超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-

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解呪③

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 老婆は王を見つめ、シグレには禁呪が目に見えているはずだとビャクたちを振り返った。
「そうなのか」
「え? ビ……ブランには見えてないのか。体中に巻き付いてるじゃないか。不気味で赤い血文字みたいだよな」
 シグレは見ているだけでも息が苦しくなる気配がすると、ビャクを見つめて首を傾げるが、質問したビャクには可視化出来るものではないらしく、難しい顔で眉を寄せた。
「血文字。そうかお前には目視できているのだな。回生師、お前の申し出を許可しよう。シグレ、読経とやらだが、お前にも出来ることなんだな?」
「経典がないと無理だぞ。婆さん、経典はあるのかよ」
「おいシグレ」
「ふふふ、構いやしません。ではシグレの旦那にはこちらをお渡しします」
 老婆は可笑しそうに笑いながら、蛇腹状に折り畳まれた経典を懐から取り出し、それをシグレに差し出して読めそうかと確認する。
「ああ。俺でもちゃんと読めるし、内容も見覚えある文言だから変なもんじゃないと思う」
「ならば急いで貰おう。回生師、約束を違えれば……その時は分かっているな」
「もちろんです。そのために旦那の力をお借りするのです」
「だそうだ。シグレ、任せたぞ」
「お、おう」
 ビャクの言葉を受け、シグレは緊張から乾いていく喉で唾を呑み込み、老婆が指示する通りに王のそばに立って経典を開く。
「では始めますぞ」
 老婆の一言でそれまでの和やかだった空気は一変し、静まり返る部屋の中に、シグレが読経する声が大きく空気を震わせる。
 老婆が口にした通り、先ほどまでとは比べ物にならない速度で、王を絡め取る呪詛のような赤い文字が、剥がれ浮いて消滅していく。
 そうして何層にも重なっていた呪縛の文字はあっという間に消え失せ、いよいよあと一層を残し、王の顔色も僅かに回復してきたように見える。
「では仕上げに入ります」
 老婆はそう呟くと、シグレに読経をやめないように釘を刺し、今までとは明らかに違う文言を唱え始めた。
 張り詰めた緊張が続く中、王の体から一文字、また一文字と文字が剥がれて消滅する度に、その体が痙攣するように大きく揺れ始めた。
 警戒するビャクが、老婆の喉元に突き付けたサーベルに力を込めるものの、老婆は動じずに短く解呪の反動だと答えて詠唱をやめない。
 そして最後の文字が消滅したのを確認すると、老婆はまだだと呟いて、王の体に新たに言葉を刻み始めた。
 青白く輝く文字が王の体を包むと、最後の文字が刻まれた瞬間、王の体が紫に光って大きく跳ねるようにビクッと動いた。
「貴様、なにをした」
 ビャクのサーベルが僅かに引かれ、老婆の喉元から血が滲む。
「護符の附与です。医師に確認させれば、こちらの御仁の体調が回復してると分かりましょう」
「護符だと?」
「また複雑な禁呪を用いられては意味がない。事前に話があった通り、禁呪への対策とでも申し上げておきましょう」
「そうか。シグレ、お前にはどう見える」
「そうだな、さっきまでの禍々しいのは消えたけど、今度は青い文字が体を包んでる」
 老婆の指示で読経をやめたシグレは見えたままをビャクに伝えると、老婆は捕捉するように回生師にしか扱えない術で更なる術を跳ね除けるようにしたのだと説明した。
 そしてそれを証明するように、程なくして王が意識を取り戻し、医師が呼ばれて部屋の中が騒がしくなると、王の回復を確認してからシグレたちはその場を離れた。
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