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一章 魔法学園へようこそ
✿ 第3話:頭打つ衝撃
しおりを挟む私の適性は〝闇魔法〟
ちゃんと、予想通りの結果だ。
結果を伝えられた瞬間、特に何も思わなかった。それ以外の結果になる方が有り得ない事だったのだから、むしろこうなる方が有難かったのだ。
友人も、双子の兄も、全員が予想と同じ結果だった。
しかし、クラスが別れたからと言って「みんな予想通りだったね」なんて笑いあっていて、いつも通りで。
5人で約束した友情は、本当に変わらないようだ。
それは私にとっては嬉しいと同時に、酷く辛い事だった。
私は元々、入学した瞬間から彼らと関わる事を控えようと思っていたのだ。しかし今これを実行したものならば、私の双子はその優しく垂れている眉を、釣り上げて迫り寄ってくるだろう……それは、とても嫌だ。
だから彼らを守れる様に、誰にも傷つけられない様に……私がちゃんと立派な魔法使いだと言う事を、沢山証明し続けて……そして、いつかこの闇魔法をスッパリ手放せるようにするのだ。
そんな私の決意を他所に、向こうから聞こえてきた言葉は暴力的で、まるで鈍器で頭を殴られたような衝撃が、私を襲って来た。
「あら、貴女光の……」
「あ~……はい。どうやらそうらしいんですよ~、アハハ……」
光の適性を持つ魔法使い。
つまり、彼女は〝聖女様〟という事だ。
あぁ、最悪だ……本当に。
「……ほら、クラスも決まったし、私達は早く場所に行こう。またね二人共」
「あ、咲来待って~!輝、陽太、バイバ~イ!」
「二人共、後でそっちの寮の事も教えてね」
私は、輝と陽太の言葉を聞く前に足をすぐに動かした。いつもと様子が違うなだとか、それが伝わってしまっているか……だなんて、気にして取り繕う余裕がなかった。
だって、すぐそこに〝聖女様〟が居るのだから。
思い返せばおかしかった。駅にいる時点から彼女が〝光側の魔法使い〟って確信していた。私がそう確信している時点で、既に普段とは違ったのだ。
いつもなら、何となくしか分からないのに……。
しかもよりによって、なんで同じ学年で二人と同じクラスになってしまうんだろう。
このままだと、絶対良くない事になる。今まで考えてた事だけじゃダメだ、もっと、ちゃんと考えないと……じゃないと……。
「咲来!」
「あ……ごめん、聞いてなかった。何?」
「もうすぐ寮に行くって先生が言ってたよ」
「そうだよっ、も~!すずと沢山呼んだんだから~」
「ちょっと、考え事しちゃってたみたい」
二人はそれだけ言って、何も聞いてこなかった。
いつもそうなのだ。二人は優しいから、私の考えている事を深く聞こうとはして来ない。
私がそれを望まない事を知っているから。
私は皆を友達だと思っているのに、自分の中で何処か線を引いている気がする。もしかしたらその雰囲気すら、皆にも伝わっているのかもしれない。
もし本当にそうだとしたら……私は、なんて酷い奴なんだろう。一番親しいと思っている人達なのに、こんな態度を取るなんて……これじゃあ、私の性格が悪いと思われても仕方がない。
でも、その性格の悪さが私を作りあげているのだから、嘆いたところで意味は無い。性格が悪いなら悪いなりに、それを利用して出来る事をするしか無いんだ。
そうしないと、輝と陽太だけじゃない……りんや鈴音だって、私と居る事で何を言われるか分からないのだから。
2人を弱い人達なんて思って居ない。ただ単純に、私が原因で大事な人をそんな状況に陥らさてしまう……その事が、すごく嫌なだけなのだ。
これは、私がワガママなだけ。二人の意思を無視して、私のエゴを押し付けてようとしているだけだ……。
「あ、二人も並んでる~」
りんがそう言うと、私と鈴音もそちらを見た。
そこには〝聖女様〟に笑いかけてる二人の姿が見える。
見るな見るな、もう見るな。
そう思えば思うほど、私の目はあの3人に突き刺さる。まるで釘で打たれたかのように、一ミリも動かすことが出来ない。
そんな衝撃が抜けないまま、思考はずっと奪われて……頭にズキズキと響いて、警告してるみたいに痛みが広がっている。
なのに、私の視線は彼らが歩くその時まで、逸らすことなんて出来なかった。
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