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17話 情報収集の基本はギルドで

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 夕方に開拓村を出発して街まで休みなく進行した。
 途中でボルドーガが気絶から目を覚ましたが、強化分裂体に見張らせていたのでカップに報告が届く。


「おはよう。ではおやすみ」
 ボルドーガに発言させることなく、今回も魔力枯渇で気絶させる。

 盗賊団が暴れようなこともなく、窓から太陽の光が車内を照らす。
 外を見れば目的の街が見えていた。

「本当ならあの街で休みが1日もらえたんだよな」
「ふぇ? ね、寝てませんよ?」

 夜通しの進行で眠たいのか、俺の独り言にジュナが見当違いな返事をした。

「もうすぐ街に到着するよ。法国に向かうのは明日だろうし、今日はゆっくり休めそうだな」
「そ、そうですね。ボルドーガ以外は、この街で降ろす予定だと聞いています。手続きもあると思うので、宿に泊まれると思いますよ。久々のベッドです」

 ルアリールさんから予定を聞いていたのか、ジュナが教えてくれる。
 それなら自由時間もありそうだ。

 昨日はカップをベッドに昼寝していたので、連日の徹夜になっているがそこまで疲れていない。

「そっか。なら予定通りに行動できるかな」
「この街に、用事があったのですか?」

「うん。俺の目的地が世界樹なんだ。だから世界樹について情報収集をする予定だったから、予定通りに動けるなって」
「世界樹、ですか。それなら、少しはお役に立てるかもしれません!」


「どういうこと?」
「私の祖母が世界樹の近くに住んでいるので。祖父が人間種で、20年前に亡くなったのをきっかけに里帰りしたと聞いています」

「そうなんだ。祖母ってことは、純粋なエルフなのか?」
「はい! 今年で、300歳を超えるはずです!」

「そっか」
 簡単に計算して、200歳くらいで人間族の男性と結婚したことになるから、200年は世界樹の側で暮らしていたってことだよな。

 ヤスモ先輩の名前を出すより、ジュナを助けた冒険者としてジュナから祖母に紹介してもらったほうがいいかもしれない。

「ちなみに、法国から世界樹までどれくらいで到着できる?」
「えっと、昔行った時は馬車を使って5日位でしたね。徒歩で向かわれるのですか?」

「そうだな。馬車や馬を買うことも考えたけど、一応は時空間魔法を生き物に使うことは禁止されてるわけだし、1人で管理するのは難しいかなって」
「そうなのですね。えっと、私が馬の世話をするので、一緒に行っても、いいですか?」

「付いてきてくれるのは構わないよ。その方がジュナのお祖母さんに紹介してもらえるから、助かる。けど馬車と馬は?」
「はい! 紹介でも何でもします! 馬車と馬は知り合いに当てがあるので任せてください! お金も大丈夫です!」

「そ、そっか。じゃあ、任せようかな」
「はい! 任せてください!

 そんなわけでジュナと世界樹まで一緒に行動することが決まった。
 そうなると

「ジュナの豊胸術と第三次性徴は法国でやる予定だったけど、どうしようか?」
「ラパ様さえ良ければ、法国で受けたいと思います。急いでおられるようなら、用事が済み次第でも構いません。私は、いつでも待っていますので」

「わかった。別に急いでいるわけでもないよ。それに、ボルドーガが言っていたスライムのテイマーのことも聞きたいし」
「スライムのテイマーですか?」

「うん。知り合いにスライムのテイマーで、オメガ信者の人がいるみたいなことを言ってたんだよ。ジュナは何か知ってる?」
「いえ。騎士団にテイマーの方はおられなかったと思いますよ?」

「そっか。ルアリールさんなら知ってるかもな。ボルドーガは元部下って話だし」
「そうですね。後でルアーに話せる時間が作れるか聞いておきます。ラパ様は街で情報収集をされるのですよね?」

「う、うん。別にそこまでしてもらわなくても、俺から」
「私が、ルアーに話せる時間を作ってもらえるように話しますね?」

「あ、はい。じゃあ、お言葉に甘えて情報収集してこようかな」
「はい。お気をつけて」

 ジュナと話が終わったタイミングで馬車が停止する。
 盗賊たちを降ろす場所に到着したようだ。

 騎士の男性が馬車の扉を開けてくれる。
 馬車を降りるとルアリールが駆け寄ってきた。

「スーラパイ殿、改めてお礼に参りました。ボルドーガの見張りから無力化まで行なっていただき、ご協力に感謝します!」
「あまり気にしないでください。暴れられて面倒なのは一緒に行動している僕も同じです。それに、依頼は最後まで完璧に行なってこそ、報酬に期待できますから」

「そういうところは冒険者、と言う感じですね。報酬に関しては最大限協力させていただきます。最悪の場合は、私から出させていただきますので」
「そこまでしていただく必要はありませんが、期待させていただきます」

「それと、本日はこちらの宿にお泊まりください」
 宿の道順と宿の名前が書かれた羊皮紙を渡される。

「ありがとうございます。明日の予定は決まっていますか?」
「はい。早朝に街を出て法国に向かいます。また夜通しの進行になりますので、今日はゆっくりと休んでください。それでは」

 明日も夜通しの進行か。
 この街から法国まで野宿して、だいたい2日って話だったよな。

 最初の3日は、だいたい7時間移動だったか。
 つまり14時間で法国に着くわけだ。

 早朝に出発して休憩は挟むだろうし、トラブルがなければ夜通しの進行で法国に到着するってことか。

 それにしても、
「忙しそうだな」
「ラパ様も情報収集に行かれるのでは?」

 また思ったことを口に出していたようだ。
 基本的に1人で行動していたから気付かなかったが、独り言がクセになってるのか?

 今後はジュナと行動する予定だし、気をつけよう。

「そうだな。ジュナは、ギルドの場所を知ってる?」
「はい! 案内します!」

「ジュナは眠たいだろ? 明日も朝早いみたいだし、また夜通しの進行らしいから、宿で休んだら?」
「このくらい、だいじょうふぁ~、くうぅ…」

 あくびを見られて恥ずかしいのか、あくびをしてしまったのが悔しいのか、耳の先を赤くして唇を噛み締めている。
 少し涙目だ。

「ほら、宿に行こう」
「は、はい」

 ジュナと手を繋いで宿に向かう。
 忘れずに途中でギルドの場所を聞いておく。

「夜までに帰るから、ちゃんと休めよ」
「はい! まるで夫婦みたいですね!」

 ジュナの言葉を無視して、ギルドに向かう。
 法国の首都に近い街という事もあって、エルフをよく見かける。

 男は人間族が多く、女はエルフが多いため、
 立派なおっぱいどころか、そこそこの胸も見当たらない。

 人間族の女性はエルフに勝てないから法国に近づかないってのは本当だったのか。
 今は滅んだけど、帝国も女性は魔物が多かったんだよな。

 結局、王国が一番活動していて楽しい国ということだ。
 ギルドに到着して、受付に近づくとエルフの女性が対応してくれる。

「おはようございます。こちらのギルドは初めてですか?」
「そうですね。王国のオーパブルンという街で活動していた冒険者なんですけど、噂の世界樹を目指してここまで来たんですよ。資料室の閲覧許可はもらえますか?」

「確認させていただきますので、冒険者カードを提出していただけますか?」
「はい」

 冒険者カードはテイマーカードのような機能はないが、ランクに応じた身分を保証してくれる。
 ギルドにある魔導具でカードを見ると、依頼の履歴やランクが表示されるらしい。

 高価な魔導具らしく、限られたギルド職員しか使えないとアッキの姉さんから聞いたことがある。
 カードを持って奥の部屋に行ったエルフさんが慌てた様子で帰ってきた。

「お、お待たせいたしました! ギルマスからお話があるということですので、こちらにどうぞ!」
「あ、はい」

 厄介ごとの予感、パートツー。

「スーラパイ君、4日ぶりですね」
 ギルド本部の財務関係を担当するギルド長に怒鳴られたギルマスだ。

「そうですね。えっと、僕に御用ですか?」
「そういうわけではありません。ただ、優秀な冒険者とお近づきに慣れたらと思いまして」

「はぁ、そうですか」
「霊峰の、最古のダンジョンの問題を解決したかと思えば、次は盗賊団の壊滅ですか。素晴らしいですね」

「たまたまですよ。どちらも僕と相性が良かったんです」
「そういうことにしておきましょう」

 フラージュに視線を向けている。
 報告した以外の能力が杖にあると思われてそうだな。

「顔合わせなら済みましたし、これで失礼します」
「気分を害したなら謝ります。もう少しお話を聞かせていただけませんか?」

 この人、回りくどいな。
 ギルド長が怒鳴ったの、性格のせいかもな。

「…なにが聞きたいんですか?」
「ありがとうございます。盗賊団に捕まっていた者の中に、この冒険者はいましたか? もしくは、捕まえた盗賊団の中にいませんでしたか?」

 ギルマスが取り出した羊皮紙には、女性のエルフの似顔絵が描かれていた。
 肌の色を黒めに塗っていることから、ダークエルフの女性だとわかる

「覚えてませんね。すみません」
「そうですか。では後ほど騎士団の方に確認することにしましょう」

「そうしてください。助けたに人たちも、騎士団の詰所で一度保護するそうですよ」
「やはり騎士団も疑っているのでしょうね」

「助けた人の中に、協力者がいることですか?」
「スーラパイ君も気づきますか。流石ですね」

 あんな意味深に似顔絵を見せられたら誰でも気づくと思うけどな。
 しかし助けた人の中に協力者がいる可能性はほぼないと思う。

 いたら助けられた時点で逃げようとするだろうし、開拓村を分裂隊で包囲していたので、逃げようとしたなら捕まっているはずだ。
 そのことはちゃんとルアリールに報告してあるので、調べるならスライムに捕まっていた盗賊団だけだと思う。

 詰所で保護するのは単純に助けた人たちのリストを作ることで、効率よく家や目的地に送り届けようとしているのだと思う。
 ちなみにダークエルフは魔法を苦手として、近接戦が得意な種族だ。

 冒険者の先輩にダークエルフのそこそこな胸を持った女性がいるので、話を聞いたことがある。
 エルフと違って、胸が大きいと聞いたこともあったな。

「それで、さっきのダークエルフがどう関係するのですか?」
「最近分かったのですが、盗賊団の被害が増えるに連れて羽振りが良くなっていたのが、彼女なのです。それが分かって話を聞こうとしたのですが、2日前から街に戻っていないこともわかりました。なので、スーラパイ君が捕まえてくれたのかと思ったのです」

「そうですか。開拓村にいた盗賊団は逃がしていないと思いますが、別の拠点がある可能性もありますので、その辺は何とも言えませんね」
「そうですね。騎士団と情報を共有して盗賊団が残っていないか、調査しようと思います。盗賊団の壊滅、本当にありがとうございました。ギルドからも報奨金を出させていただきます」

「報奨金はありがたく受け取ります。話は以上ですか?」
「はい。資料室の閲覧許可は私から出してありますので、お気軽にお使いください」

「ありがとうございます。ダークエルフが捕まっているといいですね」
「ええ。本当に」

 また余計なこと言ったかもしれないけど、今の俺には関係ないか。
 さっさと世界樹について調べて、買い物でもしようかな。
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