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「嫌になった?ペットになるの」
ソファに素直に座り込んで
少し俯き気味の私をのぞき込むように首を傾げた。
ズカズカ部屋に入り込んで来たかと思えば
急に子犬みたいに可愛くなる。
作戦なのか無意識なのか分かんないけど
そんな目で見られたら強くも拒否れないし…。
「嫌になったというか…
冷静になって考えてみると、あまりにも普通じゃないことのような気がして……、」
「んー…、
じゃあ普通ってなんなの?」
「え?」
「普通なんて、その人によって違うだろ?
ちゃんと生きてる人が普通な人もいれば
おかしく生きてんのが普通な感覚な人だっているし」
”いい加減ちゃんとしなよ?”
桜庭さんのその言葉に
ちゃんとする、ってなんだろって
お酒で働かない頭で考えてた昨日をまた思い出した。
結局、その答えが見い出せなかったっけ…。
「俺んとこ来たら絶対幸せにするよ」
「・・・」
プロポーズみたいな言葉を平気で口にして、
「甘えてよ、俺に。」
おいで、と言わんばかりに両手を広げた。
「・・・」
駄目だ。
結局はお酒が入ってようがシラフだろうが
この人に引き寄せられてしまって
結果的に出す答えは、一つだった。
「………分かった。やってみる」
今度こそちゃんと交わした二度目の契約。
覚悟を決めた私に
目尻にシワを寄せながら笑って
膝を抱え込んでた私の横へと、そっと近づく。
「なかなか懐かないペットで苦労しそうだわ」
「……エサの質と、愛情次第ですよ?」
「ふはっ、わがままペット~」
躾が大変そうだな、って笑った桜庭さんと
至近距離で視線が重なって
数秒見つめ合うと、
また両手を広げたのを合図のように
胸の中に閉じ込められた。
「よろしくな」
「……うん、」
「そこは、”わんっ”だろ?」
「え?犬設定なの?」
「いや、猫のがいいかな?」
そんなのどっちでもいいけど
とりあえず……、
やっぱりこの温もりは
嫌いじゃないなって思っちゃう。
「あ、あの、そろそろ放してくれませんか…」
何分かの間ずっと抱き締められてて
居心地はいいけど、何となくまだ気まずくて
胸の中から顔を上げる。
「なんで?」
「お腹すいたし…?」
「あ、そっか。
肉食い行くんだった」
「うん!うーんとおいしいお肉ですよね」
「しょうがねぇなぁ~」
んしょ、って一気に解放されて
行く気満々に立ち上がった。
それに続くように私も立ち上がって
軽く身支度を整えながら
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
「ん?なに?」
気になってたことを聞いてみた。
これを聞いておかないと
なんだかちょっと怖くて。
「…なんのお仕事されてるんですか?」
あんなおっきい部屋に住んでるくらいだから
相当なお金持ちなのは間違いない。
でもその職業がやばいやつだったら
さすがに無理だ。怖い。
「社長。」
「……へ?」
「俺と、もう一人とで立ち上げたイベント会社の社長やってる。」
まさかのその発言に
リップを塗っていた手を止めて、後ろにいた桜庭さんをガン見。
「……はっ、?
しゃ、社長…?会社を、た、立ち上げた…?」
「そう。
七年前に立ち上げて、意外にうまくいっちゃってさ」
「……へぇ…、」
「あ、今日の朝会っただろ?
あいつシロって言うんだけどさ、あいつと二人で会社仕切ってんだよ」
「シロ…?」
あの今朝のエレベーターの場所を教えてくれた人か。
もはやあの時は動揺してたし
記憶も薄れててぽやーんとしか思い出せないけど
スラッとした人だった気がする。
「だからまぁ金のことは心配すんな」
「……え、う、うん、」
いや、別にお金の心配してるとかじゃないけど
ほんとにこの人といると
予想のはるか上をいく出来事ばかり起きる。
ソファに素直に座り込んで
少し俯き気味の私をのぞき込むように首を傾げた。
ズカズカ部屋に入り込んで来たかと思えば
急に子犬みたいに可愛くなる。
作戦なのか無意識なのか分かんないけど
そんな目で見られたら強くも拒否れないし…。
「嫌になったというか…
冷静になって考えてみると、あまりにも普通じゃないことのような気がして……、」
「んー…、
じゃあ普通ってなんなの?」
「え?」
「普通なんて、その人によって違うだろ?
ちゃんと生きてる人が普通な人もいれば
おかしく生きてんのが普通な感覚な人だっているし」
”いい加減ちゃんとしなよ?”
桜庭さんのその言葉に
ちゃんとする、ってなんだろって
お酒で働かない頭で考えてた昨日をまた思い出した。
結局、その答えが見い出せなかったっけ…。
「俺んとこ来たら絶対幸せにするよ」
「・・・」
プロポーズみたいな言葉を平気で口にして、
「甘えてよ、俺に。」
おいで、と言わんばかりに両手を広げた。
「・・・」
駄目だ。
結局はお酒が入ってようがシラフだろうが
この人に引き寄せられてしまって
結果的に出す答えは、一つだった。
「………分かった。やってみる」
今度こそちゃんと交わした二度目の契約。
覚悟を決めた私に
目尻にシワを寄せながら笑って
膝を抱え込んでた私の横へと、そっと近づく。
「なかなか懐かないペットで苦労しそうだわ」
「……エサの質と、愛情次第ですよ?」
「ふはっ、わがままペット~」
躾が大変そうだな、って笑った桜庭さんと
至近距離で視線が重なって
数秒見つめ合うと、
また両手を広げたのを合図のように
胸の中に閉じ込められた。
「よろしくな」
「……うん、」
「そこは、”わんっ”だろ?」
「え?犬設定なの?」
「いや、猫のがいいかな?」
そんなのどっちでもいいけど
とりあえず……、
やっぱりこの温もりは
嫌いじゃないなって思っちゃう。
「あ、あの、そろそろ放してくれませんか…」
何分かの間ずっと抱き締められてて
居心地はいいけど、何となくまだ気まずくて
胸の中から顔を上げる。
「なんで?」
「お腹すいたし…?」
「あ、そっか。
肉食い行くんだった」
「うん!うーんとおいしいお肉ですよね」
「しょうがねぇなぁ~」
んしょ、って一気に解放されて
行く気満々に立ち上がった。
それに続くように私も立ち上がって
軽く身支度を整えながら
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
「ん?なに?」
気になってたことを聞いてみた。
これを聞いておかないと
なんだかちょっと怖くて。
「…なんのお仕事されてるんですか?」
あんなおっきい部屋に住んでるくらいだから
相当なお金持ちなのは間違いない。
でもその職業がやばいやつだったら
さすがに無理だ。怖い。
「社長。」
「……へ?」
「俺と、もう一人とで立ち上げたイベント会社の社長やってる。」
まさかのその発言に
リップを塗っていた手を止めて、後ろにいた桜庭さんをガン見。
「……はっ、?
しゃ、社長…?会社を、た、立ち上げた…?」
「そう。
七年前に立ち上げて、意外にうまくいっちゃってさ」
「……へぇ…、」
「あ、今日の朝会っただろ?
あいつシロって言うんだけどさ、あいつと二人で会社仕切ってんだよ」
「シロ…?」
あの今朝のエレベーターの場所を教えてくれた人か。
もはやあの時は動揺してたし
記憶も薄れててぽやーんとしか思い出せないけど
スラッとした人だった気がする。
「だからまぁ金のことは心配すんな」
「……え、う、うん、」
いや、別にお金の心配してるとかじゃないけど
ほんとにこの人といると
予想のはるか上をいく出来事ばかり起きる。
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