超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-

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なんでそうなる!!①

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 明け方の空が白み、窓から差し込む光は障子越しに、裸体で眠るビャクを一層妖艶に見せる。
「がっつり男なんだもんな、これで」
 あの後も五千万ゼラ分を回収してやろうと、幾度となくビャクに対峙したシグレであったが、後孔に指を忍ばせることは出来ても、いつの間にか立場が逆転して翻弄されてばかり。
 隣で無防備に寝入るビャクの乱れた髪を手櫛で梳かすと、意趣返しとばかりに、僅かに開いた唇にキスをして舌を潜り込ませる。
 くちゅ、くちゅっと徐々に水音が淫靡な響きになると、シグレの舌先に答えるようにビャクの舌がそれに搦みついて緩やかに蠢く。
「なんだシグレ、まだ足りんのか」
「足りる足りねえの話じゃないだろ。お前に五千万ゼラも払ったんだぞ。いい加減抱かせろよ」
「その気にさせてくれれば、いつでも良いぞ」
「金払ってんのはこっちだろ。お前がその気にさせろって、マジで」
「望むままに応えてやっただけだ」
「ったく。ああ言えばこう言うヤツだな」
「あれだけ善がったくせに、不満を口にするのか」
「あのなあ」
 シグレが辟易して表情を歪めると、ビャクは何事もなかったかのように、首に腕を絡めて続きだとキスをせがむ。
 しっとり濡れた唇が重なるとすぐに舌が搦み合って、劣情を刺激するような舌の動きに、シグレは呆れてなされるがままそれを受け入れる。
「お前、さっきまで寝てたんじゃないのか」
「起こしたのは貴様だろう」
「だから貴様はやめろって」
 色気のない会話とは裏腹に、くちゅり、ぴちゃりと軽やかな水音が跳ね、二人の口付けは深いものになっていく。
「もう大人しく寝ろよ」
「夢の中でも抱いてやろう」
「ほざけ」
 戯れ合う睦言のようなやり取りを交わすと、情事とは打って変わって、ビャクは大人しくシグレの腕枕に縋るように身を寄せる。
 そしてそのまま眠り込んだ二人を、〈マグノリア〉の主人が呼びにきたのは、陽も高くなった昼過ぎのことだった。
 寝所に置かれた水晶から綺麗な風鈴を鳴らすような音がして、シグレの意識がぼんやりと目覚めると、腕の中のビャクも僅かに身じろぎした。
「ビャク、お前寝てて良いのか」
「ん……」
「水晶から音が鳴ってるぞ」
 シグレはゆっくりと腕枕を外すと、青白く光る水晶に手を伸ばして掴み取り、繰り返し鳴り続ける音をビャクに聞かせる。
「ビャク、起きろよ」
「色気のない起こし方だな」
「うるせえよ。それよりほら、なんか連絡じゃないのか」
 シグレは体を起こして座り込むと、まだ眠気が取れないらしく膝枕に頭を置いたビャクの髪を手で漉いてやる。
「ああ。 大方おおかた飯の支度が整ったんじゃないか。この陽の高さだからな」
「マジか。俺めちゃくちゃ腹減ったわ」
 ビャクが水晶の呼び出しに応えている間、シグレは立ち上がって着替えを済ませ、顔を洗ってから髭を剃ると、まだ眠そうにしているビャクに服を着ろと着物を投げつけた。
「アザミが飯を運んでくる。貴様に話があるそうだぞ、シグレ」
「は? 俺に話?」
「一目千両が閨を共にした客だ。話ぐらいはあるだろう」
 シグレを揶揄うようにビャクが答えると、お金を払ったはずなのに、どうしてこうなったのかとシグレは痛みが増す頭を抱えた。
 五千万ゼラも支払ったというのに、結果は尻を開発されて、男相手にあられもない嬌声を漏らし、ビャクになされるがままに何度も絶頂を味わった。
 けれどシグレに男色の嗜好はないし、ましてやビャクに翻弄されっぱなしで、娼館に来たというのに精欲が満たされるどころか不完全燃焼だ。
 そんなシグレを揶揄うビャクと無駄話をしていると、部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
「お食事をお持ちしました」
 扉の向こうから〈マグノリア〉の主人であるアザミの声が聞こえると、ビャクは気怠そうに立ち上がって襖を開け、入り口の方へと赴く。
「私めが中まで運びます」
「ほう。美味そうな香りだな。約束は違えるなよ」
「詳しくは中で」
「そうだな」
 ビャクは小さく笑うとアザミの肩に手を置いて、それ以上は口にせずに踵を返して部屋の中に戻ってきた。
「シグレ、魚は好きか」
「煮付けなんかは大好物だけど」
「喜べ。魚の煮付けだ」
 海洋国家であるヤスナの国は漁業が盛んであり、魚料理のバリエーションは豊富で、首都であるキナも近くに漁港を抱えているので新鮮な魚は手に入り易い。
 以前〈イベリス〉のクレハから聞いた噂が本当で、ビャクが西の大陸から流れて来たのであれば、あるいは魚よりも肉の方が食べ馴染みがあるのかも知れない。
「良い匂いだな」
 運ばれてきた食事は、起き抜けであることに配慮したのか、薬膳粥とあっさりした出汁で煮付けた魚、それに青菜の和え物だ。
 シグレは早速箸を手に取ると、傍に控えて様子を見守っているアザミに声を掛ける。
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