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1.③
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悪戯っぽく笑うと、お前もエロいねと貴臣からは斜め上のセリフが返ってくる。
「なんでそうなるんだよ」
「なんでって。俺がお前に勃つかどうか知りたいんじゃないの」
「いや、だから無理だろ」
「無理じゃないよ。少なくとも俺は興奮する。見せてあげたいけど、とりあえず仕事帰りだし、汗もかいたから俺ちょっと風呂入ってくるよ」
「なにその支度してくるから待っててダーリンみたいなの、やめて。お前はその間に俺が帰るとは思わないのか」
「そしたら別の時にまたこの話する」
「なら俺には、今後お前を避ける正当な理由が出来た」
「プロジェクトでコンビ組んで仕事やってんのに? さすがに無理だろ」
「……おいどうすんだよ、早速詰んだぞ」
「知らねえよ」
貴臣が楽しげに笑う顔は、悔しいほどにイケメンでキラキラしてる。
「知らねえよじゃねえだろ、お前が変なこと言うからだろ」
「まあ同じ会社に同じ部署。どう足掻いても接点はなくならないんだから、諦めなよ」
貴臣は俺の頭をくしゃりと撫でると、立ち上がってバスルームに向かった。
その後ろ姿を見送りながら、撫でられた頭を抱え、ぐちゃぐちゃになった感情を吐き出すように大きく溜め息を吐く。
「はぁ? もう……なんなんだよ」
確かに貴臣は気心知れた気の置けない存在だが、恋愛対象となると話は別だ。
そもそも貴臣は女性が好きではなかっただろうか。
入社当時に彼女が居るからと、よく社内の女の子たちからの告白を断っていたし、実際に入社当初だけでなく今でもそうだ。
「なんで俺よ。つか、いつからよ」
バスルームからシャワーの音が聞こえてくると、艶かしい熱っぽい舌遣いが蘇る。
(やべえ、エロかったな……)
いや待てと思い返して大きく首を振る。
違う。あれは元カノと別れてから久しくそういった行為から離れていたからであって、貴臣のキスに反応した訳ではない。断じてそうではない。
悶々としながら読むでもないマンガ雑誌のページをめくっているうちに、気が付けば貴臣がシャワーを終えてバスルームから出てきていた。
「なんでまだ居るの。せっかく逃げる時間あげたのに」
バスタオルを腰に巻き、ハンドタオルで髪の毛を適当に拭いている。
「お前ねえ……戸締りしないで出てくとか不用心だろ。お前風呂入ってるし」
泊まった時に何度も見ている姿なのに、さっきのキスがあったからか、貴臣を直視することが出来ずに僅かに動揺してしまう。
「だからそこに目立つように鍵置いてあったでしょ。閉めてポストに放り込むだけじゃん」
貴臣は顎でテーブルの上に置いた鍵を指すと、自己防衛しなきゃダメでしょと可笑しそうに肩を揺らし、そのままリビングの隣の部屋のベッドに座り込む。
片膝だけあぐらのように折り曲げ、もう片方、無造作にベッドから降ろされた足はバスタオルがはだけて肌が大胆に晒されてる。
しなやかで筋肉質な足は白く艶かしい。
「圭吾、どうすんの」
「は、え?」
横目でチラリと剥き出しの足を眺めていたので、一瞬そのことを言われているのかと思う。
事故のようなキスをして、はっきり好きだとも言われていないのに、それっぽく抱きたいと匂わされただけでどうかしている。
「いや、風呂入らねえの」
「……ああ、入ってくるわ」
立ち上がってバスルームに向かうと、その気はないはずなのに心臓がバクバクとうるさい。
「あんな程度で意識するとかガキかよ……」
情けなさで溜め息を吐き出すと、服を脱いでシャワーを浴びる。
(俺はおっぱいが好き、おっぱいが好き、おっぱい揉みたい!)
心の中でそう何度も唱えるほど、貴臣の白く引き締まって無駄のない、艶かしい足が思い浮かんでしまう。
雑念を振り払うように体にまとわりついた泡を洗い流すと、バスルームから出て棚に置かれたバスタオルで体を拭いた。
「あ……」
「なんでそうなるんだよ」
「なんでって。俺がお前に勃つかどうか知りたいんじゃないの」
「いや、だから無理だろ」
「無理じゃないよ。少なくとも俺は興奮する。見せてあげたいけど、とりあえず仕事帰りだし、汗もかいたから俺ちょっと風呂入ってくるよ」
「なにその支度してくるから待っててダーリンみたいなの、やめて。お前はその間に俺が帰るとは思わないのか」
「そしたら別の時にまたこの話する」
「なら俺には、今後お前を避ける正当な理由が出来た」
「プロジェクトでコンビ組んで仕事やってんのに? さすがに無理だろ」
「……おいどうすんだよ、早速詰んだぞ」
「知らねえよ」
貴臣が楽しげに笑う顔は、悔しいほどにイケメンでキラキラしてる。
「知らねえよじゃねえだろ、お前が変なこと言うからだろ」
「まあ同じ会社に同じ部署。どう足掻いても接点はなくならないんだから、諦めなよ」
貴臣は俺の頭をくしゃりと撫でると、立ち上がってバスルームに向かった。
その後ろ姿を見送りながら、撫でられた頭を抱え、ぐちゃぐちゃになった感情を吐き出すように大きく溜め息を吐く。
「はぁ? もう……なんなんだよ」
確かに貴臣は気心知れた気の置けない存在だが、恋愛対象となると話は別だ。
そもそも貴臣は女性が好きではなかっただろうか。
入社当時に彼女が居るからと、よく社内の女の子たちからの告白を断っていたし、実際に入社当初だけでなく今でもそうだ。
「なんで俺よ。つか、いつからよ」
バスルームからシャワーの音が聞こえてくると、艶かしい熱っぽい舌遣いが蘇る。
(やべえ、エロかったな……)
いや待てと思い返して大きく首を振る。
違う。あれは元カノと別れてから久しくそういった行為から離れていたからであって、貴臣のキスに反応した訳ではない。断じてそうではない。
悶々としながら読むでもないマンガ雑誌のページをめくっているうちに、気が付けば貴臣がシャワーを終えてバスルームから出てきていた。
「なんでまだ居るの。せっかく逃げる時間あげたのに」
バスタオルを腰に巻き、ハンドタオルで髪の毛を適当に拭いている。
「お前ねえ……戸締りしないで出てくとか不用心だろ。お前風呂入ってるし」
泊まった時に何度も見ている姿なのに、さっきのキスがあったからか、貴臣を直視することが出来ずに僅かに動揺してしまう。
「だからそこに目立つように鍵置いてあったでしょ。閉めてポストに放り込むだけじゃん」
貴臣は顎でテーブルの上に置いた鍵を指すと、自己防衛しなきゃダメでしょと可笑しそうに肩を揺らし、そのままリビングの隣の部屋のベッドに座り込む。
片膝だけあぐらのように折り曲げ、もう片方、無造作にベッドから降ろされた足はバスタオルがはだけて肌が大胆に晒されてる。
しなやかで筋肉質な足は白く艶かしい。
「圭吾、どうすんの」
「は、え?」
横目でチラリと剥き出しの足を眺めていたので、一瞬そのことを言われているのかと思う。
事故のようなキスをして、はっきり好きだとも言われていないのに、それっぽく抱きたいと匂わされただけでどうかしている。
「いや、風呂入らねえの」
「……ああ、入ってくるわ」
立ち上がってバスルームに向かうと、その気はないはずなのに心臓がバクバクとうるさい。
「あんな程度で意識するとかガキかよ……」
情けなさで溜め息を吐き出すと、服を脱いでシャワーを浴びる。
(俺はおっぱいが好き、おっぱいが好き、おっぱい揉みたい!)
心の中でそう何度も唱えるほど、貴臣の白く引き締まって無駄のない、艶かしい足が思い浮かんでしまう。
雑念を振り払うように体にまとわりついた泡を洗い流すと、バスルームから出て棚に置かれたバスタオルで体を拭いた。
「あ……」
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