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7.聖人について②
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「呼ぶ、続く。聖者、閉じる、続く、拒否。これはどういう意味でしょうか」
「救世主の召喚は必要だけど、禁書に至った経緯を考えると、聖人自体の存在が封印されたとか、聖人の召喚は執り行うなって意味に取れそうだな」
依斗は前後の文面を拾い上げて紙にペンを走らせると、単語から文面を組み立ててそう答える。
「ですがヨリト様、この書物には聖人様が成された偉業が記されています。それなのになぜ、その聖人様の召喚を取りやめるよう記してあると思われますか」
「こっちの本の対価と関わってくるよな、やっぱり」
読み解き始めた本の不可解な単語の並びに目をやると、依斗は想像し得る仮定を紙に書き出していく。
聖人は力の制御に聖剣を有し、その力を行使するために、あるいは瘴気が生み出すなにかを滅ぼすその代償として対価である純潔の乙女を求める。
だからこそ、その被害を生まないために救世主は乙女である聖女を召喚し、聖人を召喚する状況を作らないように努める必要があるというところだろうか。
依斗はペンを指に挟んで弾くようにして紙を叩くと唸り声を上げ、聖人に関する書物が禁書に至ったのは、やはり聖人が聖剣を使うことで代償を負うのではないかという結論に至る。
「もっと読み込んで調べる必要はあるな。ところでジレーザ、厄災の兆候はどうなってるんだ」
「ヨリト様を召喚して以来、これといった報告は上がってきておりません」
「そっか。聖女召喚の場合だと、召喚してから瘴気を祓うまでにどれくらいの猶予があるんだ」
「毎回同じという訳では御座いませんが、早ければ召喚から五節からひと月ほどで、瘴気が溢れ始めたと記述が残っております。更に瘴気を完全に祓うまでは聖女様の力量によって期間が異なります」
「なるほどな。まだ猶予があるのか、あるいはこの本にその魔物の出現時期も残されてるのか。なんにせよ、まだまだ調べ足りないな」
「ええ。ですが本日はもう二十六時を回りました。お身体に差し支えてはいけませんので、ひとまずはここで区切られてはいかがでしょうか」
「そんな時間か」
これでまだ夕飯を食べる時間帯だと言うのだから、一日が三十時間のサーチェスの時間感覚にいまだ慣れないが、今日のところはさすがに目を酷使したからか、依斗は凝り固まった肩を回して解すと、小さく息を吐き出す。
「お疲れ様で御座いました。本日は飛躍的に解読が進みましたので、まだご納得には及ばないとは思いますが、大変喜ばしい結果です」
「喜ばしいと手放しで喜んでいいのかどうか。それにしても、古代語は厄介だよな」
「そうですね。ですがヨリト様がいらして、こちらの解読作業は予想を上回る早さで進んでおります」
「だったらいいんだけどな」
依斗は苦笑して何気なく手元の本のページをめくる。
別にその行動になんらかの意味があった訳ではなく、もしかしたら、本を閉じる前にもう少し調べたい気持ちが働いたということなのかも知れない。
「ん? ちょっと待って」
「如何なさいましたか」
依斗が開いたページには珍しく挿絵が描き込まれており、その絵面のインパクトと、周囲に警告を促すために書き込まれた文字の意味するところを把握して、なぜ禁書となったのか一瞬で理解出来てしまった。
「これは超展開過ぎるだろ」
依斗が頭を抱えると、本を覗き込んだジレーザは、そこに書かれた内容に唖然としている。
三冊目の禁書には、男が複数の女性と交わっている絵と、絶え間ない、恐怖、終わりがない、尽きない、と単語が続き、最後に性欲、支配と大きく記されていた。
ここまで来れば嫌でも分かる。
仮に瘴気が生み出すものを魔物をとして、それを滅ぼす聖人こそが、色欲の化け物になるのだと、本にはそう書かれているのだ。
「穢らわしい」
「救世主の召喚は必要だけど、禁書に至った経緯を考えると、聖人自体の存在が封印されたとか、聖人の召喚は執り行うなって意味に取れそうだな」
依斗は前後の文面を拾い上げて紙にペンを走らせると、単語から文面を組み立ててそう答える。
「ですがヨリト様、この書物には聖人様が成された偉業が記されています。それなのになぜ、その聖人様の召喚を取りやめるよう記してあると思われますか」
「こっちの本の対価と関わってくるよな、やっぱり」
読み解き始めた本の不可解な単語の並びに目をやると、依斗は想像し得る仮定を紙に書き出していく。
聖人は力の制御に聖剣を有し、その力を行使するために、あるいは瘴気が生み出すなにかを滅ぼすその代償として対価である純潔の乙女を求める。
だからこそ、その被害を生まないために救世主は乙女である聖女を召喚し、聖人を召喚する状況を作らないように努める必要があるというところだろうか。
依斗はペンを指に挟んで弾くようにして紙を叩くと唸り声を上げ、聖人に関する書物が禁書に至ったのは、やはり聖人が聖剣を使うことで代償を負うのではないかという結論に至る。
「もっと読み込んで調べる必要はあるな。ところでジレーザ、厄災の兆候はどうなってるんだ」
「ヨリト様を召喚して以来、これといった報告は上がってきておりません」
「そっか。聖女召喚の場合だと、召喚してから瘴気を祓うまでにどれくらいの猶予があるんだ」
「毎回同じという訳では御座いませんが、早ければ召喚から五節からひと月ほどで、瘴気が溢れ始めたと記述が残っております。更に瘴気を完全に祓うまでは聖女様の力量によって期間が異なります」
「なるほどな。まだ猶予があるのか、あるいはこの本にその魔物の出現時期も残されてるのか。なんにせよ、まだまだ調べ足りないな」
「ええ。ですが本日はもう二十六時を回りました。お身体に差し支えてはいけませんので、ひとまずはここで区切られてはいかがでしょうか」
「そんな時間か」
これでまだ夕飯を食べる時間帯だと言うのだから、一日が三十時間のサーチェスの時間感覚にいまだ慣れないが、今日のところはさすがに目を酷使したからか、依斗は凝り固まった肩を回して解すと、小さく息を吐き出す。
「お疲れ様で御座いました。本日は飛躍的に解読が進みましたので、まだご納得には及ばないとは思いますが、大変喜ばしい結果です」
「喜ばしいと手放しで喜んでいいのかどうか。それにしても、古代語は厄介だよな」
「そうですね。ですがヨリト様がいらして、こちらの解読作業は予想を上回る早さで進んでおります」
「だったらいいんだけどな」
依斗は苦笑して何気なく手元の本のページをめくる。
別にその行動になんらかの意味があった訳ではなく、もしかしたら、本を閉じる前にもう少し調べたい気持ちが働いたということなのかも知れない。
「ん? ちょっと待って」
「如何なさいましたか」
依斗が開いたページには珍しく挿絵が描き込まれており、その絵面のインパクトと、周囲に警告を促すために書き込まれた文字の意味するところを把握して、なぜ禁書となったのか一瞬で理解出来てしまった。
「これは超展開過ぎるだろ」
依斗が頭を抱えると、本を覗き込んだジレーザは、そこに書かれた内容に唖然としている。
三冊目の禁書には、男が複数の女性と交わっている絵と、絶え間ない、恐怖、終わりがない、尽きない、と単語が続き、最後に性欲、支配と大きく記されていた。
ここまで来れば嫌でも分かる。
仮に瘴気が生み出すものを魔物をとして、それを滅ぼす聖人こそが、色欲の化け物になるのだと、本にはそう書かれているのだ。
「穢らわしい」
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