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遊び人の本気④
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誘われるように呟いてビャクの帯を解き、襟元を大きく広げて肩をはだけさせると、シグレはその首筋に噛み付くように口付けをした。
「ぁあっ」
「なんて声出してんだ」
「俺も男だからな。一目見るだけで帰っていく奴ばかりでは、溜まっていく一方でな」
「だからってお前……」
男相手に勃起するのかと聞こうとして、シグレの胸はチリっと痛んだ。
まさか昔話を聞かされたことで、一目千両と呼ばれるビャクを手に入れたような、そんな錯覚を起こしてしまったのだろうか。
姿を見るためだけに、五千万ゼラもの大金を払ったシグレを揶揄っている節もあるし、そもそも具合いだなんだと言っているが、本当に情事に至る気持ちがあるのかも分からない。
シグレが黙り込んでいると、ビャクは不思議そうに首を傾げ、手慣れた様子でシグレの服を脱がせてから自分もはだけた着物を脱ぎ捨てて、シグレを引き寄せてその場に座り込む。
「男同士だろうとやることは変わらんぞ、シグレ」
「やることって、本気かよ」
「貴様は今日、俺に五千万ゼラ支払った。ならば俺もそれに応えるべきだろう」
月明かりだけの頼りない光が差す部屋の中で、透き通るようなビャクの白い肌が艶かしくシグレを誘う。
「気持ち悪いだの、後になって騒ぐなよ」
「買われた身だ。お前の好きにしてかまわんぞ」
挑発するようなビャクの強気な表情に苦笑すると、一糸纏わぬ剥き出しの肌にシグレはそっと触れた。
うっとりするほど白い肌は、女のそれとは違って柔らかさもなく逞しく引き締まっているにも拘らず、それが背徳感を煽るようにシグレの劣情に火を灯していく。
そしてビャクの身体をゆっくりと押し倒すと、首筋から鎖骨、胸元に手を滑らせてから、それを追うように同じ箇所に唇を押し当てた。
女相手にどうしていたのか、そんな簡単なことも思い出せないくらい、妙な雰囲気に呑み込まれているシグレは、ぎこちない動きでビャクの身体に触れている。
それが伝わっているからか、ビャクはどこか可笑しそうに笑いを堪えているような様子で、シグレの動きを観察するように静観しているが、それが分かるからこそ腹立たしさが生まれる。
「ああもう。やめだ、やめ」
シグレは身体を起こして頭を掻きむしると、あぐらをかいてそのまま頭を抱える。
「なんだ。大枚叩いてこの程度か」
「違う、仕切り直しだ」
シグレはビャクの腕を掴んで抱き起こすと、華奢に見えても逞しいその身体を抱き締め、絹糸のような見事な金髪を手櫛で漉いて背中を撫でる。
「この髪が気に入ったのか」
「お前さ、ちょっと黙ってろよ」
「なんだ。相手が男だと萎えるからか」
「だから黙ってろって」
シグレは答えてすぐに唇でビャクの口を塞ぐと、僅かに水音を立てて肉厚な唇を貪った。
女遊びは好きだが、わざわざ口説くような真似事をしなくて済むし、後腐れなく遊べるから娼館に通っていた。
だからだろうか、思えばこんな風にキスをしたり、相手の出方を伺うような駆け引きめいたことはしたことがないとシグレは思う。
口付けを深くして、僅かに動揺が伺えるビャクの唇を割って舌を挿し入れると、閉ざされた歯列をなぞるように舌先で丁寧に舐る。
くちゅりと卑しい水音にビャクの身体が震え、その機を逃すことなくシグレは歯列の隙間からさらに奥へと舌を捩じ込んで、舌を搦め取った。
「んふっ」
鼻から抜けるビャクの息遣いに、シグレの劣情は静かに昂っていく。
口腔の中を蹂躙するように、搦め取ったビャク舌を味わいながら硬くした舌先を動かすと、上顎から歯の裏を丁寧に舐め上げる。
「意外とキスが上手いんだな、ビャク」
「上手い? 相性の問題だろう」
「そうみたいだな」
随分と余裕のある返答に、シグレは煽られて間髪入れずにビャクの腰元に手を伸ばす。
「んっ」
「ちゃんと反応はしてるみたいだな」
僅かに硬さを持ち始めたビャクの性器を指先で弄ぶと、キスの続きをしようかと呟いて、シグレは再びビャクの唇を貪った。
「ぁあっ」
「なんて声出してんだ」
「俺も男だからな。一目見るだけで帰っていく奴ばかりでは、溜まっていく一方でな」
「だからってお前……」
男相手に勃起するのかと聞こうとして、シグレの胸はチリっと痛んだ。
まさか昔話を聞かされたことで、一目千両と呼ばれるビャクを手に入れたような、そんな錯覚を起こしてしまったのだろうか。
姿を見るためだけに、五千万ゼラもの大金を払ったシグレを揶揄っている節もあるし、そもそも具合いだなんだと言っているが、本当に情事に至る気持ちがあるのかも分からない。
シグレが黙り込んでいると、ビャクは不思議そうに首を傾げ、手慣れた様子でシグレの服を脱がせてから自分もはだけた着物を脱ぎ捨てて、シグレを引き寄せてその場に座り込む。
「男同士だろうとやることは変わらんぞ、シグレ」
「やることって、本気かよ」
「貴様は今日、俺に五千万ゼラ支払った。ならば俺もそれに応えるべきだろう」
月明かりだけの頼りない光が差す部屋の中で、透き通るようなビャクの白い肌が艶かしくシグレを誘う。
「気持ち悪いだの、後になって騒ぐなよ」
「買われた身だ。お前の好きにしてかまわんぞ」
挑発するようなビャクの強気な表情に苦笑すると、一糸纏わぬ剥き出しの肌にシグレはそっと触れた。
うっとりするほど白い肌は、女のそれとは違って柔らかさもなく逞しく引き締まっているにも拘らず、それが背徳感を煽るようにシグレの劣情に火を灯していく。
そしてビャクの身体をゆっくりと押し倒すと、首筋から鎖骨、胸元に手を滑らせてから、それを追うように同じ箇所に唇を押し当てた。
女相手にどうしていたのか、そんな簡単なことも思い出せないくらい、妙な雰囲気に呑み込まれているシグレは、ぎこちない動きでビャクの身体に触れている。
それが伝わっているからか、ビャクはどこか可笑しそうに笑いを堪えているような様子で、シグレの動きを観察するように静観しているが、それが分かるからこそ腹立たしさが生まれる。
「ああもう。やめだ、やめ」
シグレは身体を起こして頭を掻きむしると、あぐらをかいてそのまま頭を抱える。
「なんだ。大枚叩いてこの程度か」
「違う、仕切り直しだ」
シグレはビャクの腕を掴んで抱き起こすと、華奢に見えても逞しいその身体を抱き締め、絹糸のような見事な金髪を手櫛で漉いて背中を撫でる。
「この髪が気に入ったのか」
「お前さ、ちょっと黙ってろよ」
「なんだ。相手が男だと萎えるからか」
「だから黙ってろって」
シグレは答えてすぐに唇でビャクの口を塞ぐと、僅かに水音を立てて肉厚な唇を貪った。
女遊びは好きだが、わざわざ口説くような真似事をしなくて済むし、後腐れなく遊べるから娼館に通っていた。
だからだろうか、思えばこんな風にキスをしたり、相手の出方を伺うような駆け引きめいたことはしたことがないとシグレは思う。
口付けを深くして、僅かに動揺が伺えるビャクの唇を割って舌を挿し入れると、閉ざされた歯列をなぞるように舌先で丁寧に舐る。
くちゅりと卑しい水音にビャクの身体が震え、その機を逃すことなくシグレは歯列の隙間からさらに奥へと舌を捩じ込んで、舌を搦め取った。
「んふっ」
鼻から抜けるビャクの息遣いに、シグレの劣情は静かに昂っていく。
口腔の中を蹂躙するように、搦め取ったビャク舌を味わいながら硬くした舌先を動かすと、上顎から歯の裏を丁寧に舐め上げる。
「意外とキスが上手いんだな、ビャク」
「上手い? 相性の問題だろう」
「そうみたいだな」
随分と余裕のある返答に、シグレは煽られて間髪入れずにビャクの腰元に手を伸ばす。
「んっ」
「ちゃんと反応はしてるみたいだな」
僅かに硬さを持ち始めたビャクの性器を指先で弄ぶと、キスの続きをしようかと呟いて、シグレは再びビャクの唇を貪った。
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