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▶︎アン失踪事件
第19話 異世界へ(3)
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◇
「ルカ、にゃすけ……!」
二人の姿を見て、涙目になりながら顔を輝かせるオレ。
「な、な、なんだ⁉︎ 仲間か? くそ、余計な邪魔は……」
面食らっているおじさんに向かって、ルカは棒を持った腕を大きく振る。
「時間よ、止まれ!」
「……⁉︎」
「グギャッ」
するとおじさんと白いドラゴンは、ルカが発した金色のオーラに包まれて時を止めたように静止した。
その隙に、ルカとにゃすけがすぐさまオレの元へ駆けつける。
「リト、大丈夫?」
「う、うん、なんとか……。でも、あいつらは?」
「一時的にだけど時間を止めたよ。でも、いつ動き出すかはわからない」
「そっか……」
「ふぃー。おぬし、あんなハイカラな龍相手によく無事だったにゃ」
「へへ。なんか全身バッキバッキで全然動けないんだけどな……」
「ひどいケガ……。ちょっとまって」
ルカはそのまま、握りしめた杖をくるくると動かし、何かを念じている。
やがて杖の先がほわんと光ったかと思えば、きらきら光る粒子がオレの傷口に染み込んできて、嘘みたいに痛みがスウっと消えていった。
「お、おおお⁉︎ え? え?? なにこれ! 痛いのめっちゃ消えてるんですけど!」
「この杖……『強く念じれば叶う』って、にゃすけさんに聞いてたから。怪我を治して欲しいって念じてみたんだ」
「まじか」
「その説明だけでもう杖を使いこなすとはにゃ。さすが賢いメガネにゃ。心の清らかさが誰かさんとは大違いだにゃ」
「ちょ。オレの悪口はそこまでだ」
「悪口というか真実にゃ」
「くっそう。まあその通りなんだけどよー……って、今はそんなことより、さっきの盾みたいな魔法も、今あいつらを止めてる魔法も全部ルカのおかげだよな。まじでサンキュー」
「ううん。たまたまうまくいってるだけだよ」
「そんなことねーよ。魔法のこともだけどさ、その……」
「うん?」
「えと、来てくれてありがとう」
なんだか気恥ずかしくて、なかなか言えなかった言葉をようやく吐き出す。
ルカは一瞬きょとんとしたようだったけど、すぐにいつものあの優しい顔でふわりと笑った。
「来て当然でしょ。親友なんだから」
あまりにもさらりと言われてしまって、思わず言葉に詰まる。
嬉しいやら恥ずかしいやら。口をもごもごさせているオレをよそに、ルカはさらに続けた。
「まあ、最初は〝異世界〟とかなんのことだろうって、ちょっと意味がよくわからなかったけど、でも、リトや〝ふしぎ堂〟のことだから何があってもおかしくはないのかなって思って来てみたら、本当に異世界とか……びっくりしちゃった」
ルカはいつも、なんだかんだでオレのこと、そしてふしぎ堂の不思議を信じてくれる。
「だよな、そりゃビビるよな。オレもいまだにあんなドラゴン信じられねーもん」
「うん。本当に。……それで、星名さんは見つかったの?」
「あ、それが」
ルカの本音を知って呑気に浮かれている場合じゃなかった。
オレはすぐ近くにある風車を指して、オジョーの話をしようと思ったのだが。
「ぐギャアア」
「げっ」
急に目の前の白いドラゴンが、金縛りから解けた後のように大きく身震いした。
「……っぐ、な、なんだ今の……魔法か? おのれガキども……!」
まずい。ルカのかけた魔法が解けて、時が戻ったようだ。
息を吹き返したように動き始めたおじさんも、今まで以上に怖い顔でオレたちのことを睨みつけている。
「ゆっくり話してる暇はないみたい」
「だな。ルカ、悪いけどあのモンスター使いのおっさんの足止めできる?」
「わからないけどやってみる。リトは?」
「オレはあのでっかいドラゴンなんとかする!」
「だ、大丈夫なの?」
「やってみるしかないっしょ!」
いうが早いか、オレはじいちゃんのカバンから神商品〝ウチデノコヅチ〟を取り出すと、間髪入れずにゃすけを見た。
「ぶ、ぶにゃ……」
嫌な予感がする、と顔に書いてあったがその通りだ。
「お、おいまて。吾輩は箸より重い物を持ったことがないか弱き招き猫ぞ! おかしな真似はっ」
「にゃすけ、大きくなあれっ!」
「む、むおぉ」
にゃすけに向かってウチデノコヅチを一振りするオレ。
太ったにゃすけがさらにずもももも……と大きくなって、やがて白いドラゴンに匹敵するぐらい迫力のある巨大招き猫へと変貌を遂げた。
「ルカ、にゃすけ……!」
二人の姿を見て、涙目になりながら顔を輝かせるオレ。
「な、な、なんだ⁉︎ 仲間か? くそ、余計な邪魔は……」
面食らっているおじさんに向かって、ルカは棒を持った腕を大きく振る。
「時間よ、止まれ!」
「……⁉︎」
「グギャッ」
するとおじさんと白いドラゴンは、ルカが発した金色のオーラに包まれて時を止めたように静止した。
その隙に、ルカとにゃすけがすぐさまオレの元へ駆けつける。
「リト、大丈夫?」
「う、うん、なんとか……。でも、あいつらは?」
「一時的にだけど時間を止めたよ。でも、いつ動き出すかはわからない」
「そっか……」
「ふぃー。おぬし、あんなハイカラな龍相手によく無事だったにゃ」
「へへ。なんか全身バッキバッキで全然動けないんだけどな……」
「ひどいケガ……。ちょっとまって」
ルカはそのまま、握りしめた杖をくるくると動かし、何かを念じている。
やがて杖の先がほわんと光ったかと思えば、きらきら光る粒子がオレの傷口に染み込んできて、嘘みたいに痛みがスウっと消えていった。
「お、おおお⁉︎ え? え?? なにこれ! 痛いのめっちゃ消えてるんですけど!」
「この杖……『強く念じれば叶う』って、にゃすけさんに聞いてたから。怪我を治して欲しいって念じてみたんだ」
「まじか」
「その説明だけでもう杖を使いこなすとはにゃ。さすが賢いメガネにゃ。心の清らかさが誰かさんとは大違いだにゃ」
「ちょ。オレの悪口はそこまでだ」
「悪口というか真実にゃ」
「くっそう。まあその通りなんだけどよー……って、今はそんなことより、さっきの盾みたいな魔法も、今あいつらを止めてる魔法も全部ルカのおかげだよな。まじでサンキュー」
「ううん。たまたまうまくいってるだけだよ」
「そんなことねーよ。魔法のこともだけどさ、その……」
「うん?」
「えと、来てくれてありがとう」
なんだか気恥ずかしくて、なかなか言えなかった言葉をようやく吐き出す。
ルカは一瞬きょとんとしたようだったけど、すぐにいつものあの優しい顔でふわりと笑った。
「来て当然でしょ。親友なんだから」
あまりにもさらりと言われてしまって、思わず言葉に詰まる。
嬉しいやら恥ずかしいやら。口をもごもごさせているオレをよそに、ルカはさらに続けた。
「まあ、最初は〝異世界〟とかなんのことだろうって、ちょっと意味がよくわからなかったけど、でも、リトや〝ふしぎ堂〟のことだから何があってもおかしくはないのかなって思って来てみたら、本当に異世界とか……びっくりしちゃった」
ルカはいつも、なんだかんだでオレのこと、そしてふしぎ堂の不思議を信じてくれる。
「だよな、そりゃビビるよな。オレもいまだにあんなドラゴン信じられねーもん」
「うん。本当に。……それで、星名さんは見つかったの?」
「あ、それが」
ルカの本音を知って呑気に浮かれている場合じゃなかった。
オレはすぐ近くにある風車を指して、オジョーの話をしようと思ったのだが。
「ぐギャアア」
「げっ」
急に目の前の白いドラゴンが、金縛りから解けた後のように大きく身震いした。
「……っぐ、な、なんだ今の……魔法か? おのれガキども……!」
まずい。ルカのかけた魔法が解けて、時が戻ったようだ。
息を吹き返したように動き始めたおじさんも、今まで以上に怖い顔でオレたちのことを睨みつけている。
「ゆっくり話してる暇はないみたい」
「だな。ルカ、悪いけどあのモンスター使いのおっさんの足止めできる?」
「わからないけどやってみる。リトは?」
「オレはあのでっかいドラゴンなんとかする!」
「だ、大丈夫なの?」
「やってみるしかないっしょ!」
いうが早いか、オレはじいちゃんのカバンから神商品〝ウチデノコヅチ〟を取り出すと、間髪入れずにゃすけを見た。
「ぶ、ぶにゃ……」
嫌な予感がする、と顔に書いてあったがその通りだ。
「お、おいまて。吾輩は箸より重い物を持ったことがないか弱き招き猫ぞ! おかしな真似はっ」
「にゃすけ、大きくなあれっ!」
「む、むおぉ」
にゃすけに向かってウチデノコヅチを一振りするオレ。
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