元勇者パーティの料理人〜追放されたけど料理スキルがカンストしている俺は王都1を目指して料理店始めます〜

月乃始

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Cランクになろう

3-8 Cランク昇格

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 結局あれから何も聞けないまま、ドラカは無事に退院した。

 とはいえ、いつもの調子に戻って人を茶化すだけになってしまっただけだが、まあ元気になっただけ良かった。

 ドラカの命を狙う人間について何も分からないままで終わりながらも、もし俺が狙われる事があったら……ということを考えて少しの間護衛になってくれる事になった。

 本人なりのお礼のつもりらしい。

 帰りの馬車の中で少し話をした。


「そういえばドラカのパーティメンバーはどこにいるんだ?」

「そんなもん最初からいないさぁ。人がいると色々面倒だろう?」

「え、だって俺に初めて会った時はパーティに誘ってきただろ」

「あれはほら、こっちだってマトモな回復料理が欲しいのさぁ。他のやつに取られたらありつけなくなっちまうからねぇ」


 俺は非常食か何かか。
 そう言いたくなったが、何だかんだドラカはSランクまで1人で上がったってことだ。
 それは単純にすごい。


「そういや森で俺を助けたことも覚えてないんだよな」

「あぁ、全くね」

「無意識で人を助けに来るなんて、あんた実はとても優しい人間だったりするのか?」

「けけけ、あたしはいつだって優しいよぉ」


 こんな軽い話をしているうちに馬車は王都に到着した。
 馬車から降り、ドラカはぐいっと伸びをする。


「ふー………さて、と……あんたはDランクの半分くらいだったかい?」

「ああ。あと5つだけどな」

「思っていたよりやるじゃないか。じゃ、引き続きクエスト頑張りなぁ」


 ドラカはひらひらと手を振り、背を向けてどこかに行こうとする。


「おいどこに行くんだ? ギルドはそっちじゃない」

「けけ、流石に知ってるさ。今日はひとまず休ませてもらいたいねぇ。ギルドにはもう遣いを出したから、報告は済んでるのさぁ」


 ドラカは振り返らずそう告げるとそのまま真っ直ぐ歩いて行き、間もなく背中が人混みにかき消されて見えなくなった。


「……俺はギルドに戻るか」


 歩いてギルドに向かうと、ルシアさんが笑顔で迎え入れてくれる。

 と思いきやそうじゃなかった。
 ギルドに入った途端ルシアさんがとてつもない勢いで俺の方に走ってくる。


「もう! 心配したんですよ!」


 半分怒りで半分泣いている状態のルシアさんは、見たこともない形相で感情をぶつけてきた。


「ドラカさんから無事だという報告が来たのは安心しましたがそれでも……あら? ドラカさんがいませんね」


 ルシアさんは俺の後ろを見てキョトンとした顔をする。
 この百面相具合、最近誰かでも見たな。


「ドラカは今日は休むそうです。無理やり出て行ってすみませんでした」


 俺は頭を下げる。
 ルシアさんは真剣な顔で俺に諭す。


「ロイズさん、私たち冒険者ギルドの職員は、冒険者と依頼人を繋ぐお仕事なんです。命を危険に晒す仕事は任せられません。だからランク制度もあるんですよ。もう二度とあんな危険な真似はしないでください」


 次やったら資格の剥奪も有り得るそうだ。無理もない。
 俺は改めて謝罪し、大人しくDランクのクエストを選ぶ。

 Cランクも近いし、報酬より時間で決めていこう。

 俺は受けては報告するスタイルに変え、無心でクエストをうけ何とか今日は2つ報告が完了した。

 ギルドが閉まる時間になってしまったのでまた明日にしよう。

 Cランクまであと3つだ。
 急いで宿に戻り、湯に浸かり眠る。

――――――――――――――

 起きて朝飯を軽く作り、食べてギルドに向かう。
 ギルドに入ると、数日間見なかっただけなのに少し懐かしく感じる光景があった。


「ドラカ」

「おやぁ、あたしの命の恩人サマじゃないかぁ」


 いつも通りのドラカがカウンターで酒を飲んでいる。
 こうして見ると平和な光景なんだなと思う。
 というか病み上がりのくせに大丈夫なのか?


「ほどほどにしておけよ。あ、そうだ」

「ん~?」


 俺は荷物から握り飯を取り出す。


「ほら、これでも食ってろ。あとあんまり飲むな。ルシアさんもどうぞ」


 2人に疲労回復促進効果のある握り飯を渡す。
 するとドラカは何故か上機嫌になり、りんごジュースを飲み始めた。


「大事に食べさせてもらうよぉ」

「ロイズさん、ありがとうございます」


 作ったご飯で喜んでもらえるのは単純に嬉しい。
 さて、今日もクエストだ。


「3つ、行ってみるか」


 採取が報酬的にはおいしそうだが、簡単な配達、加工、鉱石磨きにしよう。


「お願いします」

「お、張り切ってるねぇ!」

「うるさいドラカ」

「承ります! お気をつけて、行ってらっしゃい!」


 茶化すドラカを尻目に俺はギルドを出た。

 あとはいつも通りクエストを進めていく。

 配達――加工―――そして鉱石磨き


「これで最後か」


 最後の鉱石を磨き終わると、もう16時を回っていた。


「急いで戻ろう。昇格クエストが簡単なものだといいけど」


 またもや鍛冶屋の人に盛大に感謝をされながらも俺はギルドに駆け足で戻る。


「……ルシアさん! お願い、します!」

「お帰りなさい! すぐにみますね」


 ぜえはあと息を切らしてギルドに入り、まだ酒を飲んでいるドラカを無視して鑑定をお願いする。


「……うん、うん、はい! 大丈夫ですね。お疲れ様でした!」


 ルシアさんがにこにこと合格を出してくれる。
ほっと胸を撫で下ろす。


「ロイズさんはこれでCランク昇格クエストを受注可能です。受けられますか?」

「は、はい、お願いします!」


 遂に来た。
 これさえクリアすればやっとのんびり料理生活ができる。


「次のクエスト内容は……」

「内容は……?」

「ご自身の『恩恵ギフト』レベル検査です」

「『恩恵ギフト』レベル検査?」


 俺が首を傾げると、ルシアさんはクエストの紙を取り出し見せてくる。


「簡単に言うと今の『恩恵ギフト』によるスキルがご自身のレベルに合っているかの検査です。合っていなければレベルを上げ、合っていたら合格になります。ロイズさんの場合は料理ですね」

「そ、そんな簡単なのか」

「ええ、あちらの鑑定台に前回と同じように今度はご自身の手をかざして鑑定してください」


 前の魔石加工と同じように今度は点数を自分に出すのか。

 まず今の点数が知りたい俺は真っ直ぐ鑑定台に行き、、興味本位で手をかざす。


 すると―――



 ビービービービー

「うわ!!」


 急に機械音が激しく鳴り始める。
 点数版にはERRORの文字が。


「ど、どうしましたか!?」


 ルシアさんがパタパタと駆けてくる。


「手をかざしたら急に音が鳴り始めて……」


 鑑定台を調べ始めるルシアさん。
 五分ほどして、俺は驚くことを告げられる。


「……………ロイズさんの『恩恵ギフト』による料理スキルは測れないレベルまで上がっています」

「測定……不能………??」

「アッハッハッ、Cランク昇格おめでとう!」


 混乱する俺とルシアさんを見ながら、ドラカは1人で爆笑している。


 こうして、俺はめでたく(?)Cランクに昇格することが出来たのだった。
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