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8話 ダンジョンコアは美味らしい
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サキュバスの女王。
私を生み出した帝国は、私が滅ぼした。
まず私が行なったことは、研究者たちをドレインすること。
研究者をドレインすることで、知識を得た。
私たちサキュバスの作り方や使用方法など。
帝国は女王の能力でサキュバスを操って、サキュバスに他国を襲わせる計画を立てた。
サキュバスに対応できなかった国は、帝国からサキュバスに対抗できる力を持った冒険者を派遣することで、サキュバスを撃退する。
そうして他国に恩を売ると同時にスパイを配置する。
もしサキュバスに対応できた国があれば、どんな対応をしたのか確認のために冒険者を派遣する。
調べた結果から対応できないと予測される別の魔物を作成する。
予定だった。
私が生まれたことで、帝国は滅びる。
原因はダンジョンコアの暴走だ。
ダンジョンの発見は、8年前にソロの冒険者が発見する。
報酬目当てでギルドに報告せず、帝国に報告した。
これが帝国滅びの始まり。
ダンジョンは資源の宝庫である。
国の宣伝としても効果のある代物だったが、帝国はダンジョンを隠した。
ダンジョンの宣伝をする前に行った調査で、騎士2名の犠牲もあってコアを発見する。
隊長の騎士がコアに触れると、魔物の製造が可能であると判明した。
隊長は子供の頃に憧れた姿を思い出し、好奇心からドラゴンを創造する。
突然現れたドラゴンに騎士たちはパニックに陥るが、ドラゴンは創造主の命令があるまで動かない。
魔物を生み出せることや命令することができた。
反撃しないドラゴンを倒して、素材にすることもできる。
コアに触れると、誰でも魔物が製造できることも確認された。
当然、ダンジョンの存在は隠蔽される。
コアに触れた状態で魔力を消費すると、ダンジョンの拡張が可能であることも発見された。
魔力だけでなく、魔物以外の死体をダンジョン内で作ることで、魔力よりも効率がよく、ダンジョンの拡張ができることも発見される。
様々な効果を持った部屋を設置することで、ダンジョン内に牧場を造った。
その結果、ダンジョンは急成長する。
そして、私が生まれた。
コアがダンジョンを維持するために溜めていたエネルギーが、急激に消費されたことでダンジョンの維持が難しくなると、コアは暴走を始めた。
人間風に言えば高額な買い物をしたことで、破産した。
私はコアの命令でダンジョンを維持するために人間達をドレインする。
しかしダンジョン内にいる人間だけでは足りなかった。
だからサキュバスたちにダンジョンの外でエネルギーを回収しろと命令する。
ダンジョンの維持可能なエネルギーを集めたことで、理性を取り戻した私は、帝国を乗っ取ることにした。
ダンジョンだけでなく、帝国の知識も持っている私ならできると思った。
まずはエネルギーを節約するために、コアを操作してダンジョンをできるだけ小さくする。
使う機能はサキュバスとスライムの量産だけに絞った。
スライムは外で活動するサキュバスからエネルギーを受け取り、運搬の役割を与える。
スライムは液体の吸収を得意な魔物で、サキュバスと相性がいい。
サキュバスが搾り取った液体をエネルギーに変える。
徐々にサキュバスを増やして帝国をサキュバスの国にする。
予定だった。
私はサキュバスの女王。
今は、あの方が望むスライムです。
仲間が増えたよ。
やったね! カップ。
サキュバスの女王は、契約したことによって姿を変えていた。
黒いスライム。
頭から生えた翼を動かして眼の前を浮いている。
元サキュバスの女王から、簡単に帝国の状況を聞いた。
「帝国馬鹿なの?」
ダンジョンとか、オメガ先生でも解明できなかった存在だ。
そんなやばいモノに手を出したかと思えば、挙句の果てに世界征服?
そら滅びるわ。
そういえば、今代の帝王は魔物嫌いで、マ帝国と呼ばれることも嫌っているってことは、噂程度に知っていた。
だけどダンジョンの実験に国民の他種族を使っていたとか、滅びて当然だと思う。
「それで男しか残ってないのか」
「はい。女性陣はもれなく家畜としてダンジョンで飼われていましたが、コアが暴走したことでほとんどがダンジョンに吸収されました。生き残った者たちは誕生して間もない者たちで、サキュバスたちとダンジョン内で生活しています。
ダンジョン内で生まれたことで、人の姿をしていますがほとんど魔物のようなものです。ダンジョンから離れると生きていけない存在になっています。
知能は悪くないのですが、人よりも動物に近い存在ですね。ほとんどが女の形をしています。将来的にサキュバスの母体となる予定をしていました。
それまでのつなぎとして、他国から女性を集めていました。母体がなくてもコアからサキュバスを作り出すことはできますが、エネルギーを節約できますし、効率がよかったのです。
なんせ、サキュバスが出来なくても母体に注ぎ込んだ精をエネルギーに変えることができますからね」
「無駄がなかった、と。それも研究員から得た知識か?」
「どちらかといえばダンジョンコアからですね。私はコアから生まれたからか、コアと深くつながっていました。
今は貴方様と契約したことでコアとのつながりはなくなりましたが、サキュバスたちは私の一部のようなものなので、回収すればするほどに力をつけられます」
「まあ、強い仲間ができるのはいいことだから好きにしてもらっていいんだが、次々に飛んでくるサキュバスは、なんか怖いよ」
目が血走ってる。
「うふふ。襲われることはありませんのでご安心ください。貴方様に近づく前に、私が全て食べてしまいますから」
ダンジョンから生まれたサキュバスだから吸収出来るのか、人も魔力の光に変えて吸収できるのか、恐ろしくて聞けないな。
「てか待て。コアとのつながりが無くなったってことは、また暴走が起こるわけじゃないよな?」
「その心配はありません。ダンジョンは小さくしています。すぐに暴走することはないですよ」
「すぐに?」
「ええ。ひと月ほどは問題ないかと」
「それなら安心、とはならんやろがい! 1ヶ月後に暴走するってことだよな!?」
「そうですね。ですので、今から向かう先にコアがありますので、コアをカップお姉様に吸収してもらいましょう」
「なんでカップなんだ? お前じゃだめなのか?」
「私でも構わないのですが、ここは先輩を立てるのが後輩として当然のことだと思います。それに進化しない私よりも、進化の可能性があるカップお姉様が吸収したほうがいいですよ」
「ちなみに、さっきのですわ口調はやめたのは?」
「もう女王ではありません。貴方様の従者ですから」
口調にこだわりがあるわけではなかった。
「そうか。カップはダンジョンのコア食ってみたいか?」
抱きかかえているカップに聞いてみると、頷くようにぷるぷると縦に震えた。
「カップお姉様も食べると言っていますし、このままコアの場所まで行きますね」
「お前もカップの伝えたいことがわかるのか?」
「はい、もちろんです。ですが、そろそろお前などではなく、名前をいただきたいです」
羽を持つ黒いスライムが、眼の前で浮いてこちらを見てくる。
スライムの見た目をしているが、中身はサキュバスの女王だ。
安直にクイーンと浮かんでくるが、今後もスライムとして付き従ってくれそうなので、カップと同じように胸と関係のある名前にしようと思う。
「そう、だな。名前は…ホックでどうだ?」
「ブラのホックですか。あ、カップお姉様を支えるということですね! わかりました! 私はホックです!」
「まあ、そういうことで。これからよろしくな、ホック」
「はい!」
喜びを表すように回転や左右に揺れて案内が再開される。
気に入ってもらえた様子に安堵した。
サキュバスも次第に飛んでこなくなると、大きな扉が見えてくる。
「ここがコアの部屋につながる転移部屋です。元々は宝物庫でしたが、中身はもちろん貴方様のものです」
大体3メートルを超える高さの扉に魔法陣が描かれて、守られているのがわかる。
「もらえる物はもらっておこう。そういえば、これはホックが描いたのか?」
「はい。扉が開かないように固定の魔法陣と撃退用の火炎魔法が発動する魔法陣を描き込んであります」
「転移の魔法陣も描けるのか?」
「描くことはできますが、コア無しで発動させようと思うと、距離によって膨大な魔力が必要となります。短い距離であれば、貴方様なら可能かもしれません」
貯めに貯めた魔力を使えば転移できる。
しかし転移に魔力を消費すると、ホックとの力関係が崩れるだろう。
そうなれば、契約が解消される。
転移を使うかどうかは別に、知っておいて損はないか。
「俺に魔法陣を教えてくれるか?」
「はい! 私の知っている限りの知識をお教えしますね。ではまず、この魔法陣の解き方を」
「今はやめとこう。空にあった魔法陣が消えたことで、男たちが逃げ出しただろ? そのうち王国から冒険者か騎士団がやってくるはずだ。用意周到なギルマスのことだから、もしかするとそばで待機させてるパーティーがいるかもしれないし、さっさと回収できるものはしておきたい」
「わかりました。では私が貴方様の頭に乗ることをお許しください」
「ん? 構わないよ」
「ありがとうございます。では、このまま扉に向かって進んでください」
「扉、開くのか?」
「いえ通り抜けます。私達サキュバスやダンジョンに属するスライムなどが入れるようにしてあるのです。魔法陣や扉は視覚トラップとして利用しているものですね。また詳しくお話させていただきますので、今はそのままお進みください」
ホックの言葉を信じて扉に向かって進むと、魔法陣を素通りする。
宝物庫の中は床に魔法陣の描かれていた。
「そこの魔法陣に乗ればコアの部屋まで転移できます。ダンジョンに入ることになりますが、認識阻害の魔法を使用していますので、敵対されることはありません。ご安心ください」
「認識阻害まで使えるのか。使えない魔法はないのか?」
「そうですね。ほとんどの魔法は使用可能かと思います。魔力の問題はありますが、今のところサキュバス達を取り込んだ魔力もありますので、しばらくは無双状態というやつですね」
「そっか。ホックが味方で良かったよ」
「ありがとうございます!」
魔法陣の上に立って静止していると、景色が変わる。
宝物庫は様々な装飾がされている部屋だった。
しかし今は、白い壁に囲まれて中央にクリスタルが浮かぶ部屋にいる。
本当に転移したようだ。
「あれがダンジョンのコアになります。貴方様、カップお姉様をコアに近づけてください」
「わかった」
ホックの言う通りにカップを近づけると、コアを吸収するしようとカップの体を広がっていく。
そして、コアを包みこんだ。
「けぷっ」
コアの吸収はあっけなく終わった。
そして同時に、ダンジョンの崩壊が始まる。
「転移の魔法陣が消える前に! 早くこちらへ!」
壁にヒビが入って床に伸びているのが見える。
カップを抱えて魔法陣に飛び込むと宝物庫に戻ってきた。
魔法陣が消えたことを確認すると、地震が発生する。
「帝国の地下で広がっていたダンジョンが崩れたのでしょう。ここも安全ではないかもしれません。城から出ましょう」
帝国関係者をドレインしたことで城内部を知っているホックが案内してくれる。
抜け道のような場所も迷うことなく使用して、城から脱出した。
外に出ると城から離れた場所だとわかる。
物置のような建物だった。
城の方を見れば左に傾いていた。
左側の地下にダンジョンが広がっていたのだろう。
「あちらの方に繁殖場があります。サキュバスの回収は、どうしましょうか? 私としては、やって損にはなりませんが、そこまでするほどでもないと思います」
「そうだな。王国までの帰り道で遭遇したら、あ、その時はあの2人も一緒か。まあ、無理に吸収することもないよ。ダンジョンが無くなって、そのうちサキュバス達も消えるんだろ?」
「はい。ダンジョンから生まれたものは、ダンジョンがなくなると魔力の供給が出来なくなります。存在を保てず消えるでしょう。例外は存在しますが、そこまで知能を持った魔物はいなかったと記憶しています」
「なら放置で。もうつかれた」
カップを抱えたまま地面で横になる。
するとホックが後頭部に移動した。
大きさを変えて枕になってくれる。
カップを持ち上げると、雲から出てきた太陽に照らされた。
カップの中心に、核の丸い玉を見つけることができた。
核の形が変わっている。
ひし形に近い形をしていたはずだ。
丸くなったことで、触りやすそうだと感じた。
ふと思ったことを聞いてみた。
「コアは美味かったか?」
「びみ!」
カップが喋った。
私を生み出した帝国は、私が滅ぼした。
まず私が行なったことは、研究者たちをドレインすること。
研究者をドレインすることで、知識を得た。
私たちサキュバスの作り方や使用方法など。
帝国は女王の能力でサキュバスを操って、サキュバスに他国を襲わせる計画を立てた。
サキュバスに対応できなかった国は、帝国からサキュバスに対抗できる力を持った冒険者を派遣することで、サキュバスを撃退する。
そうして他国に恩を売ると同時にスパイを配置する。
もしサキュバスに対応できた国があれば、どんな対応をしたのか確認のために冒険者を派遣する。
調べた結果から対応できないと予測される別の魔物を作成する。
予定だった。
私が生まれたことで、帝国は滅びる。
原因はダンジョンコアの暴走だ。
ダンジョンの発見は、8年前にソロの冒険者が発見する。
報酬目当てでギルドに報告せず、帝国に報告した。
これが帝国滅びの始まり。
ダンジョンは資源の宝庫である。
国の宣伝としても効果のある代物だったが、帝国はダンジョンを隠した。
ダンジョンの宣伝をする前に行った調査で、騎士2名の犠牲もあってコアを発見する。
隊長の騎士がコアに触れると、魔物の製造が可能であると判明した。
隊長は子供の頃に憧れた姿を思い出し、好奇心からドラゴンを創造する。
突然現れたドラゴンに騎士たちはパニックに陥るが、ドラゴンは創造主の命令があるまで動かない。
魔物を生み出せることや命令することができた。
反撃しないドラゴンを倒して、素材にすることもできる。
コアに触れると、誰でも魔物が製造できることも確認された。
当然、ダンジョンの存在は隠蔽される。
コアに触れた状態で魔力を消費すると、ダンジョンの拡張が可能であることも発見された。
魔力だけでなく、魔物以外の死体をダンジョン内で作ることで、魔力よりも効率がよく、ダンジョンの拡張ができることも発見される。
様々な効果を持った部屋を設置することで、ダンジョン内に牧場を造った。
その結果、ダンジョンは急成長する。
そして、私が生まれた。
コアがダンジョンを維持するために溜めていたエネルギーが、急激に消費されたことでダンジョンの維持が難しくなると、コアは暴走を始めた。
人間風に言えば高額な買い物をしたことで、破産した。
私はコアの命令でダンジョンを維持するために人間達をドレインする。
しかしダンジョン内にいる人間だけでは足りなかった。
だからサキュバスたちにダンジョンの外でエネルギーを回収しろと命令する。
ダンジョンの維持可能なエネルギーを集めたことで、理性を取り戻した私は、帝国を乗っ取ることにした。
ダンジョンだけでなく、帝国の知識も持っている私ならできると思った。
まずはエネルギーを節約するために、コアを操作してダンジョンをできるだけ小さくする。
使う機能はサキュバスとスライムの量産だけに絞った。
スライムは外で活動するサキュバスからエネルギーを受け取り、運搬の役割を与える。
スライムは液体の吸収を得意な魔物で、サキュバスと相性がいい。
サキュバスが搾り取った液体をエネルギーに変える。
徐々にサキュバスを増やして帝国をサキュバスの国にする。
予定だった。
私はサキュバスの女王。
今は、あの方が望むスライムです。
仲間が増えたよ。
やったね! カップ。
サキュバスの女王は、契約したことによって姿を変えていた。
黒いスライム。
頭から生えた翼を動かして眼の前を浮いている。
元サキュバスの女王から、簡単に帝国の状況を聞いた。
「帝国馬鹿なの?」
ダンジョンとか、オメガ先生でも解明できなかった存在だ。
そんなやばいモノに手を出したかと思えば、挙句の果てに世界征服?
そら滅びるわ。
そういえば、今代の帝王は魔物嫌いで、マ帝国と呼ばれることも嫌っているってことは、噂程度に知っていた。
だけどダンジョンの実験に国民の他種族を使っていたとか、滅びて当然だと思う。
「それで男しか残ってないのか」
「はい。女性陣はもれなく家畜としてダンジョンで飼われていましたが、コアが暴走したことでほとんどがダンジョンに吸収されました。生き残った者たちは誕生して間もない者たちで、サキュバスたちとダンジョン内で生活しています。
ダンジョン内で生まれたことで、人の姿をしていますがほとんど魔物のようなものです。ダンジョンから離れると生きていけない存在になっています。
知能は悪くないのですが、人よりも動物に近い存在ですね。ほとんどが女の形をしています。将来的にサキュバスの母体となる予定をしていました。
それまでのつなぎとして、他国から女性を集めていました。母体がなくてもコアからサキュバスを作り出すことはできますが、エネルギーを節約できますし、効率がよかったのです。
なんせ、サキュバスが出来なくても母体に注ぎ込んだ精をエネルギーに変えることができますからね」
「無駄がなかった、と。それも研究員から得た知識か?」
「どちらかといえばダンジョンコアからですね。私はコアから生まれたからか、コアと深くつながっていました。
今は貴方様と契約したことでコアとのつながりはなくなりましたが、サキュバスたちは私の一部のようなものなので、回収すればするほどに力をつけられます」
「まあ、強い仲間ができるのはいいことだから好きにしてもらっていいんだが、次々に飛んでくるサキュバスは、なんか怖いよ」
目が血走ってる。
「うふふ。襲われることはありませんのでご安心ください。貴方様に近づく前に、私が全て食べてしまいますから」
ダンジョンから生まれたサキュバスだから吸収出来るのか、人も魔力の光に変えて吸収できるのか、恐ろしくて聞けないな。
「てか待て。コアとのつながりが無くなったってことは、また暴走が起こるわけじゃないよな?」
「その心配はありません。ダンジョンは小さくしています。すぐに暴走することはないですよ」
「すぐに?」
「ええ。ひと月ほどは問題ないかと」
「それなら安心、とはならんやろがい! 1ヶ月後に暴走するってことだよな!?」
「そうですね。ですので、今から向かう先にコアがありますので、コアをカップお姉様に吸収してもらいましょう」
「なんでカップなんだ? お前じゃだめなのか?」
「私でも構わないのですが、ここは先輩を立てるのが後輩として当然のことだと思います。それに進化しない私よりも、進化の可能性があるカップお姉様が吸収したほうがいいですよ」
「ちなみに、さっきのですわ口調はやめたのは?」
「もう女王ではありません。貴方様の従者ですから」
口調にこだわりがあるわけではなかった。
「そうか。カップはダンジョンのコア食ってみたいか?」
抱きかかえているカップに聞いてみると、頷くようにぷるぷると縦に震えた。
「カップお姉様も食べると言っていますし、このままコアの場所まで行きますね」
「お前もカップの伝えたいことがわかるのか?」
「はい、もちろんです。ですが、そろそろお前などではなく、名前をいただきたいです」
羽を持つ黒いスライムが、眼の前で浮いてこちらを見てくる。
スライムの見た目をしているが、中身はサキュバスの女王だ。
安直にクイーンと浮かんでくるが、今後もスライムとして付き従ってくれそうなので、カップと同じように胸と関係のある名前にしようと思う。
「そう、だな。名前は…ホックでどうだ?」
「ブラのホックですか。あ、カップお姉様を支えるということですね! わかりました! 私はホックです!」
「まあ、そういうことで。これからよろしくな、ホック」
「はい!」
喜びを表すように回転や左右に揺れて案内が再開される。
気に入ってもらえた様子に安堵した。
サキュバスも次第に飛んでこなくなると、大きな扉が見えてくる。
「ここがコアの部屋につながる転移部屋です。元々は宝物庫でしたが、中身はもちろん貴方様のものです」
大体3メートルを超える高さの扉に魔法陣が描かれて、守られているのがわかる。
「もらえる物はもらっておこう。そういえば、これはホックが描いたのか?」
「はい。扉が開かないように固定の魔法陣と撃退用の火炎魔法が発動する魔法陣を描き込んであります」
「転移の魔法陣も描けるのか?」
「描くことはできますが、コア無しで発動させようと思うと、距離によって膨大な魔力が必要となります。短い距離であれば、貴方様なら可能かもしれません」
貯めに貯めた魔力を使えば転移できる。
しかし転移に魔力を消費すると、ホックとの力関係が崩れるだろう。
そうなれば、契約が解消される。
転移を使うかどうかは別に、知っておいて損はないか。
「俺に魔法陣を教えてくれるか?」
「はい! 私の知っている限りの知識をお教えしますね。ではまず、この魔法陣の解き方を」
「今はやめとこう。空にあった魔法陣が消えたことで、男たちが逃げ出しただろ? そのうち王国から冒険者か騎士団がやってくるはずだ。用意周到なギルマスのことだから、もしかするとそばで待機させてるパーティーがいるかもしれないし、さっさと回収できるものはしておきたい」
「わかりました。では私が貴方様の頭に乗ることをお許しください」
「ん? 構わないよ」
「ありがとうございます。では、このまま扉に向かって進んでください」
「扉、開くのか?」
「いえ通り抜けます。私達サキュバスやダンジョンに属するスライムなどが入れるようにしてあるのです。魔法陣や扉は視覚トラップとして利用しているものですね。また詳しくお話させていただきますので、今はそのままお進みください」
ホックの言葉を信じて扉に向かって進むと、魔法陣を素通りする。
宝物庫の中は床に魔法陣の描かれていた。
「そこの魔法陣に乗ればコアの部屋まで転移できます。ダンジョンに入ることになりますが、認識阻害の魔法を使用していますので、敵対されることはありません。ご安心ください」
「認識阻害まで使えるのか。使えない魔法はないのか?」
「そうですね。ほとんどの魔法は使用可能かと思います。魔力の問題はありますが、今のところサキュバス達を取り込んだ魔力もありますので、しばらくは無双状態というやつですね」
「そっか。ホックが味方で良かったよ」
「ありがとうございます!」
魔法陣の上に立って静止していると、景色が変わる。
宝物庫は様々な装飾がされている部屋だった。
しかし今は、白い壁に囲まれて中央にクリスタルが浮かぶ部屋にいる。
本当に転移したようだ。
「あれがダンジョンのコアになります。貴方様、カップお姉様をコアに近づけてください」
「わかった」
ホックの言う通りにカップを近づけると、コアを吸収するしようとカップの体を広がっていく。
そして、コアを包みこんだ。
「けぷっ」
コアの吸収はあっけなく終わった。
そして同時に、ダンジョンの崩壊が始まる。
「転移の魔法陣が消える前に! 早くこちらへ!」
壁にヒビが入って床に伸びているのが見える。
カップを抱えて魔法陣に飛び込むと宝物庫に戻ってきた。
魔法陣が消えたことを確認すると、地震が発生する。
「帝国の地下で広がっていたダンジョンが崩れたのでしょう。ここも安全ではないかもしれません。城から出ましょう」
帝国関係者をドレインしたことで城内部を知っているホックが案内してくれる。
抜け道のような場所も迷うことなく使用して、城から脱出した。
外に出ると城から離れた場所だとわかる。
物置のような建物だった。
城の方を見れば左に傾いていた。
左側の地下にダンジョンが広がっていたのだろう。
「あちらの方に繁殖場があります。サキュバスの回収は、どうしましょうか? 私としては、やって損にはなりませんが、そこまでするほどでもないと思います」
「そうだな。王国までの帰り道で遭遇したら、あ、その時はあの2人も一緒か。まあ、無理に吸収することもないよ。ダンジョンが無くなって、そのうちサキュバス達も消えるんだろ?」
「はい。ダンジョンから生まれたものは、ダンジョンがなくなると魔力の供給が出来なくなります。存在を保てず消えるでしょう。例外は存在しますが、そこまで知能を持った魔物はいなかったと記憶しています」
「なら放置で。もうつかれた」
カップを抱えたまま地面で横になる。
するとホックが後頭部に移動した。
大きさを変えて枕になってくれる。
カップを持ち上げると、雲から出てきた太陽に照らされた。
カップの中心に、核の丸い玉を見つけることができた。
核の形が変わっている。
ひし形に近い形をしていたはずだ。
丸くなったことで、触りやすそうだと感じた。
ふと思ったことを聞いてみた。
「コアは美味かったか?」
「びみ!」
カップが喋った。
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しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
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