35 / 58
三章 魔法学園 一年生
✿ 第30話:夢の中に在る世界
しおりを挟む※またアレクシア視点に戻ります。
朝食の後、再び寝室へ呼ばれた。
何か用があるのなら、どうせ二人きりだしその場で言ってくれてもいいのにと思った。エリオンの真意が分からず、私は頭の中で首を傾げる。
エリオンは開け放たれていた窓を締めると、カーテンもぴっちり閉じた。明るい日の光が差し込んでいた寝室が一気に薄暗いものになる。彼がこれから何をするつもりなのか、察しの悪い私でも察してしまった。
今日、エリオンは休みだ。朝からそういうことをしようと思えば出来る。今日は業者も来ない日だ。
胸の奥がどくんと跳ねるが、嫌な気持ちではない。それでも。ベッドに薔薇の花びらを散らせとまでは言わないが、もう少しロマンチックな雰囲気で誘ってほしいと思った。しかし、相手は何かと不器用なところのあるエリオンである。こちらの恐怖心を煽るような誘い方しか、彼はできないのかもしれない。心の中で苦笑いした。
──今の私は、今までの私じゃないわ。
男女のことを何も知らなかった私は、この数ヶ月間、程々に経験を積んでいるというヘレナから、閨の事を色々教わっていた。もう受け身でばかりいる私ではない。
ぎゅっと拳をにぎり、怖気付きそうになる心を奮い立たせる。ここで怯んだらまたレス状態が続いてしまう。そんなのは嫌だ。
私は振り返ったエリオンに力強くこう言い放った。
「アレク……」
「エリオン様、ズボンを脱がせてもいいでしょうか!」
私の言葉に、エリオンは凍りついたようにピシリと固まる。そして、絨毯を引き摺るように一歩二歩後ずさると、声を震わせた。
「ず、ズボン……? なぜ?」
「エリオン様の陽根を舐めるためです」
エリオンは「ひっ」と小さく悲鳴を漏らした。その翡翠の瞳は、信じられないと言わんばかりに見開かれている。
──やっぱり。
エリオンの反応を見て確信した。枢機院で働きはじめた彼は精神疲労のせいで不能気味になっていたのだろう。
爺専のヘレナは独り者の枢機官数名と付き合った事があるらしいが、その誰もが雄を直接刺激しないと勃ちあがらない状態であったらしい。
枢機院はこの国の中枢だ。選りすぐりのエリートが集まる苛烈な競争社会。派閥争いが絶えずあり、皆が皆、精神的に疲れていた。
ヘレナは言った。エリオンは精神疲労が原因で、性的に不能気味だから私と交われないのだろうと。
ヘレナ曰く、軽度の勃起障害ぐらいなら、こちらが口や手で刺激してやればなんとかなるものらしい。私はヘレナに聞いた男を悦ばせるコツをメモし、こっそり毎日読んでいたのだ。
「……あら?」
固まっているエリオンの目の前に膝をつくと、すでに彼の股間には布地をくっと押し上げるものがあった。エリオンは今、タイトなズボンを履いているからか、肉棒の形がくっきり浮き出ている。ズボンの上から、股間に触れるとそこはじんわり温かかった。
頭上から、動揺しきったエリオンの声が降ってくる。
「そ、そんなところ……! さっ、触ってはダメだ……!」
「え? どうしてですか? これから交合をするのでしょう?」
「えっ、それはその」
「わざわざ寝室に呼んで、カーテンも閉めて。私と閨のことをするためですよね?」
少々あけすけすぎるが、ここで周りくどい言い方をするのもまどろっこしい。私の問いに、エリオンは喉を鳴らすと、顔をこれでもかと赤らめて頷いた。
「では、失礼しますね」
私はエリオンのベルトに手をかけた。私には少し歳の離れた弟がいて、小さな頃は着替えを手伝ったこともある。実は人の脱ぎ着を手伝うのは慣れていた。あっさりベルトを外し、ズボンの留め具に手をかける。すでにエリオンの雄はがちがちに勃ちあがっていて非常に窮屈そうだった。早くここから出してあげなくては。頭上からエリオンの浅い息遣いが聞こえてくる。
なんとかボタンを外し、ズボンをずり下げる頃には、エリオンの下着は先走りの液で濡れていた。
──……不能じゃないのかしら?
むしろこの状況は健康すぎるぐらいだろう。
エリオンは脱がされるだけで、これだけ興奮できているのだから。
「アレクシア……。俺のことが気持ち悪いんじゃ無いのか?」
切羽詰まったようなエリオンの言葉。私は数回瞬きした。
「どうしてですか? 私はあなたのこと、好きですけど?」
好きでなきゃ、さすがに復縁は出来ない。それにこの三ヶ月の間に私から閨の誘いをしたこともある。気持ち悪いと思っていたら、そもそも一緒に暮せない。
「す、すき……?」
「はい! 大好きです!」
またエリオンはぴしりと固まった。その隙に下着を脱がせる。ぶるんと勢いよく出てきた彼の雄は天を仰ぎ、亀の頭のような先が張り出している。約一年半ぶりに目にした肉棒。彼に襲われた事自体はあまり良い思い出ではないが、コレには随分気持ちよくして貰った。
──どうしよう……。
ヘレナからは、柔らかい雄をなんとか奮い勃たせる方法は教わったが、すでに目の前にあるものは臨戦態勢だ。でもまあ、勃ちあがっていても触れば気持ちよく感じて貰えるかもしれない。そう思い、手を伸ばそうとしたら。
逆にエリオンから手首を掴まれてしまった。
「エリオン様?」
「君に触らせている余裕がない」
「えっ、え」
腕を引っ張られると、そのままベッドに押し倒された。視界がぐるりと回る。腰や背に手を回されると、ドレスを固定していた紐をしゅるんと解かれる。襲うように着ていたものを乱暴に剥がされ、私は慌てた。
「ドレスが皺になります!」
「また買ってやる」
性急な手つきで剥き出しになった乳房を握りこまれ、もう片方の手で顎を上向かされた。抵抗する間もなく、唇を重ねられ、口内に滑る舌をねじ込まれた。
こんなに切羽詰まるまで我慢するのなら、私が誘った時に普通に抱いていればいいのに、エリオンはどうしてもラブラブな雰囲気で楽しい交接が出来ない人らしい。そして襲われている私も、この状況を少し悦んでしまっている。
──割れ鍋に綴蓋ね……。
また心の中で苦笑いしながら、エリオンの舌に自分の舌を絡めた。
朝食の後、再び寝室へ呼ばれた。
何か用があるのなら、どうせ二人きりだしその場で言ってくれてもいいのにと思った。エリオンの真意が分からず、私は頭の中で首を傾げる。
エリオンは開け放たれていた窓を締めると、カーテンもぴっちり閉じた。明るい日の光が差し込んでいた寝室が一気に薄暗いものになる。彼がこれから何をするつもりなのか、察しの悪い私でも察してしまった。
今日、エリオンは休みだ。朝からそういうことをしようと思えば出来る。今日は業者も来ない日だ。
胸の奥がどくんと跳ねるが、嫌な気持ちではない。それでも。ベッドに薔薇の花びらを散らせとまでは言わないが、もう少しロマンチックな雰囲気で誘ってほしいと思った。しかし、相手は何かと不器用なところのあるエリオンである。こちらの恐怖心を煽るような誘い方しか、彼はできないのかもしれない。心の中で苦笑いした。
──今の私は、今までの私じゃないわ。
男女のことを何も知らなかった私は、この数ヶ月間、程々に経験を積んでいるというヘレナから、閨の事を色々教わっていた。もう受け身でばかりいる私ではない。
ぎゅっと拳をにぎり、怖気付きそうになる心を奮い立たせる。ここで怯んだらまたレス状態が続いてしまう。そんなのは嫌だ。
私は振り返ったエリオンに力強くこう言い放った。
「アレク……」
「エリオン様、ズボンを脱がせてもいいでしょうか!」
私の言葉に、エリオンは凍りついたようにピシリと固まる。そして、絨毯を引き摺るように一歩二歩後ずさると、声を震わせた。
「ず、ズボン……? なぜ?」
「エリオン様の陽根を舐めるためです」
エリオンは「ひっ」と小さく悲鳴を漏らした。その翡翠の瞳は、信じられないと言わんばかりに見開かれている。
──やっぱり。
エリオンの反応を見て確信した。枢機院で働きはじめた彼は精神疲労のせいで不能気味になっていたのだろう。
爺専のヘレナは独り者の枢機官数名と付き合った事があるらしいが、その誰もが雄を直接刺激しないと勃ちあがらない状態であったらしい。
枢機院はこの国の中枢だ。選りすぐりのエリートが集まる苛烈な競争社会。派閥争いが絶えずあり、皆が皆、精神的に疲れていた。
ヘレナは言った。エリオンは精神疲労が原因で、性的に不能気味だから私と交われないのだろうと。
ヘレナ曰く、軽度の勃起障害ぐらいなら、こちらが口や手で刺激してやればなんとかなるものらしい。私はヘレナに聞いた男を悦ばせるコツをメモし、こっそり毎日読んでいたのだ。
「……あら?」
固まっているエリオンの目の前に膝をつくと、すでに彼の股間には布地をくっと押し上げるものがあった。エリオンは今、タイトなズボンを履いているからか、肉棒の形がくっきり浮き出ている。ズボンの上から、股間に触れるとそこはじんわり温かかった。
頭上から、動揺しきったエリオンの声が降ってくる。
「そ、そんなところ……! さっ、触ってはダメだ……!」
「え? どうしてですか? これから交合をするのでしょう?」
「えっ、それはその」
「わざわざ寝室に呼んで、カーテンも閉めて。私と閨のことをするためですよね?」
少々あけすけすぎるが、ここで周りくどい言い方をするのもまどろっこしい。私の問いに、エリオンは喉を鳴らすと、顔をこれでもかと赤らめて頷いた。
「では、失礼しますね」
私はエリオンのベルトに手をかけた。私には少し歳の離れた弟がいて、小さな頃は着替えを手伝ったこともある。実は人の脱ぎ着を手伝うのは慣れていた。あっさりベルトを外し、ズボンの留め具に手をかける。すでにエリオンの雄はがちがちに勃ちあがっていて非常に窮屈そうだった。早くここから出してあげなくては。頭上からエリオンの浅い息遣いが聞こえてくる。
なんとかボタンを外し、ズボンをずり下げる頃には、エリオンの下着は先走りの液で濡れていた。
──……不能じゃないのかしら?
むしろこの状況は健康すぎるぐらいだろう。
エリオンは脱がされるだけで、これだけ興奮できているのだから。
「アレクシア……。俺のことが気持ち悪いんじゃ無いのか?」
切羽詰まったようなエリオンの言葉。私は数回瞬きした。
「どうしてですか? 私はあなたのこと、好きですけど?」
好きでなきゃ、さすがに復縁は出来ない。それにこの三ヶ月の間に私から閨の誘いをしたこともある。気持ち悪いと思っていたら、そもそも一緒に暮せない。
「す、すき……?」
「はい! 大好きです!」
またエリオンはぴしりと固まった。その隙に下着を脱がせる。ぶるんと勢いよく出てきた彼の雄は天を仰ぎ、亀の頭のような先が張り出している。約一年半ぶりに目にした肉棒。彼に襲われた事自体はあまり良い思い出ではないが、コレには随分気持ちよくして貰った。
──どうしよう……。
ヘレナからは、柔らかい雄をなんとか奮い勃たせる方法は教わったが、すでに目の前にあるものは臨戦態勢だ。でもまあ、勃ちあがっていても触れば気持ちよく感じて貰えるかもしれない。そう思い、手を伸ばそうとしたら。
逆にエリオンから手首を掴まれてしまった。
「エリオン様?」
「君に触らせている余裕がない」
「えっ、え」
腕を引っ張られると、そのままベッドに押し倒された。視界がぐるりと回る。腰や背に手を回されると、ドレスを固定していた紐をしゅるんと解かれる。襲うように着ていたものを乱暴に剥がされ、私は慌てた。
「ドレスが皺になります!」
「また買ってやる」
性急な手つきで剥き出しになった乳房を握りこまれ、もう片方の手で顎を上向かされた。抵抗する間もなく、唇を重ねられ、口内に滑る舌をねじ込まれた。
こんなに切羽詰まるまで我慢するのなら、私が誘った時に普通に抱いていればいいのに、エリオンはどうしてもラブラブな雰囲気で楽しい交接が出来ない人らしい。そして襲われている私も、この状況を少し悦んでしまっている。
──割れ鍋に綴蓋ね……。
また心の中で苦笑いしながら、エリオンの舌に自分の舌を絡めた。
9
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。
七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。
妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる