1 / 29
1.宇宙に漂うもの
しおりを挟む
彼は見えない。この世界が。
ここは宇宙。彼はポッドに入って眠っている。まるで死んでいるかのように。
20xx年地球 都市クウォーリー アブソリュート・デルタ・カンパニー、テストルームにて。
「ルーン!早く来い!置いていくぞ!」
「待ってよ、ラグラン!」
ラグランと呼ばれた中年男性は筋肉隆々で、後ろに束ねた長髪が特徴的な人物だ。ルーンと呼ばれた青年はいかにも女たらしといって風体で、ラグランの後を慌ててついていく。
ふたりとも宇宙服のようなものを着ている。
「宇宙服じゃないわよ~。対ロボット用アーマーって呼んで~。」
のんびりな口調で女性が一人、テストルームに入ってきた。
女性の名前はモイ。このカンパニーのリードメカニックだ。姫系衣装に包まれていてとても可愛らしい印象を残す。
「こんな平和な時代に、必要かね、このアーマー。」
“アーマー”の部分を、宇宙服を訂正しましたといわんばかりに強調しつつラグランが言う。
「仕方ないじゃない、私たちはなんでも屋なんでしょ~?何かあったら危ないじゃない~。」
「それはそうだけど、このアーマー着るのボク苦手だよ。」
ルーンもしぶしぶアーマーを着たというふうである。
どうやら男性二人には不評のようだ。
“なんでも屋”
そうモイが言ったのは正しい。アブソリュート・デルタ・カンパニーは表向きはロボット開発会社だが、ウラでは重要な仕事を任されることがたまにある。それは、ラグランが元軍人であることの延長線上で危険な仕事が入るのだ。
「さあ、テスト開始よ~。テストルームに入って~。」
テストルームを出るモイとは対照的に、仕方なさそうにルームに入るラグランとルーン。
『テストを開始します。モデル1~5、準備完了。』
無機質な音声とともに、人型のモデルが5対出現してきた。
ラグランは気を引き締めるために頬を掌でばしばしっと叩きながら気合を入れる。
「よし、やるか!」
「うん!」
ラグランとルーンが戦闘態勢に入る。それとともに、モデル達がこちらに向かってきた!拳をラグランとルーンに対して繰り出す!2人は拳を受け止め、モデル達に向かって蹴り上げる!
すると、モデルは消失した。
続けて他のモデルが戦闘態勢に入るが、2人はあっという間に伸してしまった。
『テストを終了します。』
「二人ともお疲れ様~!」
テストルームに入りながら、労いの言葉をかけるモイ。
「随分とラクなテストだったが、いいのかこれで?」
ラグランは疑問を持ちながらアーマーを脱ぎ始めた。
「いいの、いいの~。大体のデータは取れたから。ありがと~。」
「まあ、あとはモイに任せよう、ラグラン。」
「だな。」
ピピピピピ。ピピピピピ。
「あら、通信。なにかしら~。」
のんびりと通信機の前に立ち、音に応える。
「はい、こちらアブソリュート・デルタ・カンパニーのモイ・ラレルです。」
「紅茶でも飲もうかなボク。」
モイの通信が気になりながらもつぶやくルーン。
「オレにはコーヒーを頼む。」
「二人とも!そんな余裕はないみたい。危ないお仕事が来ました!」
『了解!』
2人の表情が引き締まる。
「場所は宇宙よ!」
数時間後、宇宙服に包まれた2人は宇宙に到着した。
大きな破片が漂う場所。
「ここが、依頼主の指定場所だね。」
ルーンが辺りを見回しながら言う。
「ああ。人工衛星が爆発して、そのブラックボックスの回収だったな。」
「えーと、ブラックボックスのある位置は……。」
位置を確認するルーン。
ピピッ
「七時の方向みたいだ。」
「了解。」
しばらく漂いながら、2人はブラックボックスの位置に到着した。
「それにしても、この爆発は酷いもんだな。」
「政府からの依頼だけど、爆発した原因とか詳しい情報は訊けなかったみたいだね。」
そうだな、と言いながらラグランはブラックボックスを回収する。
「よし!回収完了だ、ルーン。モイに連絡する。」
ピピピピピ。
『はいはーい!こちらモイ=ラレル。』
「モイ。仕事が終わったぞ。転送装置の用意を。」
『はーい!2人ともお疲れ様。』
ピピッ
突然発信音がした!
「待って!ラグ、モイ!十一時の方向にまだ何かあるみたいだ。」
戸惑いながら言うルーン。
「ブラックボックスがまだあるのか?」
「うーん、よくわからないけど……。発信音がするからには調査しないと依頼主に 何か言われそうだし……。」
「そうだな。行ってみるか。」
数分後。
「えーと、たしかこの辺なんだけど……。」
漂う2人。
そこで、なにか光るものを見つける。
「おい、なんだこれ……。」
「ポッドに人が……。」
「いや、これは人じゃない。アンドロイドだ……。」
ここは宇宙。彼はポッドに入って眠っている。まるで死んでいるかのように。
20xx年地球 都市クウォーリー アブソリュート・デルタ・カンパニー、テストルームにて。
「ルーン!早く来い!置いていくぞ!」
「待ってよ、ラグラン!」
ラグランと呼ばれた中年男性は筋肉隆々で、後ろに束ねた長髪が特徴的な人物だ。ルーンと呼ばれた青年はいかにも女たらしといって風体で、ラグランの後を慌ててついていく。
ふたりとも宇宙服のようなものを着ている。
「宇宙服じゃないわよ~。対ロボット用アーマーって呼んで~。」
のんびりな口調で女性が一人、テストルームに入ってきた。
女性の名前はモイ。このカンパニーのリードメカニックだ。姫系衣装に包まれていてとても可愛らしい印象を残す。
「こんな平和な時代に、必要かね、このアーマー。」
“アーマー”の部分を、宇宙服を訂正しましたといわんばかりに強調しつつラグランが言う。
「仕方ないじゃない、私たちはなんでも屋なんでしょ~?何かあったら危ないじゃない~。」
「それはそうだけど、このアーマー着るのボク苦手だよ。」
ルーンもしぶしぶアーマーを着たというふうである。
どうやら男性二人には不評のようだ。
“なんでも屋”
そうモイが言ったのは正しい。アブソリュート・デルタ・カンパニーは表向きはロボット開発会社だが、ウラでは重要な仕事を任されることがたまにある。それは、ラグランが元軍人であることの延長線上で危険な仕事が入るのだ。
「さあ、テスト開始よ~。テストルームに入って~。」
テストルームを出るモイとは対照的に、仕方なさそうにルームに入るラグランとルーン。
『テストを開始します。モデル1~5、準備完了。』
無機質な音声とともに、人型のモデルが5対出現してきた。
ラグランは気を引き締めるために頬を掌でばしばしっと叩きながら気合を入れる。
「よし、やるか!」
「うん!」
ラグランとルーンが戦闘態勢に入る。それとともに、モデル達がこちらに向かってきた!拳をラグランとルーンに対して繰り出す!2人は拳を受け止め、モデル達に向かって蹴り上げる!
すると、モデルは消失した。
続けて他のモデルが戦闘態勢に入るが、2人はあっという間に伸してしまった。
『テストを終了します。』
「二人ともお疲れ様~!」
テストルームに入りながら、労いの言葉をかけるモイ。
「随分とラクなテストだったが、いいのかこれで?」
ラグランは疑問を持ちながらアーマーを脱ぎ始めた。
「いいの、いいの~。大体のデータは取れたから。ありがと~。」
「まあ、あとはモイに任せよう、ラグラン。」
「だな。」
ピピピピピ。ピピピピピ。
「あら、通信。なにかしら~。」
のんびりと通信機の前に立ち、音に応える。
「はい、こちらアブソリュート・デルタ・カンパニーのモイ・ラレルです。」
「紅茶でも飲もうかなボク。」
モイの通信が気になりながらもつぶやくルーン。
「オレにはコーヒーを頼む。」
「二人とも!そんな余裕はないみたい。危ないお仕事が来ました!」
『了解!』
2人の表情が引き締まる。
「場所は宇宙よ!」
数時間後、宇宙服に包まれた2人は宇宙に到着した。
大きな破片が漂う場所。
「ここが、依頼主の指定場所だね。」
ルーンが辺りを見回しながら言う。
「ああ。人工衛星が爆発して、そのブラックボックスの回収だったな。」
「えーと、ブラックボックスのある位置は……。」
位置を確認するルーン。
ピピッ
「七時の方向みたいだ。」
「了解。」
しばらく漂いながら、2人はブラックボックスの位置に到着した。
「それにしても、この爆発は酷いもんだな。」
「政府からの依頼だけど、爆発した原因とか詳しい情報は訊けなかったみたいだね。」
そうだな、と言いながらラグランはブラックボックスを回収する。
「よし!回収完了だ、ルーン。モイに連絡する。」
ピピピピピ。
『はいはーい!こちらモイ=ラレル。』
「モイ。仕事が終わったぞ。転送装置の用意を。」
『はーい!2人ともお疲れ様。』
ピピッ
突然発信音がした!
「待って!ラグ、モイ!十一時の方向にまだ何かあるみたいだ。」
戸惑いながら言うルーン。
「ブラックボックスがまだあるのか?」
「うーん、よくわからないけど……。発信音がするからには調査しないと依頼主に 何か言われそうだし……。」
「そうだな。行ってみるか。」
数分後。
「えーと、たしかこの辺なんだけど……。」
漂う2人。
そこで、なにか光るものを見つける。
「おい、なんだこれ……。」
「ポッドに人が……。」
「いや、これは人じゃない。アンドロイドだ……。」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる