聖女召喚でなぜか呼び出された、もう30のお兄さん(自称)ですが、異世界で聖人することにしました。

藜-LAI-

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15.ココロもカラダも②

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「いじらしいことを。似合わんな」
「似合わないって、お前こそどうしたんだよ。ジレちゃんは永久凍土が溶けたのかな? ツンデレラやめたのかな?」
「なにを言ってるのか全く分からんが、揶揄われても改めるつもりはないぞ」
「なに。ちょっとマジでなんなの。可愛いこと言い過ぎ。やめて、チンコ痛いし」
 依斗はジレーザをギュッと抱き締めて、硬さを持ち始めた腰をわざとらしく擦り付けるように押し付ける。
 当然のことながら、間髪入れずに頭を叩かれて言葉を選べと唸るような低い声で怒られるが、ジレーザはまだ本調子ではないらしく、殴ってくる手に力が入ってない。
「痛いなあ、もう。悪かったってば。チンコも反省させて抱き締めとくから、お前はちゃんと寝てろ」
「人が真剣に話してるというのに、このろくでなしが」
「好きだよ。俺、お前がすごく好きなんだ」
 依斗はジレーザを抱き竦め、耳元に小さな声で縋るように、だから無理はさせたくないと泣いているような声で呟く。
「馬鹿なのか」
 けれどジレーザは短く冷たく言い返して、依斗の胸元を力なく叩く。
「痛えな」
「聖人の代わりがどれだけ居ようと、貴様の代わりなど居はしない。それとも私が、愛してると言葉にしなければ分からないのか、ヨリト」
「愛してるって、お前」
「そうだ。情けないことに、貴様に絆されて私は自分の想いに気付いてしまった。だから出来ることを、したいと思うことをするだけだ」
「ジレーザ」
「それに考えてもみろ。貴様が私以外で満足出来ると思うか?」
「ははっ。強気に出たな。でも確かにそうだろうな」
「そういうことだ。いつだって必ず貴様を正気に戻してみせる」
「心強いよ」
 額を合わせて見つめ合うと、ありがとうと呟く依斗の声はジレーザの唇に奪われる。
 雨粒が窓を叩き、吹き荒れる暴風がガタガタと窓を揺らす中、依斗とジレーザはお互いの想いを確かめ合うように、刹那的に、けれど情熱的にキスを貪る。
 ピアリスと呼ばれる聖域は、常に外界からの攻撃に備えて特殊結界が張られているので、その外側に瘴気を蔓延させるための結界が張られたとしても、理論上内部に影響は出ない。
 依斗がどこで力を振るうかも争点になるが、聖剣を使いこなすという点において、現状は圧倒的に不利な立場にある。
 今のままでは、聖人としての力を聖剣に呑み込まれて魔力の枯渇を起こし意識さえも奪われて、これではどちらが使う立場なのか分からない。
 たとえ瘴気を祓えたとしても、力を使うそばから自我を失うようでは、これ以上の攻撃に立ち向かうのは難しいだろう。
「考えごとか」
「いや、気持ち良過ぎて没頭してた」
「そうか。ならばそういうことにしといてやる」
「やだ、ジレちゃん。懐深いんだから」
「そうでなければ、貴様のようなヤツは手に余る」
 おどける依斗の鼻に噛み付くと、ジレーザは一人で抱え込むなと、心の中を見透かしたように囁いてからキスをする。
 依斗を受け入れてくれるジレーザのためにも、聖剣に使われる聖人で居てはいけない。
「お前はもちろん、俺自身のことも守るよ」
「ああ、そうしてくれ」
 じゃれるようにそのままキスをして足を絡めて抱き合うと、依斗はジレーザを抱く腕に力を込めて、愛してると何度もキスの合間に囁く。
 こんな風に心まで通わせる存在になるなんて、お互いに想像もしていなかった。
 そのことを思うとあまりにも可笑しくて、依斗は込み上げる笑いを誤魔化しながら、ジレーザの首筋に唇を這わせる。
「楽しそうだな」
「お前にこんなことしてるのが不思議でね」
「考えたら負けだ」
「そうかもな」
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