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1.②
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「じゃあ乳のデカさの話はもういいよ。それより今までだって、色んな子に告白されてたの知ってるぞ。お前が今更惚れるとかどんな子なんだよ」
こんな話を聞くことは滅多にないので、興味津々でツマミのプレッツェルをかじりながら貴臣の顔を覗き込む。
「別に今更じゃないよ」
「ふうん」
貴臣の明るめの茶色の髪は、いつも丁寧にセットされて後ろに撫で付けてある。
綺麗な額のすぐ下には、嫌味なく整えられた眉とくっきりとした二重の眼に長い睫毛、スッと通った鼻梁に程よく肉付きのある唇。
男同士だからそんなに意識して見たことなかったけど、どこからどう見ても完璧なイケメンなんだ、そりゃモテるのも頷ける。
「なに? なんでそんなまじまじ見てんの」
「いや、この顔じゃ、そりゃモテるよなと」
「お前の方がモテるだろ。彼女取っ替え引っ替えして嫌味かよ」
貴臣はビールを飲むと、俺が咥えたままのプレッツェルを口元から奪うように噛んで折った。
ふわりと香水の匂いがする。
突飛な行動に呆気に取られている俺とは対照的に、貴臣はさして気にした様子もなく、思ったより塩気が強くて美味いなとプレッツェルを噛み砕いている。
「おい。変なことすんな。人の食いもんをかじって略奪すんなよ」
「掴んだらお前の唾液で指先が汚れるだろ」
「そんなばっちいもんみたいに。つかそもそも、俺の食い途中のを口から直で取るな」
「いいじゃん。減るもんじゃないし」
「いや減るだろうが」
「減るっていうのはこういうことだろ」
「なっ……」
なにが起こっているのか、一瞬理解が出来なかった。
唇が滑り、少し薄くて硬い舌が口の中で蠢いている。
女の子とするのとは全然違う、力強くて生々しい舌遣いのディープキスだ。
厭らしく蠢く舌は唾液すら勿体ないと惜しむように、俺の口の中のなにもかもを搦め取っていく。
「んっ、ん、っおい! お前酔ってんのかよっ」
我に返るとすぐに体を突き放して唇を拭う。
口の中に苦いビールとプレッツェルの香りが充満して、艶かしい感触が残っている。
「な? 減ったろ。メンタルが」
貴臣は見たこともない妖艶な笑顔を浮かべると、なにもなかったようにビールを飲んだ。
「減ったわ、削られたわ! つか、なんなんだよ。よだれ啜りまくりじゃねえか」
「啜ったね。したかったからしただけだけど」
「は? じゃあなんなの、お前の好きな子ってまさか俺なのかな、ん?」
ロング缶の缶ビール三本程度で酔わないことは知っているが、貴臣の突然のイタズラに困惑しつつ揶揄うように呟いてビールを飲む。
「だったらダメ?」
「ブッ」
今度こそ俺は盛大にビールを噴き出した。
慌てふためく俺をよそに、貴臣はティッシュを差し出して汚すなよと楽しげに笑っている。
「ダメ? じゃねえよ。可愛らしく聞いてくんな」
「じゃあなんだよ。抱かせてって言えばよかったのか」
「俺が抱かれる方かよ!」
言ってからなにかが違うと悟ったが、案の定、貴臣は驚いた風に眉を上げて目を丸くしている。
「あ、抱かれるの嫌か。だったら俺のこと抱く? 俺はお前が相手してくれるならどっちでもいいよ」
「ちょ、違う違う、待て待て待て。なんで俺よ。お前普通に女の子にモテるっしょ」
「普通ってなに。俺はお前が彼女にフラれる度に、俺にしとけば良いのにって思ってたよ。お前、女見る目ないし、すぐ浮気されるし」
「否定できないのが痛い」
汚れたティッシュをゴミ箱に投げ捨てると、ビールを片手に掴んだまま、でもさと切り出して疑問に思ったことをぶつけてみる。
「お前はそもそも勃つの? 俺男だぜ」
よく考えてみろよと眉を寄せ、ゆっくりとビールを飲む。
さすがにここまで生々しい話をすれば、貴臣が大人しくなるだろうと思ったからだ。
「なんだよ。見たいのか」
こんな話を聞くことは滅多にないので、興味津々でツマミのプレッツェルをかじりながら貴臣の顔を覗き込む。
「別に今更じゃないよ」
「ふうん」
貴臣の明るめの茶色の髪は、いつも丁寧にセットされて後ろに撫で付けてある。
綺麗な額のすぐ下には、嫌味なく整えられた眉とくっきりとした二重の眼に長い睫毛、スッと通った鼻梁に程よく肉付きのある唇。
男同士だからそんなに意識して見たことなかったけど、どこからどう見ても完璧なイケメンなんだ、そりゃモテるのも頷ける。
「なに? なんでそんなまじまじ見てんの」
「いや、この顔じゃ、そりゃモテるよなと」
「お前の方がモテるだろ。彼女取っ替え引っ替えして嫌味かよ」
貴臣はビールを飲むと、俺が咥えたままのプレッツェルを口元から奪うように噛んで折った。
ふわりと香水の匂いがする。
突飛な行動に呆気に取られている俺とは対照的に、貴臣はさして気にした様子もなく、思ったより塩気が強くて美味いなとプレッツェルを噛み砕いている。
「おい。変なことすんな。人の食いもんをかじって略奪すんなよ」
「掴んだらお前の唾液で指先が汚れるだろ」
「そんなばっちいもんみたいに。つかそもそも、俺の食い途中のを口から直で取るな」
「いいじゃん。減るもんじゃないし」
「いや減るだろうが」
「減るっていうのはこういうことだろ」
「なっ……」
なにが起こっているのか、一瞬理解が出来なかった。
唇が滑り、少し薄くて硬い舌が口の中で蠢いている。
女の子とするのとは全然違う、力強くて生々しい舌遣いのディープキスだ。
厭らしく蠢く舌は唾液すら勿体ないと惜しむように、俺の口の中のなにもかもを搦め取っていく。
「んっ、ん、っおい! お前酔ってんのかよっ」
我に返るとすぐに体を突き放して唇を拭う。
口の中に苦いビールとプレッツェルの香りが充満して、艶かしい感触が残っている。
「な? 減ったろ。メンタルが」
貴臣は見たこともない妖艶な笑顔を浮かべると、なにもなかったようにビールを飲んだ。
「減ったわ、削られたわ! つか、なんなんだよ。よだれ啜りまくりじゃねえか」
「啜ったね。したかったからしただけだけど」
「は? じゃあなんなの、お前の好きな子ってまさか俺なのかな、ん?」
ロング缶の缶ビール三本程度で酔わないことは知っているが、貴臣の突然のイタズラに困惑しつつ揶揄うように呟いてビールを飲む。
「だったらダメ?」
「ブッ」
今度こそ俺は盛大にビールを噴き出した。
慌てふためく俺をよそに、貴臣はティッシュを差し出して汚すなよと楽しげに笑っている。
「ダメ? じゃねえよ。可愛らしく聞いてくんな」
「じゃあなんだよ。抱かせてって言えばよかったのか」
「俺が抱かれる方かよ!」
言ってからなにかが違うと悟ったが、案の定、貴臣は驚いた風に眉を上げて目を丸くしている。
「あ、抱かれるの嫌か。だったら俺のこと抱く? 俺はお前が相手してくれるならどっちでもいいよ」
「ちょ、違う違う、待て待て待て。なんで俺よ。お前普通に女の子にモテるっしょ」
「普通ってなに。俺はお前が彼女にフラれる度に、俺にしとけば良いのにって思ってたよ。お前、女見る目ないし、すぐ浮気されるし」
「否定できないのが痛い」
汚れたティッシュをゴミ箱に投げ捨てると、ビールを片手に掴んだまま、でもさと切り出して疑問に思ったことをぶつけてみる。
「お前はそもそも勃つの? 俺男だぜ」
よく考えてみろよと眉を寄せ、ゆっくりとビールを飲む。
さすがにここまで生々しい話をすれば、貴臣が大人しくなるだろうと思ったからだ。
「なんだよ。見たいのか」
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