35 / 46
15.ココロもカラダも②
しおりを挟む
「いじらしいことを。似合わんな」
「似合わないって、お前こそどうしたんだよ。ジレちゃんは永久凍土が溶けたのかな? ツンデレラやめたのかな?」
「なにを言ってるのか全く分からんが、揶揄われても改めるつもりはないぞ」
「なに。ちょっとマジでなんなの。可愛いこと言い過ぎ。やめて、チンコ痛いし」
依斗はジレーザをギュッと抱き締めて、硬さを持ち始めた腰をわざとらしく擦り付けるように押し付ける。
当然のことながら、間髪入れずに頭を叩かれて言葉を選べと唸るような低い声で怒られるが、ジレーザはまだ本調子ではないらしく、殴ってくる手に力が入ってない。
「痛いなあ、もう。悪かったってば。チンコも反省させて抱き締めとくから、お前はちゃんと寝てろ」
「人が真剣に話してるというのに、このろくでなしが」
「好きだよ。俺、お前がすごく好きなんだ」
依斗はジレーザを抱き竦め、耳元に小さな声で縋るように、だから無理はさせたくないと泣いているような声で呟く。
「馬鹿なのか」
けれどジレーザは短く冷たく言い返して、依斗の胸元を力なく叩く。
「痛えな」
「聖人の代わりがどれだけ居ようと、貴様の代わりなど居はしない。それとも私が、愛してると言葉にしなければ分からないのか、ヨリト」
「愛してるって、お前」
「そうだ。情けないことに、貴様に絆されて私は自分の想いに気付いてしまった。だから出来ることを、したいと思うことをするだけだ」
「ジレーザ」
「それに考えてもみろ。貴様が私以外で満足出来ると思うか?」
「ははっ。強気に出たな。でも確かにそうだろうな」
「そういうことだ。いつだって必ず貴様を正気に戻してみせる」
「心強いよ」
額を合わせて見つめ合うと、ありがとうと呟く依斗の声はジレーザの唇に奪われる。
雨粒が窓を叩き、吹き荒れる暴風がガタガタと窓を揺らす中、依斗とジレーザはお互いの想いを確かめ合うように、刹那的に、けれど情熱的にキスを貪る。
ピアリスと呼ばれる聖域は、常に外界からの攻撃に備えて特殊結界が張られているので、その外側に瘴気を蔓延させるための結界が張られたとしても、理論上内部に影響は出ない。
依斗がどこで力を振るうかも争点になるが、聖剣を使いこなすという点において、現状は圧倒的に不利な立場にある。
今のままでは、聖人としての力を聖剣に呑み込まれて魔力の枯渇を起こし意識さえも奪われて、これではどちらが使う立場なのか分からない。
たとえ瘴気を祓えたとしても、力を使うそばから自我を失うようでは、これ以上の攻撃に立ち向かうのは難しいだろう。
「考えごとか」
「いや、気持ち良過ぎて没頭してた」
「そうか。ならばそういうことにしといてやる」
「やだ、ジレちゃん。懐深いんだから」
「そうでなければ、貴様のようなヤツは手に余る」
おどける依斗の鼻に噛み付くと、ジレーザは一人で抱え込むなと、心の中を見透かしたように囁いてからキスをする。
依斗を受け入れてくれるジレーザのためにも、聖剣に使われる聖人で居てはいけない。
「お前はもちろん、俺自身のことも守るよ」
「ああ、そうしてくれ」
じゃれるようにそのままキスをして足を絡めて抱き合うと、依斗はジレーザを抱く腕に力を込めて、愛してると何度もキスの合間に囁く。
こんな風に心まで通わせる存在になるなんて、お互いに想像もしていなかった。
そのことを思うとあまりにも可笑しくて、依斗は込み上げる笑いを誤魔化しながら、ジレーザの首筋に唇を這わせる。
「楽しそうだな」
「お前にこんなことしてるのが不思議でね」
「考えたら負けだ」
「そうかもな」
「似合わないって、お前こそどうしたんだよ。ジレちゃんは永久凍土が溶けたのかな? ツンデレラやめたのかな?」
「なにを言ってるのか全く分からんが、揶揄われても改めるつもりはないぞ」
「なに。ちょっとマジでなんなの。可愛いこと言い過ぎ。やめて、チンコ痛いし」
依斗はジレーザをギュッと抱き締めて、硬さを持ち始めた腰をわざとらしく擦り付けるように押し付ける。
当然のことながら、間髪入れずに頭を叩かれて言葉を選べと唸るような低い声で怒られるが、ジレーザはまだ本調子ではないらしく、殴ってくる手に力が入ってない。
「痛いなあ、もう。悪かったってば。チンコも反省させて抱き締めとくから、お前はちゃんと寝てろ」
「人が真剣に話してるというのに、このろくでなしが」
「好きだよ。俺、お前がすごく好きなんだ」
依斗はジレーザを抱き竦め、耳元に小さな声で縋るように、だから無理はさせたくないと泣いているような声で呟く。
「馬鹿なのか」
けれどジレーザは短く冷たく言い返して、依斗の胸元を力なく叩く。
「痛えな」
「聖人の代わりがどれだけ居ようと、貴様の代わりなど居はしない。それとも私が、愛してると言葉にしなければ分からないのか、ヨリト」
「愛してるって、お前」
「そうだ。情けないことに、貴様に絆されて私は自分の想いに気付いてしまった。だから出来ることを、したいと思うことをするだけだ」
「ジレーザ」
「それに考えてもみろ。貴様が私以外で満足出来ると思うか?」
「ははっ。強気に出たな。でも確かにそうだろうな」
「そういうことだ。いつだって必ず貴様を正気に戻してみせる」
「心強いよ」
額を合わせて見つめ合うと、ありがとうと呟く依斗の声はジレーザの唇に奪われる。
雨粒が窓を叩き、吹き荒れる暴風がガタガタと窓を揺らす中、依斗とジレーザはお互いの想いを確かめ合うように、刹那的に、けれど情熱的にキスを貪る。
ピアリスと呼ばれる聖域は、常に外界からの攻撃に備えて特殊結界が張られているので、その外側に瘴気を蔓延させるための結界が張られたとしても、理論上内部に影響は出ない。
依斗がどこで力を振るうかも争点になるが、聖剣を使いこなすという点において、現状は圧倒的に不利な立場にある。
今のままでは、聖人としての力を聖剣に呑み込まれて魔力の枯渇を起こし意識さえも奪われて、これではどちらが使う立場なのか分からない。
たとえ瘴気を祓えたとしても、力を使うそばから自我を失うようでは、これ以上の攻撃に立ち向かうのは難しいだろう。
「考えごとか」
「いや、気持ち良過ぎて没頭してた」
「そうか。ならばそういうことにしといてやる」
「やだ、ジレちゃん。懐深いんだから」
「そうでなければ、貴様のようなヤツは手に余る」
おどける依斗の鼻に噛み付くと、ジレーザは一人で抱え込むなと、心の中を見透かしたように囁いてからキスをする。
依斗を受け入れてくれるジレーザのためにも、聖剣に使われる聖人で居てはいけない。
「お前はもちろん、俺自身のことも守るよ」
「ああ、そうしてくれ」
じゃれるようにそのままキスをして足を絡めて抱き合うと、依斗はジレーザを抱く腕に力を込めて、愛してると何度もキスの合間に囁く。
こんな風に心まで通わせる存在になるなんて、お互いに想像もしていなかった。
そのことを思うとあまりにも可笑しくて、依斗は込み上げる笑いを誤魔化しながら、ジレーザの首筋に唇を這わせる。
「楽しそうだな」
「お前にこんなことしてるのが不思議でね」
「考えたら負けだ」
「そうかもな」
10
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説



美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる
琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。
落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。
異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。
そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

聖女追放ラノベの馬鹿王子に転生しましたが…あれ、問題ないんじゃね?
越路遼介
ファンタジー
産婦人科医、後藤茂一(54)は“気功”を生来備えていた。その気功を活用し、彼は苦痛を少なくして出産を成功させる稀代の名医であったが心不全で死去、生まれ変わってみれば、そこは前世で読んだ『聖女追放』のラノベの世界!しかも、よりによって聖女にざまぁされる馬鹿王子に!せめて聖女断罪の前に転生しろよ!と叫びたい馬鹿王子レンドル。もう聖女を追放したあとの詰んだ状態からのスタートだった。
・全8話で無事に完結しました!『小説家になろう』にも掲載しています。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる