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9話 カップの進化は止まらない

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 豊乳術と第三次性徴。

 抗えなかった性欲が収まった私とアーニスは、崩壊していく帝国の城を眺めていた。
 呆然としている私達の隣で、ラパくんが説明を始める。

 帝国がダンジョンを利用して人体実験を行なっていたこと。
 その過程でサキュバスを生まれた。

 更には女王まで誕生したが、ダンジョンが暴走する。
 サキュバスの女王が暴れたことで皇帝は当然の如く、その関係者並びに研究者やサキュバスに抵抗した者は、吸収ドレインされた。

 抵抗する力を持たない、抵抗しなかった男達は魅了されて、サキュバスに捕まる。
 捕まればどうなるか、言われなくてもわかる。

 ダンジョンが崩壊するその日まで、搾り取られていた。

 ラパくんが見つけた研究者の報告書も見せてもらう。
 ダンジョンが暴走したことやサキュバスの女王が暴れたことが記載されている。

 ダンジョンは暴走の果て、偶然にも今日が崩壊の日となったのではないか。
 報告書だけでそこまで予測できるものなのかとも思ったが、実際に城は崩れ落ちている。

 空にあった雲は消えて、サキュバスの女王が関係していたのだろう魔法陣は消えている。
 サキュバスが消えたことで解放されたのか。

 逃げていく男たちがいた。
 ほとんど裸なところを見て、さっきまでサキュバスとヤッていたことがわかる。

 報告書を読んで一応は理解できたので、私たちを時空間に入れた後の行動を詳しく聞くことにした。

 帝都に入ったラパくんもサキュバスから魅了を受けたらしいが、効果なしだった。
 ほんとについているのかしら?

 襲われるかと思われたが、何故か襲われなかったので安全に探索ができたとか。
 ラパ君の予想として、魅了の通じない相手を怖がったっていたのでは、とのこと。

 白いスライムを発見して追跡すると研究室に到着する。
 調べたところ、報告書を発見した。

 白いスライムの正体は男たちから搾り取った液の運び屋で、研究室にあった大人2、3人が入れそうなカプセルに白い液体を吐き出すと透明に変わった。

 カプセルから伸びるパイプを辿って移動すると玉座に繋がっていた。
 女王がいることが予想されたので、扉も閉まっているので入ることなく、別の場所を探索しようとした際に、地震が発生する。

 揺れの大きさの割に数分もせず揺れは収まるが、城の壁や床にヒビが発生した。
 崩れる前に城を飛び出して、安全な場所で報告書を確認する。

 そしてダンジョンの崩壊に似ていることから、今までの流れを予想したとのこと。
 魔法陣も消えて裸の男たちが逃げる姿も見られたため、私達を開放した。

 そして城の崩壊を見ることになった私達だが、帝国の問題が解決すると、
「「豊乳術は!? 私/オレの第三次性徴は!?」」

「あー。出来ないかもしれませんね」
 私達は膝を地面につけた。

 しかし地面に顔を向けている私達に、神の声が聞こえる。

「えっと、報酬があるなら指名依頼として受けましょうか?」
「「よろしくお願いします!!」」 

 2ヶ月後、理想の胸を手に入れた私達は、理想の男性を求めて旅に出る。

 理想の胸を手に入れたことで、男の方から声をかけてくるようになった。
 胸を見られていることがわかる。

 ラパくん以外見向きもされなかった胸が、見られている。

 こちらが誘えば断られることもない。
 一夜をともに過ごすことも。

 嬉しかった。
 気持ちよかった。

 この人と結婚するんだと思っていた。

 幸せの時間は、短い。
 私達は再会した。

「「胸以外お断りってどういうことだゴラァアァァああ!!」」

 私達はまた地面に膝をつき、泣いた。

 帝国の崩壊から3ヶ月が経った。

 そのうち2ヶ月は指名依頼を受けて、2人に合った理想の胸を実現させた。
 平らな大地から山が出来上がる過程を見れたのは、とても楽しかった。

 術を受けていた2人の反応や立派に育つ胸を見ても、性的興奮しないほどに楽しかった。
 もちろん2人の胸を触ったりもしていない。

 触ってしまえば自分の理想が混じってしまうからだ。
 服を着てもらっていたので直接見ることも、殆どなかった。

 育ち始めた山を故意に見せられ、誘われることもあったが
「え? それくらいで満足なんですか?」と言えば2人は大人しくなった。

 術を受けて興奮していたのか、2人が抱き合おうとしたので「元に戻っても知りませんからね?」と言って、させなかった。

 もちろん自分で発散するのも禁止する。
 我慢すればするほど効果があると伝えた。

 そして、見事な山が出来上がる。
 5日ほど観察して山が崩れないことや元に戻らないことを確認する。

 2人に成功を伝えた。

 2人は抱き合って喜び、理想の胸が手に入ったことで予定よりも多くの報酬をもらった。
 5日程度では安心できなかったのか。

 しばらくは自分での発散や百合行為も行わなかったと報告を受ける。
 10日も経てば安心したようで、男を求めて「旅に出る」と言われて見送った。

 旅に出る理由を聞くと、ギルドに行ったそう。
 突然現れた美人に冒険者はざわついた。

 しかし2人が成長した姿と知れば
「中身がアレじゃぶべら!」
「一日くらいならあべし!」
「やっぱり見た目しか変わってねぇな!」と笑われた。

 2人の成長はサキュバスのせいということになっている。
 薄々は俺が絡んでいるとバレているが、依頼を受けるにしても、今は休みたかった。
 
 2ヶ月のほとんどを拘束されるのは、疲れる。
 さらに魔力を使うので日課の魔力を溜めることができなかった。

 サキュバスの女王であるホックと契約できたのは魔力を溜めていたからだ。
 魔力が無くなれば、大昔のモンスターパニックならぬサキュバスパニックが発生する恐れがある。

 魔力を溜めるついでに、ダンジョンのコアを吸収したカップの状態も確認するため、残りの1ヶ月はカップとホックの研究をしていた。

「びぃーみ!」
「やっぱり貴方様の魔力は格別に美味しいです」

「それはどうも」
 右手にカップ、左手にホックを持って日課の魔力供給を与える。

 研究の結果。
 カップは捕食したモノの形を完璧に再現することができるようになっていた。

 温度、質感、強度までも再現が可能なようで、本物と思われる立派なおっぱいを堪能する毎日を送っている。

「だが偽物だ」

「貴方様が望むのならば」
 ホックが黒いスライムから元のサキュバスに姿を変えて誘ってくる。

「それも偽物だろ。魔力で大きくしてるだけだ。本物ではない」
「でも本物と一緒ですよ?」

「そんなものは本物と認めん。それに触ったら魔力持ってくだろうが」
 ホックを調べる過程で触ったときのことを思い出す。

 自分に魅了が効かないとはいえ、相手がサキュバスの女王であることを忘れていた。
 ホックの体に触れた瞬間から抗い難い性欲に襲われて、ホックをベッドに押し倒した。

 本人が言うように本物と変わらないだろう立派なおっぱいを、相手のことなど考えず乱暴に、自分勝手に触る。

 そのまま童貞を捨てそうになったが、カップに突き飛ばされて正気に戻った。

 魔力はほとんどホックに吸われた状態で、気づけば床で寝ていた。
 カップはおっぱい枕になってくれていたので、寝起きは最高だった。

「サキュバスで童貞捨てるとか、童貞の志が低すぎる」
「童貞に志が必要なのですか?」

「処女を好きな人で捨てたいというのと一緒だよ。いや、サキュバスに言ってもわからないか」
「それなら理解できます。私も処女ですから、貴方様に捧げたいと思っております」

「サキュバスにも処女という概念が存在したのか。ドレインは性行為に含まれないのか?」
「あれはただの食事です。私の大事な場所は、誰にも触れられたことはありませんよ。あ、胸は触れていただきましたね」

「思い出させるな。あんな身勝手な行動、胸を愛する自分が許せない」
「私ならどんな行為も大丈夫です。切り離されても再生可能ですから」

「俺はそんな鬼畜ではない。カップもホックも、大切な仲間だ」
「…はい」

 ホックは抱きつきたそうに腕を上げているが、魅了の件もあってサキュバスの姿をしている時は、人に触れることを禁止している。

 黒いスライムの時は体に触れられても、こちらから触っても何も無い。
 完全にスライムとして存在しているのだろう。

 ふと、おっぱいの形で揉まれているカップに視線を向ける。

 大事な仲間と言われて喜んでいるのか、少し熱を持っていた。
 基本的にカップを人型にすることはない。

 人型にすれば話すこともできる。
 試していないが、人間のように動くこともできるだろう。

 だが俺はそんなことを望んでいない。

 いつでも触れる最高のおっぱいが、好きな時に触れればいい。
 カップもそれを理解しているようで、大人しく揉まれている。

「お姉様ばかりずるいです」
「び!」

「確かにそうですが、私も触ってもらいたいです」
「み!」
「うぅー」

 カップに言い負かされたのか。
 スライムに戻ったホックが頭の上に乗ってくる。

 いつもの定位置だ。
 全く重さも感じないので好きにさせておく。

「さて、カップとホックの研究もやることがなくなってきたわけだが、そろそろ仕事するかな」
「貴方様が働くことはないです。私にお任せください!」

「ヒモになるつもりもないから」
「そうですか。ではギルドに向かわれますか?」

「そうだな。美味しい依頼でもあればいいな」
 気軽な気持ちでギルドに到着すると、アッキの姐さんが走ってくる。

「やっときよったか! こっち来いや!」
「な! ちょっ!?」

 抵抗なんかすれば腕がちぎれるのではないかと感じるほどの力で引っ張られる。
 そしてギルマスの部屋まで連れて行かれた。

「やあ、休暇は終わりかい?」
 部屋の中には書類の山に囲まれ、目の下にくまのあるギルマスがいた。

「お忙しそうですね」
「まあね。3日に一度しかアキにゃんと寝れないんだよ」
「あ、アホなこと言うてんと、さっさと本題にはいり!」

「そうだね。実はダンジョンの活性化が始まった」
 活性化はダンジョンからモンスターが溢れ出す現象で、放置すると国が滅びると言われている。

「4年に一度のあれですか。あれ? 2年前にありませんでしたっけ?」

 活性化は定期的に発生する。
 冒険者からすると、お祭りみたいなものだ。

 なんせダンジョン前で数十人が待ち構えて、出てくるモンスターを迎え撃つだけで安全に稼げる。
 さらに参加するだけで国から金貨数枚が報酬とて払われる。

 冒険者の派遣はギルドが行なう。
 参加したことや貢献度などを調べて、報酬の分配や情報を管理している。

 大変な仕事だ。
 冒険者はお祭り騒ぎだが、ギルドは…。

「その活性化が、最古のダンジョンに見られている。帝国のダンジョンが消えたタイミングと、同時だろうと連絡が来た」
「嫌なタイミングですね。僕がなにかやったんじゃないか、ということですか」
 ギルマスが処理している書類の山に視線を向ける。

「面倒な探りを入れられているよ。帝国の宝物庫が空だった件やダンジョンコアが見つからないだとか、本当に女王は消滅したのだとか」
「あはは、お疲れ様です」

 笑うしかない。
 宝物庫の中身は俺が持ってるし、コアはカップが消化したし、女王は頭の上に乗ってるし。

「あははやないわ。崩壊のタイミングでラパを派遣したウチらを疑うより、まずは崩壊で無くなりかけた報告書をラパが見つけたことを褒めろっちゅう話やろ」

「まあ、報酬は多めにいただいてるので、疑われようが探られようがどうでもいいですけど、姐さんやギルマスに迷惑をかけてるのが、申し訳ないです」
 嘘の報告で迷惑をかけているので頭を下げる。

「そうですか。それでは、一つ仕事を頼まれてくれますか?」
「最古のダンジョンを調査しろ、ですか?」

「流石ラパくん。その通りです。頼まれてくれますよね?」
 え? いいの?
 ダメと言われる前に、笑顔で答える。

「死なない程度に頑張ります!」
 こうして最古のダンジョン。

 隠し名。
 オメガ様の研究所に行くこととなった。
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