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2.①
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なんてことはない。
あの後結局ゴムが無かったのと、風呂でふざけ過ぎて悪ノリのテンションになった俺たちは、普段はどんな方法で抜いてるのかとか、くだらない話をしてる内に眠くなって雑魚寝して朝を迎えた。
今までと違ったのは、貴臣がめちゃくちゃガツガツ俺を甘やかしてくることくらいだ。
朝起きるなり濃厚で酸欠になるようなキスと、手首のスナップであっけなく絶頂まで追いやられ、お礼に口でご奉仕する提案を丁重に断った。
「はあ……」
「なに溜め息吐いてんだ。会議行くぞ」
「お前のせいだろ」
「いやん、激しいんだから。どんな裸想像してたんだよ。俺か、それとも俺だな」
「お前はバカか」
用意してた資料で貴臣の頭を叩くと、うっかりクリアファイルが折れ曲がってしまった。
「照れんなよ。過剰反応って知ってるか」
「あんなことしといて平然としてるお前が怖えよ」
軽口を叩きながら六階の会議室に移動する途中、おっぱいが大きい経理の松永さんと、アイドル顔の総務の瀧澤さんにお疲れ様と声を掛けられて、なんとか男としての沽券が回復する。
「お前、本当におっぱいと顔面しか見てないな」
「そりゃお前、俺可愛い女の子とおっぱい大好きだもん」
「チンコも好きだろ。あんなに気持ちよさそうにし……」
「うわ、ちょ、バカ。お前こんなところでやめろよ」
慌てて貴臣の口を塞ぐが、その行動のせいで悪目立ちして、相変わらず仲がいいねなんて笑顔で声を掛けられる。
「今度から唇以外で口塞いだら罰金な」
「お前、マジ勘弁しろよ」
悪びれる様子のない貴臣に頭を抱えつつ、会議ブースの冷蔵庫から二人分のペットボトルを取り出して第二会議室に入る。
「諌山興産のデータ、なんか狂ってるから直すって言ってたけど間に合ったのか」
「ああ。大丈夫。朝イチで四元さんが直してくれた」
「マジかよ。あの四元さんが仕事フォローしてくれるとか。これだからイケメンは」
「なにそれ告白してんの」
「お前な、まずその耳よりも脳とメンタル診てもらえ」
パソコンをセッティングして、プロジェクターの動作確認をしながらアホみたいなやり取りをしてると、時間になってぞろぞろと他の社員も集まって来た。
「さあ、始めるぞ。気になるところはどんどん意見出せ」
共通の上司である塚本部長の一声で場の空気が一気に変わった。
俺たちが勤めるのは、山梨に醸造所やワイン畑、ワインセラーなどを備えたグルメや宿泊も楽しめる複合型ワイナリーを母体とした企業で、事業拡大によって東京に事業所を構え、自社で経営するレストランやワインバーを全国に七店舗展開する、国内ワインメーカーのオータムリーブズヒル。
そして俺と貴臣が所属するのは、新規事業などを主に取り扱う開発企画部だ。
来年新たに出展する店は、今までと違うコンセプトとして、自社初のダイニングバーになる予定でプロジェクトが進行してる。
「提案された二種のコンセプトですが、アクアリウムに関しては既存の店舗でのテストイベントでの反応は上々です」
「逆にビブリオバーに関するデータは資料の通り、既存店舗の営業スタイルにもよりますが、それをメインとして打ち出すには判断材料に乏しい結果が出ております。それぞれ詳細は資料をご覧ください」
事前のマーケティングデータでは非日常的な空間が人気を博したが、実際に運営店舗でテスト稼働させてみると反対の結果が出た。
顧客が何を求めて来店してるかによるものもあるが、既存店舗でのテスト稼働だけを判断材料にするとなると、一方の企画であるアクアリウムバーが現実的だ。
結局会議は一時間押しの十八時まで伸びて、通常業務は一気に滞り、その日は残業を余儀なくされた。
「うわやべ。経費の精算忘れてた」
「経理はこの時期ピリピリしてるぞ」
あの後結局ゴムが無かったのと、風呂でふざけ過ぎて悪ノリのテンションになった俺たちは、普段はどんな方法で抜いてるのかとか、くだらない話をしてる内に眠くなって雑魚寝して朝を迎えた。
今までと違ったのは、貴臣がめちゃくちゃガツガツ俺を甘やかしてくることくらいだ。
朝起きるなり濃厚で酸欠になるようなキスと、手首のスナップであっけなく絶頂まで追いやられ、お礼に口でご奉仕する提案を丁重に断った。
「はあ……」
「なに溜め息吐いてんだ。会議行くぞ」
「お前のせいだろ」
「いやん、激しいんだから。どんな裸想像してたんだよ。俺か、それとも俺だな」
「お前はバカか」
用意してた資料で貴臣の頭を叩くと、うっかりクリアファイルが折れ曲がってしまった。
「照れんなよ。過剰反応って知ってるか」
「あんなことしといて平然としてるお前が怖えよ」
軽口を叩きながら六階の会議室に移動する途中、おっぱいが大きい経理の松永さんと、アイドル顔の総務の瀧澤さんにお疲れ様と声を掛けられて、なんとか男としての沽券が回復する。
「お前、本当におっぱいと顔面しか見てないな」
「そりゃお前、俺可愛い女の子とおっぱい大好きだもん」
「チンコも好きだろ。あんなに気持ちよさそうにし……」
「うわ、ちょ、バカ。お前こんなところでやめろよ」
慌てて貴臣の口を塞ぐが、その行動のせいで悪目立ちして、相変わらず仲がいいねなんて笑顔で声を掛けられる。
「今度から唇以外で口塞いだら罰金な」
「お前、マジ勘弁しろよ」
悪びれる様子のない貴臣に頭を抱えつつ、会議ブースの冷蔵庫から二人分のペットボトルを取り出して第二会議室に入る。
「諌山興産のデータ、なんか狂ってるから直すって言ってたけど間に合ったのか」
「ああ。大丈夫。朝イチで四元さんが直してくれた」
「マジかよ。あの四元さんが仕事フォローしてくれるとか。これだからイケメンは」
「なにそれ告白してんの」
「お前な、まずその耳よりも脳とメンタル診てもらえ」
パソコンをセッティングして、プロジェクターの動作確認をしながらアホみたいなやり取りをしてると、時間になってぞろぞろと他の社員も集まって来た。
「さあ、始めるぞ。気になるところはどんどん意見出せ」
共通の上司である塚本部長の一声で場の空気が一気に変わった。
俺たちが勤めるのは、山梨に醸造所やワイン畑、ワインセラーなどを備えたグルメや宿泊も楽しめる複合型ワイナリーを母体とした企業で、事業拡大によって東京に事業所を構え、自社で経営するレストランやワインバーを全国に七店舗展開する、国内ワインメーカーのオータムリーブズヒル。
そして俺と貴臣が所属するのは、新規事業などを主に取り扱う開発企画部だ。
来年新たに出展する店は、今までと違うコンセプトとして、自社初のダイニングバーになる予定でプロジェクトが進行してる。
「提案された二種のコンセプトですが、アクアリウムに関しては既存の店舗でのテストイベントでの反応は上々です」
「逆にビブリオバーに関するデータは資料の通り、既存店舗の営業スタイルにもよりますが、それをメインとして打ち出すには判断材料に乏しい結果が出ております。それぞれ詳細は資料をご覧ください」
事前のマーケティングデータでは非日常的な空間が人気を博したが、実際に運営店舗でテスト稼働させてみると反対の結果が出た。
顧客が何を求めて来店してるかによるものもあるが、既存店舗でのテスト稼働だけを判断材料にするとなると、一方の企画であるアクアリウムバーが現実的だ。
結局会議は一時間押しの十八時まで伸びて、通常業務は一気に滞り、その日は残業を余儀なくされた。
「うわやべ。経費の精算忘れてた」
「経理はこの時期ピリピリしてるぞ」
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