踊り子さんはその手で乱されたい。

藜-LAI-

文字の大きさ
上 下
42 / 47

踊り子さんは自信がない①

しおりを挟む
 また夢を見た。
 今度は過保護なくらい亮司さんに構われる夢だ。
 俺がネックレスをしてないことを怒ってるのか、一応客商売だし店では着けてないと答えると、見せつけて悔しがらせたら良いと口を尖らせる姿が、普段と違って可愛かった。
 そして俺の指にリングをはめると、安心したように微笑んで、ネックレスなんて用意するんじゃなかったと、揃いのリングをはめた手で指を絡めてしっかりと俺の手を握る。
「りょ……じ、さん」
 鼻も詰まってるし、夢だって分かってるのに、彼が普段つけてる香水の匂いがした気がして、切なくなって彼の名前を呼ぶ。
 そして夢だから都合よく、今はゆっくり寝ていろと優しい手が頭を撫でてくれて、その心地良さに俺は意識を手放した。
 それからどれくらい眠ってたんだろう。
 目が覚めると、当たり前だけど部屋が暗くて、だけど明らかに見慣れた天井じゃないことに驚く。
「えっ⁉︎ ……うっ、ゴホッゴホッ」
 慌てて起き上がったからか、咽せて咳き込むと、そこに居るはずがない人影が立ち上がって大丈夫かと背中をさすってくれる。
「亮司、さん?」
「驚かせたかな」
「え、なんで? ここ、亮司さんちですよね」
「とりあえず横になった方が良い。今飲み物持ってきてあげるから。ね?」
 訳が分からないまま亮司さんに寝かしつけられると、首元にひんやりとした心地いい物が当たる。氷枕だ。
 それにおでこも、冷却シートが貼られてることに気が付いて、亮司さんが全てやってくれたのかと申し訳ない気持ちになる。
「寝たままで飲めるように、ストローのキャップに取り替えてあるから」
 ベッドルームに戻ってきた亮司さんは、ペットボトルの蓋にストローが付いた、変わった飲み口を取り付けたスポーツドリンクを俺の目の前に差し出した。
「いただきます」
 布団の中から手を出してペットボトルを握ると、危なっかしいなと亮司さんが苦笑して飲むのを手伝ってくれる。
「もう良いのか」
「はい。それより俺、どうしてここに」
「心配で家に行ったら、看病しようにも足りない物が多過ぎてね。勇樹には移動で負担を掛けたけど、うちに運んで来たんだよ」
「そんなわざわざ」
「買い揃えても良かったんだけど、うちに連れてきた方が早いと思って。それに勇樹の家より、うちに居てくれた方が俺も看病しやすいから」
 そう言って心配したよと俺の髪を優しく撫でる亮司さんに、つい嬉しくて目頭が熱くなるけど、肝心なことを思い出して俺は慌ててその手を掴む。
「いや、でも俺インフルエンザなんで。ダメですよ」
「それは聞いてる。俺はワクチン打ってるから大丈夫だよ」
「でもうつる時はうつります。亮司さん、ただでさえ忙しいのに」
「恋人の心配くらいさせてくれ。俺がしたいからやってることなんだよ、勇樹」
「だけど」
「大丈夫、俺の心配は良いから。それよりちょっと熱を測ろうか。うちに連れてきた時は四十度超えてたから、ちょっと心配だったけど」
 どうりで記憶が全くないワケだ。
 俺が熱を測ってる間に、亮司さんはキッチンに移動して薬を飲むために何か食べた方が良いからと、お粥を作ってくれるらしい。
「大丈夫です。三十八度五分でした」
「いや、それ大丈夫じゃないから」
 そう言って少しパリパリになった冷却シートを貼り替えると、薬は家から持ってきたよと、亮司さんがサイドテーブルに処方薬を置いてくれたので安心する。
 寝てるだけで治るかもしれないけど、薬を飲めばそれだけ早く楽になる。
「さて。食欲はないかもしれないけど、お粥に梅干しを落としたから、塩分と水分をしっかり摂ろうね」
「本当、すみません」
「良いよ。逆なら放っておかないだろ? だから気にしないで」
 亮司さんは俺が起き上がるのを手伝うと、食べさせようかとレンゲで掬ったお粥を冷まし始める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

猫をかぶるにも程がある

如月自由
BL
陽キャ大学生の橘千冬には悩みがある。声フェチを拗らせすぎて、女性向けシチュエーションボイスでしか抜けなくなってしまったという悩みが。 千冬はある日、いい声を持つ陰キャ大学生・綱島一樹と知り合い、一夜の過ちをきっかけに付き合い始めることになる。自分が男を好きになれるのか。そう訝っていた千冬だったが、大好きオーラ全開の一樹にほだされ、気付かぬうちにゆっくり心惹かれていく。 しかし、弱気で優しい男に見えた一樹には、実はとんでもない二面性があって――!? ノンケの陽キャ大学生がバリタチの陰キャ大学生に美味しく頂かれて溺愛される話。または、暗い過去を持つメンヘラクズ男が圧倒的光属性の好青年に救われるまでの話。 ムーンライトノベルズでも公開しております。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました

葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー 最悪な展開からの運命的な出会い 年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。 そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。 人生最悪の展開、と思ったけれど。 思いがけずに運命的な出会いをしました。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...