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「ううぅぅぅ……、」

「え?どうしたの?!」


桜庭さんもお肉を食べると
途端に唸りだしたから
私もお肉を頬張りながら目を見開いた。


「ううぅぅ……」

「ちょっ、だいじょう、
「うしっ、」

「は?」

「牛だな、これ」


うっめーわ、って
目を瞑っておいしそうに口いっぱいにまた頬張った。


「・・・」


なんて独特な味の感想。



「ねぇ、これも食べたいっ」

「おう、いいよ」

「わーい!」

「俺これにしよーっと」


ノリにのった私たちは次から次へと注文して
気付けば目ん玉が飛び出すほどの金額に膨れ上がっていたけど
なんてことない顔して支払いを済ませた彼にまた驚いたりして。


「ご馳走さまでした」

「いいえ、これから家来るっしょ?」


車を走らせて当たり前のようにそう聞くから
静かに頷くと
それをチラッと横目で見た桜庭さんは
嬉しそうにまた車を走らせた。


「でも、一回家に寄ってもらっていいですか?」

「おう、ちゃんと勝負下着もってこいよ」

「……はい?」

「ちなみに俺は黒とかよりもピンクとか好、
「なんの話し?!?!///」


手は出さないはずじゃ?!って
反射的に助手席のドアの取ってに手をかけると、


「ばかおまっ、運転中に降りようとすんなっ」

「だって桜庭さんが変なこと言うからっ!」

「冗談だろ冗談、本気にすんな!」


反射的に私を引き止めようと掴まれた腕。
落ち着いたのを確認すると
そのまま片手運転で、その手を私の手のひらへと重ねた。


「………手…、」


その触れられた手を見つめながらそう呟くと
キュッ…、と優しく握りしめられた。


「また逃げられないよーに」

「……もう逃げませんって…」


ほんとかな~?ってチャラく運転するその横顔を見つめながら
手のひらの温もりを感じていた。




「やべぇな、眠くなってきた~」

「私も夕方まで寝てたのに眠い~」

「満腹だからだな」

「だなっ」


そんな呑気な話をしながらあっという間に家に着き
車のキーを指に引っ掛け、おっきなエントランスを抜けると


「あ、シロ。」


エレベーターの前で携帯を弄りながら立っていた彼が
桜庭さんのその声に振り返った。


「お、ミツ~」


やっほー、って緩く挨拶を交わしたあと
私に視線を寄越したから、小さく頭を下げた。


「……誰だっけ?」


どっかで見たことある気がする、って
じーっとお顔を近付けてきたから思わず後ずさると
後ろにいた桜庭さんにぶつかって受け止められた。


「俺のペット。」

「…は?」

「今日から……、いや、正式には昨日から
俺のペットになりました」


ぽむっ、と両手で後ろから私の肩を掴むと
ほら挨拶、って後ろから顔を覗かれて


「…あ、まいっていいます。
よろしくお願いします…」


もう一度ペコっと頭を下げると
思い出したようにぽんっと手を叩いた。


「あ!この前ミツの部屋から出てきた!」

「そうです、その節はお世話になりました」

「てか何?ペットって。
意味不明なんだけど」


怪訝な顔を寄越した”シロ”って呼ばれる人。
うん。
良かった、これが正常なリアクションだよ。


「こいつはシロ。
さっき言ってた一緒に会社やってる奴で、下の階に住んでるから」


シロさんの言葉を無視してそう私に説明すると
タイミング良く到着したエレベーター。


「ほら、とりあえず乗るぞ~」


そう言ってグイグイエレベーターに私を押し込むと
シロさんも続いて乗り込んだ。
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