開く。
「そのうちフェイクでも女の子と付き合うのは面倒になってきて、俺一生一人なんだろうなって思ってた」
「そんなお前が、俺を意識したのはいつからなの。そもそもなんで俺に興味持ったの」
「新人研修で仲良くなって、しょっちゅう泊まりに来るようになっただろ。あの頃からだから、出会って割と最初から好きだったよ」
「なんでよりによって俺」
「性格も良いし、見た目もタイプだし。それになんて言うのかな……女の子大好きな感じが、片想いするにはちょうど良かったんだよね」
恋愛する気はなかったしと、貴臣はトンカツを頬張りながら言い放つ。
「じゃあなんで俺に告ったの」
「なんでだろうね」
「は?」
「まあ、その辺は追々ね。俺まだお前を口説いてる最中だから」
ニッと笑って白い歯を見せると、貴臣はトンカツを頬張った。
「よし、じゃあ食おうぜ」
「お前なに頼んだの」
「俺? ヒレカツダブルと唐揚げのコンボ。圭吾は?」
「俺はね、特上ロースカツにアジフライとクリームコロッケ」
「アジフライ俺も迷ったわ」
弁当のパッケージを開けながら、観たかったアニメをサブスクで流すと、手を合わせて早速夕飯を食べ始める。
「このアニメ、今期人気なんだろ」
「夜中たまたま観てさ、面白かったよ」
「どうせアレだろ。ヒロインがおっぱい大きくて可愛いとかだろ」
「なぜ分かる」
「単純なんだよ、圭吾は」
貴臣は鼻で笑うと、一切れ交換してと言って俺の器からカツを抜き取る。
「俺、そんなに単純かな」
「分かりやすいよ」
「それはお前が俺に注目してるからだろ」
「まあ、そうなんだけどね」
「そもそもさ、お前はいつから俺のこと好きなの」
タルタルソースがたっぷりかかったアジフライを頬張りながら、隣で同じようにトンカツを頬張る貴臣を見る。
「いつから? 結構前からだね」
「なんだよそれ。貴臣って、そもそもゲイなの」
「そうだよ。俺は女の子は好きになったことない」
「マジか」
「マジっす」
結局アジフライも一口欲しいと言うのでかじらせると、満足そうに貴臣が笑う。
「なんで今頃になって俺に打ち明けたんだよ」
「なに。グイグイくるね」
「そりゃ気になるからさ」
「おお? 意識し始めたじゃん」
「揶揄うなよ」
「いや、揶揄ってはいないんだけど……圭吾はそれ聞いてどうするの。俺に向き合う決心ついたの」
「それが分かんないから、情報収集してんだよ」
「まあ、そうだよね」
貴臣は静かに頷くと、箸を置いて小さく咳払いする。
だから俺も居住いを正して背筋を伸ばすと、貴臣がリラックスしろよと苦笑した。
「俺が自分のことゲイじゃないかなって思ったのは小学生の頃。その当時はそんな単語も知らなかったけど、同級生の男子にドキドキする自分はみんなと違うんだって分かった」
「そんな小さい時からなの」
「うん。だから自分のことは絶対バレちゃいけないんだと思って隠してきた。カモフラージュで彼女作った時期もある」
「隠してきたってことは、今まで男と付き合ったことないの?」
「ないよ。誰ともセックスの経験ない。俺はお前と違って、体はキレイだよ」
「え、それなのに、初めてであんなエロいことしたの」
「うん。したかったし」
「したかったって、お前……」
驚いて貴臣を見つめると、性欲は普通にあるよと笑っている。
「でも彼女作ったことあるんだよな」
「セックスとか、試さなかったのかってこと?」
「うん、まあそうなんだけど」
「普通に無理。そもそもお前だって、進んで男とセックス試そうと思わないだろ?」
「そういう感じなんだ」
「うん」
冷めるぞと呟くと、貴臣は話を一旦区切って食事を再開する。そして豚汁の味が薄いと文句を言いながら再び口を開く。
「そのうちフェイクでも女の子と付き合うのは面倒になってきて、俺一生一人なんだろうなって思ってた」
「そんなお前が、俺を意識したのはいつからなの。そもそもなんで俺に興味持ったの」
「新人研修で仲良くなって、しょっちゅう泊まりに来るようになっただろ。あの頃からだから、出会って割と最初から好きだったよ」
「なんでよりによって俺」
「性格も良いし、見た目もタイプだし。それになんて言うのかな……女の子大好きな感じが、片想いするにはちょうど良かったんだよね」
恋愛する気はなかったしと、貴臣はトンカツを頬張りながら言い放つ。
「じゃあなんで俺に告ったの」
「なんでだろうね」
「は?」
「まあ、その辺は追々ね。俺まだお前を口説いてる最中だから」
ニッと笑って白い歯を見せると、貴臣はトンカツを頬張った。
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