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一目千両のその夫①
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「アァッ、ビャク、もう……」
隘路を奥から締め付けて敷布を掴むと、残滓の一滴さえも溢れない様子でシグレが大きく痙攣し、ガクガクと腰を戦慄かせる。
その震える腰を押さえつけ、乾いた音を立ててばちゅんと尖り切った鬼頭で奥を掻くように穿つと、ビャクもシグレの最奥で淫刀を振るわせて何度目かもう数え切れない吐精を果たした。
「あ……はぁ、はあ」
「もう息も絶え絶えと言ったところか」
「あたり、前だ。はあ、もう、色んなところが限界だっつーの」
「シグレ、貴様の身体は何度抱こうとも、発見ばかりで飽きることがないものでな」
「寝所でまで貴様って呼ぶなよ」
「可愛らしいおねだりだな」
ビャクは身体を折って、尻を突き出し四つん這いになったシグレの背中にキスをすると、その反動でずるりと打ち込まれた楔が引き抜かれ、どろりと白濁した液体が内腿を濡らす。
「ああ、布団がぐちゃぐちゃだよ」
「シグレは横になっていろ。俺が新しいものに変えてやる。ついでに風呂の支度もしてこよう」
「そうかよ。助かるよ」
シグレはぐったりした様子でそのまま寝台に敷いた布団の上で仰向けになった。
半月の船旅を終えてヤスナに戻ったシグレとビャクは、留守の間も酒場を切り盛りしていたハルとダキのおかげで、食うに困る状況とは無縁の繁盛した店の様子に安堵した。
クレハも〈イベリス〉に戻って、何もなかったようにまた商売を再開している。もっとも留守の間は、別の者に店を任せていたのは向こうも同じ状況らしい。
初めての海外と長い船旅のせいで、シグレは帰国してからしばらくの間寝込む日々が続き、ビャクもアザミたちを含めたヤスナに居る仲間とのやり取りで忙しなく過ごすことになった。
そして十日ほど寝込んだ後、シグレはビャクに許可を取ると、ようやく実家の〈龍海酒造〉に顔を出し、しばらく音沙汰がなかったことで心配したと母に泣かれてしまった。
そんな母には砂糖菓子と、兄たちには西大陸の珍しい酒を土産に持って行き、醸造方法などを語り合って有意義な時間を過ごし、ビャクのことも打ち明けて次は連れてくると約束した。
「そうか。婿殿の家族は寛容なのだな」
「どうだろうな」
風呂で体を洗いながら何気ない会話をしていると、シグレが家族と会ってきた話にビャクが反応した。
「なんだ、違うのか」
「寛容っていうより慣れじゃないかな。爺さんがかなり強烈で、よそに愛妾が腐るほど居るような人だったし、俺はその血が濃いから心配だって笑ってたな」
「なるほどな。それは貴様が他所に愛人を囲うという宣言か」
「違うわ。そりゃ散々好き勝手してきたけど、俺にはそこまでの甲斐性も体力もねえよ」
「そう願いたいものだな」
ビャクはシグレの唇に噛み付くようにキスをすると、当たり前のように伸ばした手を不埒に動かして、もう腰の感覚がないと嘆くシグレにちょっかいを出す。
「おい。そんなことより、お前の体の解呪の件はどうなってるんだ」
「ああ、そうだった」
ビャクは思い出したように立ち上がると、シグレのそばを離れ、部屋から珍しい形をした香炉を持って戻ってくる。
「なんだそれ」
「回生師が俺に寄越した物だ」
「クレハのババアが? 禁呪に関係あるものってことか」
「いや、催淫効果を高める香を貰ってな」
「んなもん要らねえよ!」
シグレはビャクの手から香炉を引ったくると、変なものを貰ってくるなとビャクを睨んで溜め息を吐く。
「まあそれは冗談として」
「冗談なのかよ」
「鎮静作用のある香を調合してくれたらしくてな。アザミに確認してもらったが、問題ないようなので部屋で焚いても構わないだろうか」
「別に構わねえけど、解呪と関係あるのか」
「帰国してから少しずつ、解呪出来るものは対応してもらってるんだがな。イスタリア王の時で言うところの、ブーストと同じ作用が見込めるらしい」
「へえ。香を焚くだけでそこまで効果があんのかよ」
「どうだろうな。効果としては微細らしいが、毎日焚いておけと言っていたな」
「なるほどね。まあよく分かんねえけど、毒じゃないみたいだし、体を元に戻すために色々試すのはいいんじゃねえの」
シグレはようやく納得したように香炉を窓際に置くと、ビャクがクレハから貰ったという線香に火をつけてその香りを嗅いで、甘い香りだなとビャクを振り返る。
「それは夜を盛り上げる方の香だぞ」
「お前わざとだろ。ややこしいことするんじゃねえよ」
どうりで果実が熟したような甘ったるい香りがするはずだと、シグレはすぐに香の火を消して漂う煙を払う。
そしてそれを面白がるビャクを叩くと、一変して森の中にいるような爽やかな香りのする香を焚いて、ようやく大きく深呼吸する。
「これはあれだな、よく眠れそうだな」
「鎮静作用と言ってたからな。確かに落ち着く香りだが、これは確かに風呂に入りながら焚くと良いかも知れんな」
風呂を薬湯にする際に同じような香りを放つ香草があるが、それと似ているようでいて、この香からは少なくともシグレが嗅いだことのない匂いがする。
隘路を奥から締め付けて敷布を掴むと、残滓の一滴さえも溢れない様子でシグレが大きく痙攣し、ガクガクと腰を戦慄かせる。
その震える腰を押さえつけ、乾いた音を立ててばちゅんと尖り切った鬼頭で奥を掻くように穿つと、ビャクもシグレの最奥で淫刀を振るわせて何度目かもう数え切れない吐精を果たした。
「あ……はぁ、はあ」
「もう息も絶え絶えと言ったところか」
「あたり、前だ。はあ、もう、色んなところが限界だっつーの」
「シグレ、貴様の身体は何度抱こうとも、発見ばかりで飽きることがないものでな」
「寝所でまで貴様って呼ぶなよ」
「可愛らしいおねだりだな」
ビャクは身体を折って、尻を突き出し四つん這いになったシグレの背中にキスをすると、その反動でずるりと打ち込まれた楔が引き抜かれ、どろりと白濁した液体が内腿を濡らす。
「ああ、布団がぐちゃぐちゃだよ」
「シグレは横になっていろ。俺が新しいものに変えてやる。ついでに風呂の支度もしてこよう」
「そうかよ。助かるよ」
シグレはぐったりした様子でそのまま寝台に敷いた布団の上で仰向けになった。
半月の船旅を終えてヤスナに戻ったシグレとビャクは、留守の間も酒場を切り盛りしていたハルとダキのおかげで、食うに困る状況とは無縁の繁盛した店の様子に安堵した。
クレハも〈イベリス〉に戻って、何もなかったようにまた商売を再開している。もっとも留守の間は、別の者に店を任せていたのは向こうも同じ状況らしい。
初めての海外と長い船旅のせいで、シグレは帰国してからしばらくの間寝込む日々が続き、ビャクもアザミたちを含めたヤスナに居る仲間とのやり取りで忙しなく過ごすことになった。
そして十日ほど寝込んだ後、シグレはビャクに許可を取ると、ようやく実家の〈龍海酒造〉に顔を出し、しばらく音沙汰がなかったことで心配したと母に泣かれてしまった。
そんな母には砂糖菓子と、兄たちには西大陸の珍しい酒を土産に持って行き、醸造方法などを語り合って有意義な時間を過ごし、ビャクのことも打ち明けて次は連れてくると約束した。
「そうか。婿殿の家族は寛容なのだな」
「どうだろうな」
風呂で体を洗いながら何気ない会話をしていると、シグレが家族と会ってきた話にビャクが反応した。
「なんだ、違うのか」
「寛容っていうより慣れじゃないかな。爺さんがかなり強烈で、よそに愛妾が腐るほど居るような人だったし、俺はその血が濃いから心配だって笑ってたな」
「なるほどな。それは貴様が他所に愛人を囲うという宣言か」
「違うわ。そりゃ散々好き勝手してきたけど、俺にはそこまでの甲斐性も体力もねえよ」
「そう願いたいものだな」
ビャクはシグレの唇に噛み付くようにキスをすると、当たり前のように伸ばした手を不埒に動かして、もう腰の感覚がないと嘆くシグレにちょっかいを出す。
「おい。そんなことより、お前の体の解呪の件はどうなってるんだ」
「ああ、そうだった」
ビャクは思い出したように立ち上がると、シグレのそばを離れ、部屋から珍しい形をした香炉を持って戻ってくる。
「なんだそれ」
「回生師が俺に寄越した物だ」
「クレハのババアが? 禁呪に関係あるものってことか」
「いや、催淫効果を高める香を貰ってな」
「んなもん要らねえよ!」
シグレはビャクの手から香炉を引ったくると、変なものを貰ってくるなとビャクを睨んで溜め息を吐く。
「まあそれは冗談として」
「冗談なのかよ」
「鎮静作用のある香を調合してくれたらしくてな。アザミに確認してもらったが、問題ないようなので部屋で焚いても構わないだろうか」
「別に構わねえけど、解呪と関係あるのか」
「帰国してから少しずつ、解呪出来るものは対応してもらってるんだがな。イスタリア王の時で言うところの、ブーストと同じ作用が見込めるらしい」
「へえ。香を焚くだけでそこまで効果があんのかよ」
「どうだろうな。効果としては微細らしいが、毎日焚いておけと言っていたな」
「なるほどね。まあよく分かんねえけど、毒じゃないみたいだし、体を元に戻すために色々試すのはいいんじゃねえの」
シグレはようやく納得したように香炉を窓際に置くと、ビャクがクレハから貰ったという線香に火をつけてその香りを嗅いで、甘い香りだなとビャクを振り返る。
「それは夜を盛り上げる方の香だぞ」
「お前わざとだろ。ややこしいことするんじゃねえよ」
どうりで果実が熟したような甘ったるい香りがするはずだと、シグレはすぐに香の火を消して漂う煙を払う。
そしてそれを面白がるビャクを叩くと、一変して森の中にいるような爽やかな香りのする香を焚いて、ようやく大きく深呼吸する。
「これはあれだな、よく眠れそうだな」
「鎮静作用と言ってたからな。確かに落ち着く香りだが、これは確かに風呂に入りながら焚くと良いかも知れんな」
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