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6.魔力のコツ②
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既に用意してあったティーポットからお茶を注ぐと、湯気の立つスッキリとした香りのハーブティーが依斗の前に置かれる。
「良い香りだな。それでどうなったんだ」
「はい。ヨリト様の禁書庫への立ち入りの件、少しばかり難航してお待たせしてしまいましたが、ようやく許可が下りました。もちろん禁書の閲覧許可も下りております」
「いつから取り掛かる予定?」
「すぐにでも利用は可能です。剣術指南は一日置きの予定となっておりますので、その空いた時間に作業をお手伝いいただきたく存じます」
「なるほど。当初懸念してた禁書庫にいられる時間制限とかはないのか」
「それに関しましては無制限とのことです。サーチェスの危機に関することですので、皇帝陛下から急ぎ取り掛かるようにとのお言葉を賜りました」
「まあ、そりゃそうだろうな」
ジレーザの説明では、周期的に起こる禍いの前触れを感知した時に召喚の儀を執り行う、そういう話だった。
そもそも聖女を呼び出すはずが、聖人である依斗が召喚されたことで、色々と問題が山積している状態なのは明らかだ。
「だったら魔力の勉強も一日置きに出来ないか」
「そうですね。ハリスからの報告でも、既に攻撃魔法を扱っておられると聞きましたからね」
「怒るなよ」
ジレーザから鋭い視線を向けられて、依斗は咄嗟にそう返しながらリンゴに似た果物をかじる。
「怒ってはおりません。しかしヨリト様は魔力の流れを掴みあぐねていると報告を受けております。そのような状態で魔法を扱うのは危険を伴います」
「それなんだよ。お前はいちいち体に取り込んだ酸素を把握してんのかって話」
「仰る理屈は分かりますが、魔力の流れは独特ですので、一度認識すれば把握は容易です」
ジレーザはそこで一旦言葉を区切ると、手を出してみてくださいと依斗の前に手を差し出した。
「ハリスは優秀ですが、ヨリト様は理論的な説明よりも体感なさった方が感知しやすいのかも知れません。他人の魔力が流れ込むことで、体内の魔力の流れが掴めると思います」
ジレーザにそう言われて、依斗はその手を掴んで意識を手先に集中させ、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
手のひらが一瞬熱くなると、そこから体中に微弱な電気が走るような不快感に近い感覚に襲われ、依斗は目を閉じたままで眉を寄せた。
「今お感じになってる不快感が、他人の魔力が入り込んだ感覚です。それに伴って魔力が体中を巡るイメージは掴めませんか」
「どうかな。お前の魔力の流れは感じるけど、自分の魔力の流れが掴めた確信はない」
「では意識してください。これと同様にヨリト様ご自身の魔力が体内を巡っております。そこに意識を集中してみてください」
ジレーザは魔力を送るのをやめると、いまだ集中して目を閉じる依斗の手を握りながら、その様子を観察するように静かに見つめる。
体の中を巡る不快感が薄れてくると、小川のせせらぎのような静かな流れを感じて依斗の手から力が抜けていく。
「お分かりになりましたでしょうか」
「なんとなく」
「血流や呼吸のように、確かに意識しなければ認識出来ないものに近いと思いますが、魔力はその中にあって異質なものですから、深く集中すれば認識することが可能です」
目を開けてくださいとジレーザに声を掛けられ、依斗はゆっくりと瞼を開ける。
目の前には珍しく微笑みを浮かべたジレーザが居て、握ったままの手の温かさも相まって、依斗は僅かに居心地の悪さを感じて手を振り払う。
「なるほどな。確かにハリスの説明より分かりやすかったわ」
「それは結構なことで御座います」
ジレーザは少し困惑しつつも、安堵したようにそう答えた。
「良い香りだな。それでどうなったんだ」
「はい。ヨリト様の禁書庫への立ち入りの件、少しばかり難航してお待たせしてしまいましたが、ようやく許可が下りました。もちろん禁書の閲覧許可も下りております」
「いつから取り掛かる予定?」
「すぐにでも利用は可能です。剣術指南は一日置きの予定となっておりますので、その空いた時間に作業をお手伝いいただきたく存じます」
「なるほど。当初懸念してた禁書庫にいられる時間制限とかはないのか」
「それに関しましては無制限とのことです。サーチェスの危機に関することですので、皇帝陛下から急ぎ取り掛かるようにとのお言葉を賜りました」
「まあ、そりゃそうだろうな」
ジレーザの説明では、周期的に起こる禍いの前触れを感知した時に召喚の儀を執り行う、そういう話だった。
そもそも聖女を呼び出すはずが、聖人である依斗が召喚されたことで、色々と問題が山積している状態なのは明らかだ。
「だったら魔力の勉強も一日置きに出来ないか」
「そうですね。ハリスからの報告でも、既に攻撃魔法を扱っておられると聞きましたからね」
「怒るなよ」
ジレーザから鋭い視線を向けられて、依斗は咄嗟にそう返しながらリンゴに似た果物をかじる。
「怒ってはおりません。しかしヨリト様は魔力の流れを掴みあぐねていると報告を受けております。そのような状態で魔法を扱うのは危険を伴います」
「それなんだよ。お前はいちいち体に取り込んだ酸素を把握してんのかって話」
「仰る理屈は分かりますが、魔力の流れは独特ですので、一度認識すれば把握は容易です」
ジレーザはそこで一旦言葉を区切ると、手を出してみてくださいと依斗の前に手を差し出した。
「ハリスは優秀ですが、ヨリト様は理論的な説明よりも体感なさった方が感知しやすいのかも知れません。他人の魔力が流れ込むことで、体内の魔力の流れが掴めると思います」
ジレーザにそう言われて、依斗はその手を掴んで意識を手先に集中させ、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
手のひらが一瞬熱くなると、そこから体中に微弱な電気が走るような不快感に近い感覚に襲われ、依斗は目を閉じたままで眉を寄せた。
「今お感じになってる不快感が、他人の魔力が入り込んだ感覚です。それに伴って魔力が体中を巡るイメージは掴めませんか」
「どうかな。お前の魔力の流れは感じるけど、自分の魔力の流れが掴めた確信はない」
「では意識してください。これと同様にヨリト様ご自身の魔力が体内を巡っております。そこに意識を集中してみてください」
ジレーザは魔力を送るのをやめると、いまだ集中して目を閉じる依斗の手を握りながら、その様子を観察するように静かに見つめる。
体の中を巡る不快感が薄れてくると、小川のせせらぎのような静かな流れを感じて依斗の手から力が抜けていく。
「お分かりになりましたでしょうか」
「なんとなく」
「血流や呼吸のように、確かに意識しなければ認識出来ないものに近いと思いますが、魔力はその中にあって異質なものですから、深く集中すれば認識することが可能です」
目を開けてくださいとジレーザに声を掛けられ、依斗はゆっくりと瞼を開ける。
目の前には珍しく微笑みを浮かべたジレーザが居て、握ったままの手の温かさも相まって、依斗は僅かに居心地の悪さを感じて手を振り払う。
「なるほどな。確かにハリスの説明より分かりやすかったわ」
「それは結構なことで御座います」
ジレーザは少し困惑しつつも、安堵したようにそう答えた。
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