超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-

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ビャク、嫁になる①

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 アザミの話によれば、ビャクは西の大陸でも一大勢力を担う大国ヴィネージュの関係者で、極秘裏にヤスナ入りを果たして諜報活動をしており、〈マグノリア〉はその拠点なのだと言う。
「え、待て待て。待って。どういうこと?」
「ですから、全てお話しした通りで御座います」
「いや、お話しした通りって、それ俺に話して良い話なの?」
「それがビャクの判断ですので」
 顔色一つ変えずアザミが答えるので、シグレは一気に混乱して頭を抱え、先ほどから一切口を開かないビャクを見つめる。
「このところ不穏な動きがあってな。実のところシグレ、貴様も帝国の間者ではないかと神経を尖らせたが、ただの好き者だったワケだ」
「好き者とかそんな話はどうでもイイだろ。それより不穏な動きってどういうことだ。世界規模の戦争が起こるのかよ」
 ヤスナは東の大陸を統べる帝国アズナビアと友好関係を結んでいるとはいえ、位置関係で考えれば、西の大陸と程近いこの国は大戦が起これば真っ先に戦火に巻き込まれるはずだ。
 しかしアザミやビャクの話を聞く限りでは、そう単純な話ではないらしい。
「いや、ヤスナが戦火に晒される危険は少ないと考えている」
「なんでだよ」
 コートラルをぐるりと見渡せば、海上戦を得意とする帝国が、東の大陸からセドビア洋を挟んだ東端から、西の大陸に侵攻する方が現実的だという。
「叩くなら、軍事力の低い小国が分散した西の大陸からが妥当だからな」
「本当に戦争なんて起こるのかよ」
「それを水面下で駆け引きするのが俺の仕事だ。ヤスナは長らく帝国の統治下に近い状況にあった。それゆえに帝国の情報を持つ者も少なくない」
「だからって、ここ娼館だろ」
「そうだ。ここは良い隠れ蓑だったが、どこかのバカ正直な好き者が紛れ込んで、無碍に出来ない状況になってしまった訳だ」
「好き者じゃねえし! 待てよ。ってことは、一目千両は暗号みたいなもんで、ビャクの客は情報提供者だったってことかよ」
「噛み砕けばそうなる」
「マジかよ」
 シグレはキノエだけでなく、クレハからも噂話を聞いた。
 一目千両の話が諜報活動の隠語だったとして、キノエがなぜそんな話を知っていたのだろうか。それに〈イベリス〉の女主人であるクレハも、あの会話におかしな点はなかったはずだ。
「人の口に戸は立てられん。噂が立ったところで、実現出来る奴の方が圧倒的に少ないからな。まあ実際にやってのけた奴は確かに居たが、五千万ゼラも払った阿呆は貴様くらいなものだ」
「うっせえな」
 鼻で笑うビャクを睨みつけると、シグレは悔しさで奥歯を噛むが、そもそも諜報活動のために〈マグノリア〉を隠れ蓑にしていたのなら、なぜシグレのような客を通したのだろうか。
 ビャクなど噂でしかないと押し通せば良かったし、ましてや水揚げしたから身請けしろというのも、あまりにも勝手な話ではないだろうか。
「でもさ、今聞いた話が本当なら、ビャクは〈マグノリア〉に居る方が都合もいいだろうし安全じゃねえの?」
「それにつきましても、ビャクと私共の方での算段が御座います」
「算段って」
「確かに今までは、ここ〈マグノリア〉を拠点として情報収集をするのが都合の良いことでしたが、ビャクが身動き取れない状況は是とするものでは有りませんでした」
「でも、それなりの立場だから動かなかったんじゃないのか」
「ええ。ですが状況は刻一刻と変化しております」
「ビャクの自由が必要だとして、別に俺が介在しなくても良いんじゃないのか。そもそも俺の意思は無視かよ」
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