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14.瘴気に潜む魔物①
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互いの本当の気持ちを確認し合わないまま、瘴気を祓う日々は過ぎていき、虚しい思いを抱えて慰め合うように身体を重ねる夜はしばらく続く。
そうして気が付けば、依斗がサーチェスに召喚されてから三月、元の世界で言えば半年以上もの時間が経過していた。
「瘴気の頻度から言って、禁書に出てきた本当の魔物が、そろそろ出てきてもおかしくないんじゃないか」
ジレーザの部屋の応接用のソファーに座ると、エントリノ騎士団からの報告書の束を見つめ、ピアリス近郊どころか、サーチェス全域に広がりを見せる瘴気被害に依斗は眉を寄せる。
「そろそろ。そう、なのかも知れんな」
「ん? どうした。歯切れ悪いな」
暗い顔をするジレーザに視線を向けると、考え過ぎかも知れないがと断りを入れてから、気になることがあると言って依斗に地図を見せる。
「被害状況と発生時期を書き込んだ分布図だ」
「なるほど、これは」
一見するとなんの意味も持たず、無作為に発生したように見えていた瘴気だが、この地図を見るとそれが計算されたことだというのがよく分かる。
「結界を作るつもり、なのか」
「おそらくな。それが『魔物』とやらの目的だろうと考えてる」
「だとすると、瘴気発生の本来の目的、結界の機動装置みたいなものが跡地に残されてる可能性があるな」
「それに関しては、エントリノ騎士団が既に捜索にあたってる」
「でもさ、結界を張るってどういうことだろうな」
「ああ、そこが不可解だ」
ジレーザが表情を曇らせ、依斗は考え込むように眉を寄せる。
禁書に魔物らしき記述は記されていても、具体的なことは書かれていない。
あるいは書かれていても、見逃す程度のことしか情報として残されていなかった。
「調べ直すか」
「今からか」
「ヒントを見落としてるのかも知れないだろ」
依斗はジレーザを伴って早速禁書庫に移動し、聖人にまつわる禁書全てに目を通した。
「あ、ヤベ。メモ取った書類持ってくんの忘れた」
「ならこれを」
「ん?」
「清書して纏め直してある」
ジレーザが差し出した日記帳のような本を受け取ると、中を開いて感心したように凄いなと呟いて、依斗は白い歯を見せるように笑い掛ける。
「さすが最高神官サマ」
「煽てても、なにも出さんぞ」
「ジレちゃんはツンデレだもんね」
「つん……? それより、ここでその呼び方はやめろ」
「はいはい。ベッドの中でだけね」
「貴様、粛清されたいのか」
「またぁ、ツンツンしちゃって。そこも可愛いぞ、このヤロウ」
「……構うだけ無駄だな」
反抗的なジレーザの言葉をニヤニヤしながら聞き流すと、依斗は資料と本を見比べて、サーチェスに訪れる混沌、魔物の正体について紐解いていく。
聖人についての記述は酷く曖昧な部分があり、その出来事を事実として残そうとした者たちの、葛藤のようなものすら感じる点がある。
それが証拠に禁書にする必要がないほど、その功績を称える文面が書き込まれた二冊。
異世界から救世主として召喚したものの、聖女とは性質が異なり、聖剣という媒介を与えたことで、その能力以上の力を発揮させることは出来た。
それはもちろん、聖女以上とも取れる働きだったのだろうことは、先の二冊に記された内容から見て取れる。
だが彼が善人だったか、あるいは周りが拘束したのか、経過を甘く見ていた結果、魔力枯渇による性衝動の暴走が起こり、抑圧されていた分その反動は凄まじい結末をもたらした。
「暴走の回避は問題ないはずだ」
依斗は小さく呟いてから誤魔化すように咳払いすると、静かな禁書庫に再びページをめくるが響く。
暴走については、三冊目の禁書たらしめる書物でようやく語られているが、依斗の体感として聖剣はそれを使う度に聖人の魔力を増大させる一方で、著しくその魔力を奪う性質が高まる。
そうして気が付けば、依斗がサーチェスに召喚されてから三月、元の世界で言えば半年以上もの時間が経過していた。
「瘴気の頻度から言って、禁書に出てきた本当の魔物が、そろそろ出てきてもおかしくないんじゃないか」
ジレーザの部屋の応接用のソファーに座ると、エントリノ騎士団からの報告書の束を見つめ、ピアリス近郊どころか、サーチェス全域に広がりを見せる瘴気被害に依斗は眉を寄せる。
「そろそろ。そう、なのかも知れんな」
「ん? どうした。歯切れ悪いな」
暗い顔をするジレーザに視線を向けると、考え過ぎかも知れないがと断りを入れてから、気になることがあると言って依斗に地図を見せる。
「被害状況と発生時期を書き込んだ分布図だ」
「なるほど、これは」
一見するとなんの意味も持たず、無作為に発生したように見えていた瘴気だが、この地図を見るとそれが計算されたことだというのがよく分かる。
「結界を作るつもり、なのか」
「おそらくな。それが『魔物』とやらの目的だろうと考えてる」
「だとすると、瘴気発生の本来の目的、結界の機動装置みたいなものが跡地に残されてる可能性があるな」
「それに関しては、エントリノ騎士団が既に捜索にあたってる」
「でもさ、結界を張るってどういうことだろうな」
「ああ、そこが不可解だ」
ジレーザが表情を曇らせ、依斗は考え込むように眉を寄せる。
禁書に魔物らしき記述は記されていても、具体的なことは書かれていない。
あるいは書かれていても、見逃す程度のことしか情報として残されていなかった。
「調べ直すか」
「今からか」
「ヒントを見落としてるのかも知れないだろ」
依斗はジレーザを伴って早速禁書庫に移動し、聖人にまつわる禁書全てに目を通した。
「あ、ヤベ。メモ取った書類持ってくんの忘れた」
「ならこれを」
「ん?」
「清書して纏め直してある」
ジレーザが差し出した日記帳のような本を受け取ると、中を開いて感心したように凄いなと呟いて、依斗は白い歯を見せるように笑い掛ける。
「さすが最高神官サマ」
「煽てても、なにも出さんぞ」
「ジレちゃんはツンデレだもんね」
「つん……? それより、ここでその呼び方はやめろ」
「はいはい。ベッドの中でだけね」
「貴様、粛清されたいのか」
「またぁ、ツンツンしちゃって。そこも可愛いぞ、このヤロウ」
「……構うだけ無駄だな」
反抗的なジレーザの言葉をニヤニヤしながら聞き流すと、依斗は資料と本を見比べて、サーチェスに訪れる混沌、魔物の正体について紐解いていく。
聖人についての記述は酷く曖昧な部分があり、その出来事を事実として残そうとした者たちの、葛藤のようなものすら感じる点がある。
それが証拠に禁書にする必要がないほど、その功績を称える文面が書き込まれた二冊。
異世界から救世主として召喚したものの、聖女とは性質が異なり、聖剣という媒介を与えたことで、その能力以上の力を発揮させることは出来た。
それはもちろん、聖女以上とも取れる働きだったのだろうことは、先の二冊に記された内容から見て取れる。
だが彼が善人だったか、あるいは周りが拘束したのか、経過を甘く見ていた結果、魔力枯渇による性衝動の暴走が起こり、抑圧されていた分その反動は凄まじい結末をもたらした。
「暴走の回避は問題ないはずだ」
依斗は小さく呟いてから誤魔化すように咳払いすると、静かな禁書庫に再びページをめくるが響く。
暴走については、三冊目の禁書たらしめる書物でようやく語られているが、依斗の体感として聖剣はそれを使う度に聖人の魔力を増大させる一方で、著しくその魔力を奪う性質が高まる。
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