私に・・・大切なモノをください。

瑞樹 透夜

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私が傷つけたあの人のハナシ2

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「もう・・・いいよね・・・」

私は学校を誰にも知られずに出て、家に帰った。

「痛いのには慣れてる・・・」

私は今日死ぬことにした。

外にしなかったのは響介のため。

飛び降りでもして私の体がぐちゃぐちゃになったら響介が悲しむから。

首を吊るのは思いついた。

けどやめた。

苦しいのは嫌いだから。

結局自分を刺すことにした。

痛いのには慣れているから。

放っておけば出血多量で死ぬ。

私は護身用にナイフを持っている。

というよりも持たされた。

だから自分を刺すための道具には困らない。

「大丈夫・・・響ちゃんが帰ってこなければちゃんと死ねる・・・」

スッ

「いっ・・・たくない・・・熱い・・・?」

(足りない。こんなんじゃ死ねない。もっと・・・もっと刺さなきゃ。)

ズッ

スッ

「もっと・・・もっと・・・もっ・・・あ・・れ?」

バタッ

「もう、限界か・・・」

ズッ

(やっぱり抜くときの感触は気持ち悪い。)

バタバタ

バンッ!

「篠!帰って・・・え?」

ドサッ

ちょうど響介が帰ってきて、私を見て動揺した。

「・・・し・・・の・・・?しのは・・・?ど・・・して・・・そんな・・・ごめんっ・・・ごめんなっ・・・お願いだから・・・お前まで居なくならないでくれ・・・蓮みたいに・・・ならないでくれっ・・・」

「きょ・・・ちゃん・・・?ちが・・・の・・・わたしが・・・じぶんで・・・えらんだ・・・」

「ダメだ・・・そんなこと許さない・・・篠葉ちゃんは・・・皆の分を生きなきゃ・・・」

響介はそう言い、私を抱き上げ病院へ向かった。

『皆の分を生きなきゃ』

私が昔響介に言われた言葉。

その言葉を言われた時痛くないはずの傷がとても痛んだ。

(私は皆のために生きなきゃいけなかったのに・・・なにやってるんだろう・・・)

私は響介がここまで動揺している理由が分かった。

(あぁ・・・そっか・・・お父さんたちみたいなんだ・・・)

響介が最後に見たお父さんたちの姿は血まみれだった。

だから私の姿が重なって見えるんだ。

「ごめ・・・なさっ・・・ごめん・・・なさいっ・・・」

悲しませないように頑張ってきたのに・・・結局私は・・・

「ゆるさない・・・ゆるさないよ・・・勝手に死ぬなんて・・・蓮みたいに・・・華恋さんみたいになるなんて・・・絶対に・・・」

その日から響介はもっと過保護になった。

学校も変えて、保健室登校にした。

勉強は保険医の人が教えてくれたり、以外にも教育免許を持っている響介が教えてくれた。

主に響介のおかげで勉強は誰よりも進んだ。

中学に上がるころには高校卒業レベルに進むぐらいには。

響介は私をたくさん、たくさん救ってくれた。

たくさん、たくさん愛してくれた。

だから私はたくさん努力した。

無条件に与えられる愛に応えるために。

無条件に手を差し伸べてくれるあの人の優しさに報いるために。

私も誰かを救うために。



-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
こんにちはー!

『私が傷つけたあの人のハナシ』はこれで終わりになります。

篠葉の過去の話はだいぶ重かったですねー。

次今の篠葉の話に戻ります。

いや、また響介視点の話を書いてみるのもいいかも知れません。

次も読んでくださいねー
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