魔法使いの相棒契約

たるとたたん

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二章 相棒契約

✤ 第5話:目に刺さる白

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「おーい春風さーん!もう朝だよー?」
「ぇ……嘘だぁ、まだ真っ暗だし……」
「それは、思い切り布団を被ってるからだよっ!」


 
 私を優しく包み込んでいたフワフワの布団を思い切り剥ぎ取られ、視界は突然真っ白に染まる。

 私はその眩しさから、まるで目が潰れてしまったかの様に顔を手で抑え、視界からこの刺さるような白色を消そうとした。
 しかしその効果は無く、ツンツンと白い光達が瞼を刺してくる。私は諦めて、固く閉じられた瞼をゆっくりと開いた。



「春風さんって朝強そうなのに、意外と弱いの?」
「いつもは強いんだけど、旅行とか慣れない環境に行くと、最初がダメなんだよね~……」
「あー、分かるなぁ。確か、人間世界で暮らしてたんでしょ?ここに居るのも不思議な感じなんじゃない?」
「う、うん!よく分かったね!」
「えへへ。何となく~」



 彼女は少し笑いながら、剥ぎ取った布団を私の体にふわっと戻した。そしてワイシャツとスカートだけを身にまとっていた首元に、ネクタイをスルスルと通して行く。何だか、昨日部屋に入った時と同じような状況だ。

 私は暫くその様子をぼーっと眺めていたけれど、もういい加減ベッドから起きなければならない。
 このまま入学2日目から遅刻する訳には行かないんだ。それが親に知られたら、昨日頑張って回避したのにカミナリ様が落っこちて来るからね!

 未だに「まだ閉じていたいよ~」と泣き叫ぶ瞼を静かに擦りながら、口から出てくる欠伸と同時にぐーっと真上に背伸びをした。
 




 昨日は入学式の後、そのまま寮に帰らされた。初日で授業も無いので、荷物の整理などをする時間を用意されていたからだ。

 帰る途中やお風呂、夕食の時にも、案の定色々な人に声をかけられた。あまりにもグイグイ話しかけられるもんだから、流石に体がぐったりしたのを覚えている。
 やれ「聖女様は~」だの何だの、私の名前は「春風菜乃花」ですって話が聞こえてないのかな?ちゃんと口にしているのに……。
 その中で私の名前を呼んでくれたのはほんの数人程度なんて、全くひどい話だよね。

 
 でも、これから9年間を共にする仲間なのは事実。先輩や同級生にもせっかく出会ったのだから、仲良くなって損は無い……と思った私は、その人たちと多くの言葉を交わした。
 顔と名前も、何となくは覚えられたと思う。
 
 でも、一番会話をしたかった彼女花柳さんとは、入学式以降一度も会うことは出来なかった。


 駅でののお礼もちゃんとしたいし、闇魔法の事も聞いてみたいし、なんで私が君と関わったら不幸になるの?って、聞きたかったのになぁ……話したい事はこんなにあるのに、話す機会は全然無いんだ。
 でも、まだ入学式の次の日だし、学園生活は9年間もある。だから絶対話せるよね!


 私がこんなに誰かと話したいって思うなんて、もうずっとなかった気がする。聖女様~って言ってくる人とは、もう話さなくても良いやだなんて、冷めた感想を持ってるのに。
 どうしてこんなに、あの子のことが気になるんだろう。自分でも、よく分からない。
 



「ねぇ、良かったら一緒に朝ごはん行かない?」
「え、いいの?」
「うん!むしろ私が一緒に行きたいから!」
「やった、嬉しいなぁ」



 先に着替え終わった四葉さんが、私に笑いかけながら話す。今の所、寮やクラスメイトの中で一番関わって行く相手は恐らく彼女だ。この調子だと、今後行動を共にする事も多いかもしれない?。

 私に対する彼女の接し方は、とても気楽に感じられる物だった。他の人の様にズカズカと踏み込まれるよりも、何倍も楽に思える。何より彼女は『聖女』というレッテルを貼った態度で接してこない。私にとって、それが何よりも過ごしやすい環境だった。

 
 制服に着替え終えた私は、必要な物やスマホなどの荷物をカバンに詰め込む。私の準備が終わったのを確認すると「じゃあ行こうか!」と言って、彼女は部屋の扉を開ける。
 私はついて行くようにして、その扉を潜った。





 *





 白寮と黒寮の間には寮同士を隔てるように大きい建物がある。中には学園の人達が使用する大食堂があって、みんな好きな所で食事が取れるみたい。
 特に決まってる訳では無いけど、大体は高校生が1番上・中学生は真ん中・小学生は1番下の階を使ってる人が多いらしい……とは言っても、強制では無い様子だった。

 食堂スペースだけで3階分有るの!?なんて思ったけど、9学年分の生徒に先生まで居るのだから、納得せざるを得ない広さだ。


 大食堂に入ると、そこは既に人でごった返していた。中にいる人々が、それぞれ目の前に置かれた食事に手をつけている。ここにはご飯を作る担当の人もいるから、その人たちが大食堂のご飯を作ってくれているのだ。

 多分、私の通っていた小学校で言う〝給食の調理員さん〟と同じ感じだと思う。この人数分を作るのは大変そうだけど……ご飯を食べるのは大好きだから、朝から手作りを食べられるのはすっごくありがたい!



 私は四葉さんと一緒にカウンターへ向かい、今日の朝ごはんを取りに向かう。メニュー表に書かれているのは、洋食っぽい内容だ。全部美味しそうで、早く食べたくなってしまう。



 横を見ると、カウンターにはどこかのお店の商品が並んでいた。どうやらココは、お金を払って別で購入できるらしい。お小遣いを持ってきて、今度なにか買ってみようかな。

 そこには色々な商品が置いてある。気になってつい眺めていると、端っこには沢山のパンがズラっと置かれていた。フワフワな見た目と色とりどりの惣菜パンはとても美味しそうで__



「あれ?このパン……」



 私はその中に、なんとなく見覚えのあるパンを見つけた。良く目を凝らして見てみると、それは昨日の入学式で優しい女性がくれたパンにそっくりだったのだ。



「春風さん、これ知ってるの?」
「うん!昨日駅に居た時、優しい店員さんがこのパンをくれたんだ。入学祝いだよ~って……」



 そう、私が昨日駅でスマホを無くしたことに気が付く直前まで夢中になって頬張っていたあのパン。中はふわもちで、外はカリカリ……あぁ、その味や食感を思い出すだけで、なんだか幸せになって来る。
 あんな美味しそうな匂いを駅だけじゃなく、学校でも浴びれるなんて……っ!

 昨日食べたパンに思いを馳せていた時、ふとあの女性が放っていた言葉が私の頭の中をよぎった。



「そういえば、その店員さんは今年に孫が入学するって言ってた様な……」
「うん、そうだよ!だってそれ、私の事だから」
「えぇっ!?」



 私は思わず、大きく目を見開きながら彼女を見つめた。そういえば、あのパン屋の名前は……。




「……わぁ、ホントだ。同じ名前だ、お店の看板と」
「うん!あそこ、おじいちゃんとおばあちゃんが昔始めたお店なんだ。今後とも、どうぞ“YOTSUBAPAN”よつばパンをご贔屓に~!」



 そう、あのパン屋さんの名前は“YOTSUBAPAN”だ。言われてみれば同じ“四葉”だけど、ローマ字だし全く気にしていなかった。まさかあの店員さんが、四葉さんのおばあちゃんだったなんて……世間はなんて狭いのだろう。

 恐らく、今後の学生生活を経てこのパン屋さんには一生お世話になってしまうのだろうな……なんて、私は漠然とした確信を得ていた。だって、めっちゃ美味しいもん。
 折角だからこのままパンを購入したいものの、今お小遣いは寮の部屋にある。私は大人しく、無料の食堂メニューを食べる事にした。



「いただきまあす!」



 食堂のメニューは健康的で、それでいてとても美味しい。食べることが好きな私は、まるで食べることに特化したロボットのようにパクパクと口に食材を運ぶ。

 お父さんのご飯も大好きだったけど、ここのご飯も大好きになりそう。でも、学校の給食とは違うから、ちょっと恋しいな。
 大食堂があるんだから、自分の教室でご飯を食べる機会なんて、もう中々ないんだろうな。



「ん~~~っおいひぃ……はぁ~生き返る……目が覚める……」
「学園のご飯て、ほんと美味しいよね」
「うん!パパのご飯も好きだったけど、ここのご飯もめっちゃ美味しい!」



 また誰かに話しかけられるのかな……何てちょっと思ってたけど、昨日も今日もご飯を食べてる時は、皆見てくるだけみたい。四葉さんとずっと話しながら食べているからなのか、私に声をかける人は居なかった。

 2人で笑いながら話していると、食堂内が先程よりザワザワし始めているのを感じた。何だろうかと、ご飯を食べながら原因を探っている。すると、四葉さんの言葉で原因は直ぐに分かった。



「あ…………花柳さんたちだ」
「えっ」



 四葉さんの見てる方へ視線を向けると、そこには昨日のクラス分け時に一緒に居た5人組が、食堂に入っていった。中にはもちろん、クラス分けの時に話しかけてくれたひかる陽太ようたも居る。


 カウンターの横の席に座っていた私と四葉さんは、段々近付いてくる5人をぼけ~っと眺めていた。
 しかし私たち、カウンターと一番距離が近い席に居る。だから近すぎて、小さめの声で喋っていても何となく会話が聞こえてしまう。これは盗み聞きではなく、ただ聞こえてきてるだけだ。


 
「私、やっぱり1人で食べる。私とは、不用意に一緒に居ない方がいいと思うし」
「えぇ~、私は皆で食べたいな~?」
「そうだよ!私たちは同じクラスだから良いじゃん、ケチっ!」
「なっ……ケチって…………」



 花柳さんと同じ、黒いブレザーに黄緑色のネクタイをし️ている女の子2人は、口を揃えて彼女の意見を反対した。その反応に、彼女は表情を変えずとも、悔しい様な雰囲気を出している。

 でも、友達と一緒に来たのに、何で1人で食べたいんだろう?私はどっちでも良い派だけど……一緒に食べたくて来たんじゃないのかな?



「……じゃあ、2人輝・陽太は別で食べ」
「えぇっずるいぞ咲来!すず鈴音とりんだけいいのか?!」
「そうだよ。入学しても、俺たちの友情は永遠って言ったじゃん。可愛い妹にも、俺たちの寮部屋がいかに素晴らしかったか、教えてあげないと~」
「う…………はぁ、もう分かったよ……」



 ……いや、多分これは実質強制だ。花柳さん、全員の意見を尽く断れて無さそうだし。



「て言うか、輝はこんな時だけ妹扱いしないでよね。双子の癖に」
「え~酷いなぁ、俺が先に生まれたのは事実なのに」
「そう言って、都合悪くなると姉扱いして来るでしょ」
「さすが輝。いついかなる時でも、咲来に怒られる行動をしてるんだな!」
「違うよ陽太?勘違いしないでね?」



 どうやら彼女は1人で食べたかったみたいだけど、4人がそれを断固拒否している様だった。陽太に焦った様子で弁明している輝が、少し面白い。

 でも、折角同じ学校に居るなら友達と一緒に食べたいなんて普通だろう。1人は家族だし、他は入学前から仲良しっぽいし。
 ただ、白と黒の制服が混ざって行動してるのが、この空間だと少し目立つってだけで。



 しかし、周りからボソボソと聞こえてくる話し声は、私とは意見が違うらしい。一緒に居ることをあまり良く思って居ないのだろうか。
 ふと視線を横に向けると、四葉さんもどうしてか、少し苦い表情を浮かべている。私は、どうして四葉さんまでそんな顔をしているのか……その理由までは、あまり深く考えなかった。それ以上踏み込もうと、思えなかった。



「……ねぇ……貴方たち、なんで闇魔法師と一緒に居るの?一緒に居たら、殺されちゃうよ?先代聖女様みたいに」



 突然、5人に向かってそんな言葉が投げかけられて、食堂内のざわつきが少しばかり落ち着く。皆、あの5人の方へ耳を傾けているのだ。
 声の出処は後ろに並んでる白寮生……確か1つ上だった気がする。



「うちの親が言ってたの、闇魔法師は怖いんだって。だからそんな近くにいたら、貴方たちも危ないでしょ?」
「私の親も、小さい頃からそう言ってるわ」
「俺も……先代聖女様は同級生だったのにって言ってた……」



 彼らは何の悪びれもなく、そんな言葉を放っている。私には、信じられない事だった。魔法使いには普通なのかもしれないけど、私には全然分からない。

 まるで、授業中先生に手を挙げて質問をするかの様に、至極当然かの様に、この人たちは5人にそんな言葉を言ってのけたのだ。
 いや……正確には、花柳さん以外の〝4人〟だけに言ったのかもしれないけど。


 その言葉に続くように「そうだよ……」「死んじゃうかもしれないんだよ……?」と、言葉を投げた先輩と一緒にいた人たちも、口々に言葉を放った。そう、彼らは純粋に、みんなを心配しているんだ。悪意なんて、もしかしたら1ミリも無いのかもしれない。


 私には正直、悪意の塊にしか見えない。先代聖女様が死んでしまったのは悲しい事かもしれないけど、だからなんなんだろう。私の横でそれを言うってことは、遠巻きに私とか友達を殺す人だって言ってるんでしょ?

 魔法使いって変なの。まぁ、私も魔法使いだけど……でも、ずっと人間世界に居たし、家族もみんな〝普通の人間〟だったし。そういう魔法がうんたらみたいな感覚はよく分からない。

 想像だけでそんな言葉言ったら、私の家なら間違いなく締め出されるね!他人を傷つける様な言葉を意味もなく言うな!って。
 ……それぐらい、変だなって思っちゃう。でも、この魔法世界ではきっと、私の考え方の方が変なんだろうな。昨日も今日も、そんな話ばっかり沢山聞いたから。



 私は食材を静かに口に運びながら、視線はそちらに釘付けだった。



「先輩、あのですね……」



 そう輝が声を出した瞬間、隣に立っていた花柳さんがクスッと笑いながら口を開いた。

 
「先輩、よく考えてみてください。こーんなに人の多い学園で、わざわざ友人を殺す様な人は居ますか?それに、私には、友人と双子を殺す理由も動機もありません」



 その表情は、年上を目の前にしているにも関わらず、堂々としたものだった。それどころか、少し小馬鹿にしたような……そんな表情。ずっと、ポーカーフェイスの様な硬い表情しか見ていなかったから、何だかそれが新鮮に見えた。



「でも、うちの親はそうやって言ってたし……」

「そうですね、先輩たちの家門は、は古き良き〝光の家門〟ですから、当然の教育でしょう。ですが、今後は私の事で、友人や兄に無駄な質問をするのは辞めてください」



 そう言った瞬間、彼女の表情はきつい目付きになった。ポーカーフェイスだけど……でも、目の奥には怒りがあるように見えた。みんながそう思って居なくても、私には……そう見える気がした。

 彼女は、周りにいる友達たちが心配そうに見たり声をかけたりしているのを無視して、そのまま言葉を放つ。



「次に言われたらどうしましょうか……煩わしさで体を掻きむしった挙句、親にお手紙を出すことになるかもしれませんね?『 先輩達のお陰で皮膚が傷付いちゃったんだ』……な~んて」

「っ……!わっ、わかった!ごめんなさい……もう、私ってば変な事言っちゃったね!アハハ……」

「……そうですか。分かって下さって良かったです、先輩」



 花柳さんの言葉を聞いた途端、先輩たちは急に青ざめて、それ以上何も言わなかった。しかし、私にはその理由がよく分からない。
 頭にはてなマークを浮かべてうーんと唸っていると、四葉さんが耳元に口を持ってきて、こっそりと耳打ちしてくれた。



「あの5人は、すごいお家の人なの。魔法使いの中で偉いというか、魔法使いとこの世界に、貢献した家門の出身で……絵本とかに、お姫様とか王子様が沢山居たりするでしょ?あんな感じの、お嬢様とお坊ちゃんみたいな?」

「へぇ~なるほど!だから先輩たち、あんな怖がってたんだ」



 まぁ、私もあんな口調で後輩に言われたら、流石にビビっちゃうけどね。
 

 そんな話を聞いて納得している間に、花柳さんは「……みんなで食べるんでしょ?だったら空いてる所に行こう」と言って、そのまま皆はどこかの席へ離れて行ってしまった。

 折角会えたのに一言も話せなかった……と少し落ち込みながらも、この素晴らしく美味しい食事を目の前にすると気分も一瞬にして晴れやかになる。ご飯は偉大だ。


 しかし、気分が晴れやかになった所で、彼女花柳さんの事が気になる事に変わりは無い。


 彼女花柳さんは先輩と話している時に、左腕をギュッと握りしめていたのだ。真っ黒なブレザーとは対照的に、右手の指先は真っ白になっていた。元々の雪のような色より、もっと色のない……キツい白。

 その光景は何故か私の頭にこびり付いていて、食事を終えた後になっても、頭の中から全然離れてくれなかった。
 



 
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